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 「デジタルアセットのインフラが乱立すれば全体として効率が下がる。業界横断で1つの強いブランドを作っていくべきタイミングだ」。2023年10月2日に設立する新会社「Progmat」の代表取締役 Founder&CEO(最高経営責任者)に就任する齊藤達哉氏は、設立の狙いをこう説明する。

出資会社8社の代表とProgmat 代表取締役 Founder&CEO(最高経営責任者)の齊藤達哉氏(中央)
出資会社8社の代表とProgmat 代表取締役 Founder&CEO(最高経営責任者)の齊藤達哉氏(中央)
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 Progmatには三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、三井住友信託銀行、三井住友フィナンシャルグループのほか、取引所関連としてSBI PTSホールディングス(HD)とJPX総研、ITベンダーとしてNTTデータとDatachainが共同出資。筆頭株主として49%を出資する三菱UFJ信託銀行が開発してきたデジタルアセットの発行・管理基盤「Progmat」の開発と運用を担う。

 三菱UFJ信託銀行が約4年間育ててきたProgmatを独立会社化したのは、業界横断で参加しやすいインフラを構築するためだ。中立性を保つために、システムの開発方針は「デジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)」に委ねる。DCCには2023年9月時点で214組織が参加。セキュリティートークン(ST)などデジタルアセットの発行を検討している事業者が約半数を占めるという。新会社は事務局としてDCCの運営も担う。

 新会社の目標として、デジタルアセットの「ナショナルインフラ化」を掲げる。2030年ごろをめどに、「公共財としての位置づけと、株式上場を目指す」(齊藤氏)考えだ。

デジタルアセットの基盤運営を担う新会社 「Progmat」に関する構想
デジタルアセットの基盤運営を担う新会社 「Progmat」に関する構想
(出所:三菱UFJ信託銀行の資料を基に日経FinTech作成)
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 だが市場の拡大に向けては、多くのハードルが待ち受ける。現時点で実装しているのは、不動産を裏付け資産とするSTの発行のほか、NFT(非代替性トークン)などによって特定のサービスにおける権利の付与に用いるユーティリティートークン(UT)の発行までだ。

 最大のハードルは2次流通市場の確立。SBI PTSHD傘下の大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)は、STの取引市場を2023年内に運営開始する見込みだ。ST売買時の決済に利用するステーブルコイン(SC)の発行は、ODXの運営開始後に照準を合わせる。Progmatは「市場拡大期は2024年後半以降に始まる」(齊藤氏)とにらむ。

MUFGがSC発行の検討を開始

 ProgmatはST発行のほか、パブリックブロックチェーン(PBC)上のSC発行も事業化する。齋藤氏はこのSCについて、STの決済に用いるSCとは「利用シーンもニーズも異なる」と話す。STは参加が制限されるコンソーシアムブロックチェーン(CBC)を用いる。

 Progmatは当初CBC上でのSC発行のみを想定していた。PBCでSCが発行可能になったのは2023年6月の改正資金決済法施行からで、その詳細が見えてきたのは2022年12月ごろ。同時期にProgmat設立の検討を始めると発表したが、その時点では模索段階だったとみられる。今回の発表では、SC関連の技術を強みとするDatachainが株主として新たに名を連ねている。

 PBC上のSC発行は後付けの事業ではあるが、市場規模はSTよりも大きいとみられる。当面のターゲットとなる企業間決済/貿易決済やデジタルアセットの取引における決済だけでも「1000兆円単位の決済市場」(齊藤氏)を見込む。

 用途も幅広い。ProgmatによるSCの発行は信託銀行/信託会社に依頼するスキームとなるが、発行を依頼する企業の種類によって利用シーンが分かれる。Progmatは銀行、海外のSC発行体、国内事業者の3種類を想定する。

デジタルアセットの発行・管理基盤「Progmat」を用いて発行するパブリックブロックチェーン上のSCのパターン
デジタルアセットの発行・管理基盤「Progmat」を用いて発行するパブリックブロックチェーン上のSCのパターン
(出所:三菱UFJ信託銀行の資料を基に日経FinTech作成)
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 取り組みが先行するのは、銀行によるSC発行だ。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、複数の銀行が共同で発行するSCの検討を開始した。発行依頼企業の役割を三菱UFJ銀行が担い、PoC(概念実証)を実施する。

 PoCの終了後、商用化のフェーズ1として2024年6~8月をめどにSC発行を開始する見込みだ。ST決済に用いるSC発行を半年ほど先行する形となる。