アプリで知り合った女性「行きたい店が」風営法違反か 4人逮捕

「マッチングアプリの会員にサクラがいることは知っていたが、見破るのは難しいと思った」被害にあった男性の話です。

新宿 歌舞伎町の飲食店従業員らが、マッチングアプリで知り合った男性に対し、従業員であることを隠して店に誘い込んで接客したとして風俗営業法違反の疑いで逮捕されました。

警視庁は高額な飲食代を請求する「ぼったくり」を繰り返していたとみて調べるとともに、ことしに入ってからおよそ190件、総額で1億4000万円に上る被害相談が寄せられていることから注意を呼びかけています。

逮捕されたのは、いずれも新宿 歌舞伎町の飲食店従業員、中澤美亜容疑者(22)と本橋万桜容疑者(20)、砂押愛乃容疑者(26)、それに19歳の男の容疑者の合わせて4人で、警視庁によりますと、接待を伴う飲食店を無許可で営業したとして風俗営業法違反の疑いが持たれています。

歌舞伎町では、「マッチングアプリで出会った女性とデートで行った店で高額な飲食代を請求された」といった、20代や30代の男性からの相談が相次いでいました。

警視庁が捜査を進めた結果、容疑者らがマッチングアプリで知り合った男性たちを、従業員であることを隠して店に誘い込み、ぼったくりを繰り返していた疑いがあることがわかったということです。

調べに対し中澤容疑者と本橋容疑者は容疑を認め、ほかの2人は黙秘しているということです。

逮捕されたグループの手口は

押収された伝票

警視庁への取材で明らかになった、逮捕されたグループの手口です。

【複数のマッチングアプリで男性募る】
警視庁によりますと、グループは複数のマッチングアプリで女性のアカウントを作成。ターゲットになる男性と「マッチング」したあとはLINEでのやりとりに移行しますが、やりとりをしていたのは、待ち合わせ場所に来る女の容疑者とは、別の人物だったとみられています。

【待ち合わせで「行きたい店がある」】
「マッチング」してから数週間後にデートの約束をして新宿駅周辺で待ち合わせると、「以前、友だちと行こうとして満席で入れなかった店に行きたい」などと言って、歌舞伎町にあるグループが営業している飲食店に誘い出していたということです。

【ショットは別料金】
店では従業員が「単品の注文だと高額になるから飲み放題5000円のほうがおすすめです。ワインやショットの注文は別料金になります」などと説明。その後、トランプやサイコロを使ったゲームを持ちかけ、罰ゲームなどと称して、別料金になっているリキュールのショットなどを大量に注文して高額な請求を行っていたとみられています。

【報酬は男性支払い額の20%】
逮捕された容疑者の一部は、調べに対し「男性が支払った額の20%を報酬として受け取っていた」と供述しているということです。警視庁は、ほかにも複数の人物が関与し、発覚を免れるために、数か月単位で店の場所を変えるなどしていたとみています。店に誘い出された男性たちは、「マッチングアプリの会員に『サクラ』がいることは知っていたが、見破るのは難しいと思った」などと話しているということです。

相談者の9割以上は20代と30代の男性

歌舞伎町を管轄する新宿警察署によりますと、マッチングアプリを利用したぼったくりに関する相談者の9割以上は20代と30代の男性で、ことしの1件あたりの被害額の平均は72万円と増加傾向にあるということです。

新宿警察署による件数と被害額
▽令和3年(2021年)は約20件で総額約550万円、
▽おととしは約120件で総額約5000万円、
▽去年は約360件で総額約2億1000万円、
▽ことし10月末まで 約190件で総額1億4000万円

被害相談の実例は

新宿警察署に寄せられた相談の実例です。

ケース1(今月)

20代の男性がマッチングアプリで知り合った女性と新宿駅周辺で待ち合わせて、女性が行きたいというバーに行くと、従業員から「飲み放題メニューがある」と説明を受けたといいます。

その後、女性がショットグラスの注文を始めたので、男性も同じように注文すると、あとから「ショットは飲み放題に含まれていません」と言われ、50万円を請求されたということです。

