【ダ腐ルス】事件の翌日に田代が少しだけデレる話【File004】
おそろいの時計に驚愕したFile003に続き、怒涛のカップルぶりを見せつけてくれたFile004。File004を見て、田代のツンデレはなんかもう宇宙の真理なのかもしれない、という力強い確証を得ることができましたので、感想の代わりに小話を書いてみました。勢いのままスマフォで一筆書きです、ごめんなさい。ちょっとだけデレる田代の巻。ツン=9、デレ=1、くらいで十分です。ツンの時もめちゃめちゃかわいいから田代さん。それに加えて、ラストがまた萌えの嵐でしたよね。卒業アルバムネタで田代をからかっている姿を見て、山下はやっぱりサディストだよな~、っていうのも確信できたような気がします。ありがとう公式! 公式以上の萌え展開が考えられなくて、いまちょっと本気で生きるのがツラいよ。。。
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立てこもり事件から一夜明けた翌日の午後3時。
田代と俺は、新宿周辺をのんびりパトロールなんぞしていた。
俺の運転する覆面車で、甲州街道から明治通りに入って、そのまま東新宿方面に流していくルート。
天気もいい。ジャケットは脱いで、後部座席に放ってある。
なのに隣の田代は、普段通りのかっちりとしたスリーピース姿のままだ。こんな気候でも、スーツを着崩したりはしないのだ。
そのくせ、ネクタイだけはしない主義ってのが実に興味深かった。きちんとしすぎている生真面目な自分が嫌で、少しだけ外して、隙があるように見せたいのかもしれない。
正直なとこ、本人が思ってるより、ずっと隙だらけなんだけどね、こいつは。
昨日だってそうだ。本当に生真面目で任務に忠実なら、絶対にあの局面で戻ってなんか来ないはず。
拉致された被害者の確保が最優先のはずなのに、真っ青になって駆けつけたりして、ほんとどこまでもかわいいヤツ。
昨日のいまごろ、急停車した車から飛び出してきた田代の姿を思い出して、しらず口許を緩ませてしまった。
すると、俺の様子を監視してでもいたのか、隣からすぐさま、とげとげしい声が飛んでくる。
「なに、ニヤついてんだ」
「いやー、思い出しちゃって。駆けつけてくれたときの、お前の必死な顔をさ」
「アホか。集中して運転しろ」
軽く頭を叩かれる。けど、俺は一気に攻めこんでしまうことにした。あんな必死な田代の姿、弄らないまま捨ておけるはずなんてないからだ。
「なあ。なんであの時、わざわざ戻ってきたんだよ?」
横目でちらりと田代の表情を確認する。思ったとおり、つっこまれたくない嫌な質問だったみたいだ。
口許をぎゅっと結ぶと、田代は窓の外に顔を背けてしまった。でも俺は、追及の手を緩めたりはしない。
「なあ、なんで? 涼子たちと一緒に、奥さんの捜索を続ければ良かったのにさ」
からかうような口調のまま、しつっこく訊ねてみる。もう一発くらい田代の手のひらが飛んでくるかと思ったけれど、そうはならなかった。
代わりに、ふてくされたような口調で、田代がつぶやく。
「……署長のことが、心配…だった」
「うっそだー」
「うそじゃねえッ!」
「うそだろ。だって、もしそうならなら、最初っから署長の送迎、お前が率先して引き受けてるはずじゃん?」
「……」
だいたいさ。じゃんけんで負けた方が護衛と送迎してたんだから、そんな理由、通るわけないじゃないか。
ま、本当は他の連中に聞いちゃってて全部知ってるんだけどね。署長と俺が人質に取られたとき「自分のせいだ」みたいにパニくってたこととか。カツサンドを注文されたと聞いて、俺の無事に安堵してたらしいとかさ。
「なあ、なんで? どーしてあんな泣きそうな顔して駆け付けたのかなあ、田代クンは」
「るせえ」
「ほんとはさ、俺のことが心配だったんだろ?」
「はあ? んなわけねえだろ。うぬぼれんな」
目の前の信号が黄色から赤に変わった。ブレーキを踏んで、ゆっくりと停止する。
「かわいげねえなあ。お前のことが心配で駆けつけたんだ、くらいのこと言ってみろよ、ほら」
田代の表情が、どんどん不機嫌なものになっていく。
ああ、どうしよう。こいつのことからかうのが愉しすぎて、たまらない。
「言うか、バカ」
「素直になればいいのに、たまにはさあ」
言いながら、チラッと信号を確認する。大きな交差点。信号待ちが長くなりそうだ。
ギアをニュートラルに入れ、ハンドブレーキをかける。
その瞬間、胸元のネクタイを捕まれていた。ぎゅっと引っ張られて、助手席の方に顔が寄る。
不意に、くちづけられた。
窓の外の喧騒が消えてなくなる。
ぎらぎらと射しこむ初夏の陽射しも、雑踏を埋める人びとの気配も、なにもかもが消し飛んでしまうような、軽くて重い衝撃。
「これが返事だ」
ドヤ声で田代が告げた――くせに、視線を向けると、目の縁が朱色に染まっている。
自分から仕掛けておきながら、なに真っ赤になっちゃってんだか。
あーあ。そんなかわいい顔されちゃうと、ほんと困るんですけど。