同時に思い出したのが、現在、人気沸騰中のマンガ『呪術廻戦』の中で、呪術師である西宮桃というキャラクターが親友の少女の心を代弁した台詞である。「女はね、実力があってもカワいくなければナメられる。当然、カワいくっても、実力がなければナメられる。分かる? 女の呪術師が求められるのは、”実力”じゃないの。”完璧”なの。」〔読みやすくするために句読点を挿入〕。
この「呪術師」という特殊な職業を、たとえば「会社員」と置き換えみてほしい。
このCMの女性のように(おそらく)総合職として働き、肌のお手入れにも余念がなく、甘えたようなカワイイ声で話し、「消費税」や「国の借金」の心配もする、カワいさと実力の双方を得て、完璧であることを示そうと突っ走った結果、女性たちは何を得ることができたのだろうか?
その答えが、このCMへの多くの批判であることは間違いないだろう。
テレビ局は世間の感覚とズレてるんじゃないか
このCMへの批判なんて、繰り返し指摘されていてもう読み飽きた。このCMの問題点なんて誰にでも分かるじゃない——そんな声も聞こえてくる。
しかし、ちょっと待ってほしい。問題は、「誰にでも分かる」と思われるほどこれほど分かりやすい女性差別CMを平然と流すテレビ局が存在しているということなのだ。
私は、テレビ朝日のみを批判しようとしているのではない。NHKもフジテレビも、その他あらゆるテレビ局やラジオ局が、報道、バラエティを問わず、女性やマイノリティをあまりにも分かりやすく差別するコンテンツを平然と流し続けている。
つまり、テレビ局の中の人の感性は、世間一般の人たちと完全にズレているということなのだ。ズレているし、古びた感性で、公共の電波に流すコンテンツを作り続けている。