欧米への直接攻撃辞さず?プーチン氏演説 ねらいは?

欧米への直接攻撃辞さず?プーチン氏演説 ねらいは?
「ウクライナの地域紛争が世界的な性格を帯びることになった」

ウクライナ、ロシア双方の攻撃がエスカレートする中、ロシアのプーチン大統領は21日に発表したビデオ演説でこう述べました。

これまでも重要な発表を行ってきた大統領府の執務室からのおよそ8分間の演説。

プーチン大統領のねらいはどこにあるのか。防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事に詳しく聞きました。

(国際部記者 横山寛生 / 有水崇)

※プーチン大統領の演説全文は文末にあります。
プーチン氏の演説
「ロシア軍の兵士、わが国の国民、世界中の友人たち、そしてロシアに戦略的に敗北をもたらす可能性に幻想を抱き続けている人々にも、西側製の長距離兵器がわが国の領土で使用されたあと、特別軍事作戦の地域で今日起きている出来事について伝えたい」
国内に向けた呼びかけの意味は?

このプーチン大統領の演説というのは当然、外向けのみならず、ロシア国民にも聞かせているわけで、冒頭、ロシアの軍人や国民に対してというふうに、プーチン大統領がはっきり述べてるわけです。

1つは、ロシア領内に長距離兵器による攻撃が行われたことに関して、これがロシアにとって大きな影響がないということをはっきり述べたうえで、今の特別軍事作戦は順調に進展していると述べて、ロシア国内で政治的な不安が高まらないように、プーチン大統領は国内向けの発言をしているというところもあると思います。

もう1つ、今回、長射程の兵器による領内への攻撃を受けたということで、きぜんとした態度をとる。国内の保守強硬派に向けて、プーチン大統領がそこを演出するという部分もあったのではないかというふうにも思われます。
「ミサイルはマッハ10で、すなわち秒速2.5~3キロメートルで標的を攻撃する。現在、世界にある防空システムや、アメリカがヨーロッパで構築しているミサイル防衛システムでは、このようなミサイルを迎撃することはできない。不可能なのだ」
今回のミサイル 迎撃は不可能?

マッハ10ということであれば、(迎撃は)なかなか難しいと思われます。ただ、開発途上なのでこのミサイルの性能が果たしてどの程度のものなのかは、まだはっきりしていません。

そこはプーチン大統領の発言をそのままうのみにするのではなく、慎重に見極める必要もあるのではないかと思います。

こうした中距離ミサイルを将来的に保有して、場合によっては軍事的な攻撃を行う可能性もあるというふうに言っているわけですが、あくまでもこれは政治的な駆け引きとして、プーチン大統領はこのミサイルが実用段階になりつつあるということを見せながら、特にNATO諸国に揺さぶりをかけているのではないかというふうに思われます。

中距離弾道ミサイルというのは基本的にNATOに向けたものということになるわけで、ロシアが将来的に核弾頭搭載可能な中距離ミサイルを保有するということになると、ヨーロッパも冷戦時代のようなロシアの核ミサイル脅威に直面することになるわけです。

ですからロシアはそうした動きを見せながら、特にNATO加盟国、ヨーロッパ諸国のウクライナへの軍事支援を抑止していこうという、こういうねらいが読み取れるのではないかというふうに思われます。
「われわれの『オレシュニク』ミサイルシステムの実戦での実験は、NATO諸国のロシアに対する敵対行為に対応して行うものだ。中距離ミサイルをさらに配備するかどうかは、アメリカとその衛星国の行動しだいで、われわれが決める」
“実験”と言っている意味は?

それはまだ中距離ミサイルが完成してないということで、欧米諸国の対応しだいではロシアは開発を停止し、配備しないという選択肢もあるということです。

これが完全に完成された配備ということになると、中距離ミサイルを実際に持つかどうかという、そういう1つの欧米との取引のカードにはできないわけです。

開発途上で、今回もあくまでもテストだということであれば、欧米諸国の態度いかんでは、ロシアは中距離ミサイルを保有することはないと、プーチン大統領も今回、そういう趣旨の発言をしています。

ですから、あくまでもテストだというところには、そういうメッセージが込められていると思います。
「ロシアの軍事施設に兵器の使用を許可している国の軍事施設に対して、われわれは兵器を使用する権利があると考えている」
欧米諸国の軍事施設を攻撃する?