男性はコンビニで金を下ろすことにして従業員の案内で女性とともにコンビニに行くと、「対応に時間がかかったので店の損害が出た」という理由で総額で200万円を支払うよう求められたということです。

女性は「私もあとで支払う。知り合いにお金を借りてくる」と言って立ち去ったものの、10時間たっても戻ってこなかったため、男性は被害に遭ったと気付き、警察に相談しました。

ケース2(先月)

20代の男性がマッチングアプリで知り合った女性から「SNSで有名なバーに行きたい」と誘われ、雑居ビルにあるバーに行くと、従業員から「2時間の飲み放題で5000円」と説明を受けました。

しかし、男性がトイレから戻ると、ボトルとショットグラスが置いてあり、女性は「もっと酔いたいから注文した」と話したといいます。このボトルには、リキュールのショットが20杯分入っていると説明を受け、しばらくして従業員から「100杯目ですが大丈夫ですか?」と声をかけられたということです。

そして、ショットは飲み放題とは別料金だとして、34万円を請求されたということです。

女性が「自分も料金を支払う」とか、従業員が「オーナーに安くできないか交渉してみる」などと言って男性に寄り添うように対応するケースも多いということですが、警視庁はぼったくりだと認識させるのを免れるのが狙いだったとみています。

歌舞伎町では自動音声で注意呼びかけ

新宿区と新宿警察署では、歌舞伎町で被害防止を呼びかける自動音声を流すなどして注意を呼びかけています。新宿警察署は「マッチングアプリで知り合った人を安易に信じず、初めて利用する店では料金の確認をしっかり行ってほしい。不当なお金を請求されたら110通報してほしい」としています。

出会いのきっかけ“マッチングアプリが最多”WEB調査も

こども家庭庁がことし7月に結婚をテーマに15歳から39歳の2万人を対象に行ったWEBのアンケート調査では、既婚者の結婚相手との出会いのきっかけは「マッチングアプリ」が25%と最も多くなりました。

マッチングアプリの利用について新宿や渋谷で聞きました。

交際している女性とマッチングアプリで知り合ったという27歳の男性は「周りの人が使っていたので1か月だけ登録しました。社会人になってあまり出会いがないので気軽に出会える機会があるのはいいと思いました」と話していました。

19歳の男性は「周りには使っている人がいて、付き合った人も多いです。彼女は欲しいですがアプリはお金もかかるので、別にマッチングアプリは使わなくてもいいかなと思います」と話していました。

半年前にマッチングアプリを始めたという21歳の男性は「友人がアプリで知り合った人と交際したので自分も始めました。相手の趣味などがわかるのでいいと思う一方で、実際に会ってみたときにギャップがあることも多いです。アイコンがネットから拾った画像だったり画像をまったく載せていなかったりする人とはマッチングしないようにしています」と話していました。

弁護士「手口を知っていれば自分が置かれた状況に気づける」

歌舞伎町でのぼったくり被害に関する相談に応じている青島克行弁護士は、今回のような手口が横行していることを知っておくことが重要だとしたうえで「手口を知っていれば同じような状況に巻き込まれたときに自分が置かれた状況に気付くことができる。納得のいかない請求に対してその場で、支払いを行わないことは問題ない」と話しています。

青島弁護士によりますと、寄せられるぼったくり被害に関する相談のほとんどがマッチングアプリを使ったもので、ATMで限度額まで引き出して支払いをさせられたうえクレジットカードで貴金属を購入させられたとか、消費者金融に行くように指示されたうえスマートフォンを取り上げられ一晩中見張られていた、といったケースがあったということです。

青島弁護士は、相手と待ち合わせる際に事前に店を決めておくことが対策の1つになると指摘したうえで「ぼったくりの場合、店との話し合いで折り合いがつくことはないので、言いなりにならずに、支払いを行わない状況をいかに続けるかを考えてほしい。110通報したり、若年層の場合には家族に電話で連絡したり、第三者が介入する状況を作って、その日は支払いをせずに乗り切ってほしい」と話していました。

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