プーチン大統領の発言の趣旨からすると、今は欧米諸国に対する政治的な駆け引きの段階でそういう発言をしているように受けとめられます。

つまり、欧米諸国がこれ以上ウクライナへの軍事支援を強化して、ロシアに挑戦的な行動をとらないのであれば、ロシアはこうした欧米諸国の軍事施設を攻撃するようなことにはならないというニュアンスを出しているんです。

直ちにそうするという言い方ではなくて、あくまでも欧米諸国側の態度いかんによって、ロシアの中距離ミサイルも実際に配備するかどうかというのが決まっていくということを投げかけているのではないかと思います。
「敵対行為がエスカレートした場合、われわれは同じくらい毅然として鏡のように対応する」
“鏡のような対応”とは?

プーチン大統領が決まり文句で「鏡のような対応をする」と言うのは、欧米諸国がロシアに対して強硬な姿勢をとるのであれば、ロシアもそれに対して同じような対応をとる。

しかし、欧米諸国がそういう行動をとらないのであれば、ロシアもそういう対応はとらないということです。

ですから、非常に険しい厳しい表現をプーチン大統領は使ってますが、これはある意味、欧米諸国のロシアに対する強硬な姿勢を変えていきたいということなので、そういう意味においては、駆け引きの1つの材料として言葉を発しているというところがあると思います。

今回のロシアによる中距離ミサイルのウクライナへの使用に関して、アメリカやイギリスが大きな影響を受けるかどうかというのは疑問ではありますが、NATO加盟国のほかのヨーロッパの国々の中で、プーチン大統領がねらう動揺や不安のようなものが、果たして喚起されるのかどうかということではないかと思います。

今回のプーチン大統領の発言を見ていますと、やはりそうしたヨーロッパの中からアメリカやイギリスの動きに対して慎重な見方が出るようにしむけるような、そういう動きのようにも見て取れます。
「アメリカによる中距離ミサイルを生産し、ヨーロッパやアジア太平洋地域に配備する計画への対抗措置として、われわれは中距離ミサイルを開発している。
われわれは、アメリカが2019年にこじつけの口実で※INF=中距離核ミサイルの全廃条約を一方的に破棄したことは間違いだったと考えている」
アジア太平洋地域へも影響?

プーチン大統領は、アメリカがインド太平洋地域においても、こうした中距離ミサイルの配備を行おうとしていることを強く批判しています。

その場合はロシアも同じような形で対応するということも述べていますので、ウクライナ戦争が始まって、アメリカとロシアの対立が悪化したからというよりも、それ以前からINF条約が失効して以降、アメリカが新たに中距離ミサイルを配備することに対して、ロシアは警戒を強めていました。それに合わせてロシア側も中距離ミサイルを保有しようとする動きは実は見られていたんです。
※INF条約
1987年にアメリカと当時のソビエトとの間で調印され、射程が500キロから5500キロの地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルの保有や製造、発射実験を禁止。
2600基以上の核ミサイルが廃棄され、30年あまりにわたり、アメリカとロシアの核軍縮の柱の1つとなってきた。2019年、当時のトランプ政権がロシア側の違反を理由に条約の破棄を通告、その後、失効した。
東アジアへの影響は?

将来的にロシアが本当にこうした中距離ミサイルを配備するということになれば、ヨーロッパ諸国も新たなミサイル防衛システムの強化が求められることになると思います。

ロシアが中距離ミサイルを保有するということは、ロシア極東地域に配備される可能性も排除されないわけです。

そうすると、日本なども射程に入る可能性が出てくるということなので、ロシアが中距離ミサイルを保有するという動きというのは、ヨーロッパだけの問題ではなくて、東アジアの安全保障にも影響を与える可能性があり、その観点からも今後の動きを注目していく必要があるのではないかと思われます。
「ロシアではなくアメリカこそが、国際的な安全保障体制を破壊し、戦争を続け、覇権主義にしがみつき、全世界をグローバルな紛争へと向かわせようとしていると、改めて強調しておきたい」
トランプ次期大統領へのメッセージ?

今後、トランプ氏がウクライナ問題に関して何らかの停戦交渉を提起する可能性もあるということなので、プーチン大統領からすると、あまり今アメリカに対して強硬な姿勢を強めていくことが、必ずしもいいのかというところはあると思います。

ですから今回ATACMSの使用を認めたのはバイデン大統領ですが、今後政権が交代してトランプ次期大統領が、いわゆる和平の方向にかじを切る可能性もあるというふうに思われますので、ロシアからすると、アメリカに対してどの程度の距離感でつきあっていくのかというのは、今かなり慎重に見極めようとしてるのではないかというふうにも見えます。

ですから、プーチン大統領の今回のこの発言に関しては、一方的にアメリカを批判してる部分も見受けられますが、そうではない部分もあるのではないかというふうに思います。
ロシアの侵攻 これからどうなる?

今の局面は、ウクライナもロシアも、トランプ次期政権が提示するであろう、何らかの停戦交渉に向けて、できる限り有利な戦況を築いておきたいというところがあると思います。

ですから、ロシア側も東部で猛攻撃を続けていますし、クルスクの早期の奪還も注力しながら軍事的な攻勢をさらに強めている段階ではないかと思います。

これまでと違っているのは、やはり和平交渉を見据えた形で、両国ともに戦況を有利な形に展開していこうという動きがより一層強まってくるのではないかというふうに思います。
今後のエスカレーション 何がありえる?

一足飛びに、プーチン大統領が核使用ということはそう簡単ではないと思います。

ですから引き続き、核のカードの効力を高めていくことが想定されますが、その観点では、ロシアが核実験に踏み切るかどうかというのが当面の焦点ではないかというふうに思います。

核のカードの効力が十分効かなくなってきている中で、北朝鮮に接近しながらアメリカをけん制していくという別の動きも見せ始めているので、さらなる北朝鮮との関係強化を演出していくということも考えられます。

最近もロシアの高官あるいは軍人などが多くピョンヤンを訪れているほか、来年にはキム・ジョンウン総書記がロシアを訪問して蜜月ぶりをアピールするような、こういう動きが引き続き、続いていくと思います。
さらにイランへの接近、これもロシア側は想定をしているということで、北朝鮮と結んだような包括的戦略パートナーシップ条約というのを、近い将来イランとの間で締結し、イランとの軍事協力を強化していく動きを見せてくる可能性もあるのではないかというふうに思います。

プーチン大統領 演説全文

(11月22日ニュースウオッチ9で放送)
国際部記者
横山 寛生
2014年入局 札幌局や山口局などを経て2022年から現所属 
学生時代にロシア語を学ぶ
国際部記者
有水 崇
2017年入局 北海道や徳島での勤務を経て国際部
ロシアやウクライナ、旧ソ連圏を取材
欧米への直接攻撃辞さず?プーチン氏演説 ねらいは?

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欧米への直接攻撃辞さず?プーチン氏演説 ねらいは?

「ウクライナの地域紛争が世界的な性格を帯びることになった」

ウクライナ、ロシア双方の攻撃がエスカレートする中、ロシアのプーチン大統領は21日に発表したビデオ演説でこう述べました。

これまでも重要な発表を行ってきた大統領府の執務室からのおよそ8分間の演説。

プーチン大統領のねらいはどこにあるのか。防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事に詳しく聞きました。

(国際部記者 横山寛生 / 有水崇)

※プーチン大統領の演説全文は文末にあります。

防衛省防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事
プーチン氏の演説
「ロシア軍の兵士、わが国の国民、世界中の友人たち、そしてロシアに戦略的に敗北をもたらす可能性に幻想を抱き続けている人々にも、西側製の長距離兵器がわが国の領土で使用されたあと、特別軍事作戦の地域で今日起きている出来事について伝えたい」
国内に向けた呼びかけの意味は?

このプーチン大統領の演説というのは当然、外向けのみならず、ロシア国民にも聞かせているわけで、冒頭、ロシアの軍人や国民に対してというふうに、プーチン大統領がはっきり述べてるわけです。

1つは、ロシア領内に長距離兵器による攻撃が行われたことに関して、これがロシアにとって大きな影響がないということをはっきり述べたうえで、今の特別軍事作戦は順調に進展していると述べて、ロシア国内で政治的な不安が高まらないように、プーチン大統領は国内向けの発言をしているというところもあると思います。

もう1つ、今回、長射程の兵器による領内への攻撃を受けたということで、きぜんとした態度をとる。国内の保守強硬派に向けて、プーチン大統領がそこを演出するという部分もあったのではないかというふうにも思われます。
アメリカ製のミサイル「ATACMS」
「ミサイルはマッハ10で、すなわち秒速2.5~3キロメートルで標的を攻撃する。現在、世界にある防空システムや、アメリカがヨーロッパで構築しているミサイル防衛システムでは、このようなミサイルを迎撃することはできない。不可能なのだ」
今回のミサイル 迎撃は不可能?

マッハ10ということであれば、(迎撃は)なかなか難しいと思われます。ただ、開発途上なのでこのミサイルの性能が果たしてどの程度のものなのかは、まだはっきりしていません。

そこはプーチン大統領の発言をそのままうのみにするのではなく、慎重に見極める必要もあるのではないかと思います。

こうした中距離ミサイルを将来的に保有して、場合によっては軍事的な攻撃を行う可能性もあるというふうに言っているわけですが、あくまでもこれは政治的な駆け引きとして、プーチン大統領はこのミサイルが実用段階になりつつあるということを見せながら、特にNATO諸国に揺さぶりをかけているのではないかというふうに思われます。

中距離弾道ミサイルというのは基本的にNATOに向けたものということになるわけで、ロシアが将来的に核弾頭搭載可能な中距離ミサイルを保有するということになると、ヨーロッパも冷戦時代のようなロシアの核ミサイル脅威に直面することになるわけです。

ですからロシアはそうした動きを見せながら、特にNATO加盟国、ヨーロッパ諸国のウクライナへの軍事支援を抑止していこうという、こういうねらいが読み取れるのではないかというふうに思われます。
被害を受けた産業施設や住宅(ウクライナ ドニプロ 2024年11月21日)
「われわれの『オレシュニク』ミサイルシステムの実戦での実験は、NATO諸国のロシアに対する敵対行為に対応して行うものだ。中距離ミサイルをさらに配備するかどうかは、アメリカとその衛星国の行動しだいで、われわれが決める」
“実験”と言っている意味は?

それはまだ中距離ミサイルが完成してないということで、欧米諸国の対応しだいではロシアは開発を停止し、配備しないという選択肢もあるということです。

これが完全に完成された配備ということになると、中距離ミサイルを実際に持つかどうかという、そういう1つの欧米との取引のカードにはできないわけです。

開発途上で、今回もあくまでもテストだということであれば、欧米諸国の態度いかんでは、ロシアは中距離ミサイルを保有することはないと、プーチン大統領も今回、そういう趣旨の発言をしています。

ですから、あくまでもテストだというところには、そういうメッセージが込められていると思います。
演説するロシア プーチン大統領(2024年11月21日)
「ロシアの軍事施設に兵器の使用を許可している国の軍事施設に対して、われわれは兵器を使用する権利があると考えている」
欧米諸国の軍事施設を攻撃する?

プーチン大統領の発言の趣旨からすると、今は欧米諸国に対する政治的な駆け引きの段階でそういう発言をしているように受けとめられます。

つまり、欧米諸国がこれ以上ウクライナへの軍事支援を強化して、ロシアに挑戦的な行動をとらないのであれば、ロシアはこうした欧米諸国の軍事施設を攻撃するようなことにはならないというニュアンスを出しているんです。

直ちにそうするという言い方ではなくて、あくまでも欧米諸国側の態度いかんによって、ロシアの中距離ミサイルも実際に配備するかどうかというのが決まっていくということを投げかけているのではないかと思います。
国防省や軍需産業の代表者らとの会議(2024年11月22日)
「敵対行為がエスカレートした場合、われわれは同じくらい毅然として鏡のように対応する」
“鏡のような対応”とは?

プーチン大統領が決まり文句で「鏡のような対応をする」と言うのは、欧米諸国がロシアに対して強硬な姿勢をとるのであれば、ロシアもそれに対して同じような対応をとる。

しかし、欧米諸国がそういう行動をとらないのであれば、ロシアもそういう対応はとらないということです。

ですから、非常に険しい厳しい表現をプーチン大統領は使ってますが、これはある意味、欧米諸国のロシアに対する強硬な姿勢を変えていきたいということなので、そういう意味においては、駆け引きの1つの材料として言葉を発しているというところがあると思います。

今回のロシアによる中距離ミサイルのウクライナへの使用に関して、アメリカやイギリスが大きな影響を受けるかどうかというのは疑問ではありますが、NATO加盟国のほかのヨーロッパの国々の中で、プーチン大統領がねらう動揺や不安のようなものが、果たして喚起されるのかどうかということではないかと思います。

今回のプーチン大統領の発言を見ていますと、やはりそうしたヨーロッパの中からアメリカやイギリスの動きに対して慎重な見方が出るようにしむけるような、そういう動きのようにも見て取れます。
「アメリカによる中距離ミサイルを生産し、ヨーロッパやアジア太平洋地域に配備する計画への対抗措置として、われわれは中距離ミサイルを開発している。
われわれは、アメリカが2019年にこじつけの口実で※INF=中距離核ミサイルの全廃条約を一方的に破棄したことは間違いだったと考えている」
アジア太平洋地域へも影響?

プーチン大統領は、アメリカがインド太平洋地域においても、こうした中距離ミサイルの配備を行おうとしていることを強く批判しています。

その場合はロシアも同じような形で対応するということも述べていますので、ウクライナ戦争が始まって、アメリカとロシアの対立が悪化したからというよりも、それ以前からINF条約が失効して以降、アメリカが新たに中距離ミサイルを配備することに対して、ロシアは警戒を強めていました。それに合わせてロシア側も中距離ミサイルを保有しようとする動きは実は見られていたんです。
※INF条約
1987年にアメリカと当時のソビエトとの間で調印され、射程が500キロから5500キロの地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルの保有や製造、発射実験を禁止。
2600基以上の核ミサイルが廃棄され、30年あまりにわたり、アメリカとロシアの核軍縮の柱の1つとなってきた。2019年、当時のトランプ政権がロシア側の違反を理由に条約の破棄を通告、その後、失効した。
INF=中距離核ミサイルの全廃条約 調印式(1987年)
東アジアへの影響は?

将来的にロシアが本当にこうした中距離ミサイルを配備するということになれば、ヨーロッパ諸国も新たなミサイル防衛システムの強化が求められることになると思います。

ロシアが中距離ミサイルを保有するということは、ロシア極東地域に配備される可能性も排除されないわけです。

そうすると、日本なども射程に入る可能性が出てくるということなので、ロシアが中距離ミサイルを保有するという動きというのは、ヨーロッパだけの問題ではなくて、東アジアの安全保障にも影響を与える可能性があり、その観点からも今後の動きを注目していく必要があるのではないかと思われます。
「ロシアではなくアメリカこそが、国際的な安全保障体制を破壊し、戦争を続け、覇権主義にしがみつき、全世界をグローバルな紛争へと向かわせようとしていると、改めて強調しておきたい」
トランプ次期大統領へのメッセージ?

今後、トランプ氏がウクライナ問題に関して何らかの停戦交渉を提起する可能性もあるということなので、プーチン大統領からすると、あまり今アメリカに対して強硬な姿勢を強めていくことが、必ずしもいいのかというところはあると思います。

ですから今回ATACMSの使用を認めたのはバイデン大統領ですが、今後政権が交代してトランプ次期大統領が、いわゆる和平の方向にかじを切る可能性もあるというふうに思われますので、ロシアからすると、アメリカに対してどの程度の距離感でつきあっていくのかというのは、今かなり慎重に見極めようとしてるのではないかというふうにも見えます。

ですから、プーチン大統領の今回のこの発言に関しては、一方的にアメリカを批判してる部分も見受けられますが、そうではない部分もあるのではないかというふうに思います。
NATO ルッテ事務総長と会談するトランプ次期大統領(パームビーチ 2024年11月22日)
ロシアの侵攻 これからどうなる?

今の局面は、ウクライナもロシアも、トランプ次期政権が提示するであろう、何らかの停戦交渉に向けて、できる限り有利な戦況を築いておきたいというところがあると思います。

ですから、ロシア側も東部で猛攻撃を続けていますし、クルスクの早期の奪還も注力しながら軍事的な攻勢をさらに強めている段階ではないかと思います。

これまでと違っているのは、やはり和平交渉を見据えた形で、両国ともに戦況を有利な形に展開していこうという動きがより一層強まってくるのではないかというふうに思います。
今後のエスカレーション 何がありえる?

一足飛びに、プーチン大統領が核使用ということはそう簡単ではないと思います。

ですから引き続き、核のカードの効力を高めていくことが想定されますが、その観点では、ロシアが核実験に踏み切るかどうかというのが当面の焦点ではないかというふうに思います。

核のカードの効力が十分効かなくなってきている中で、北朝鮮に接近しながらアメリカをけん制していくという別の動きも見せ始めているので、さらなる北朝鮮との関係強化を演出していくということも考えられます。

最近もロシアの高官あるいは軍人などが多くピョンヤンを訪れているほか、来年にはキム・ジョンウン総書記がロシアを訪問して蜜月ぶりをアピールするような、こういう動きが引き続き、続いていくと思います。
プーチン大統領とキム・ジョンウン(金正恩)総書記(2024年6月)
さらにイランへの接近、これもロシア側は想定をしているということで、北朝鮮と結んだような包括的戦略パートナーシップ条約というのを、近い将来イランとの間で締結し、イランとの軍事協力を強化していく動きを見せてくる可能性もあるのではないかというふうに思います。

プーチン大統領 演説全文

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(11月22日ニュースウオッチ9で放送)
国際部記者
横山 寛生
2014年入局 札幌局や山口局などを経て2022年から現所属 
学生時代にロシア語を学ぶ
国際部記者
有水 崇
2017年入局 北海道や徳島での勤務を経て国際部
ロシアやウクライナ、旧ソ連圏を取材

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