「大転職時代」がやってきた。
転職希望者は1000万人を超え(2023年総務省)、約3割が「1年以内に転職する可能性が高い」と回答した調査もある(PwC2024年度グローバル従業員意識・職場環境調査)。
早期退職や希望退職などの人員削減を断行する企業も増えており、必要に迫られてキャリアの転換を模索する人もいるだろう。
いずれにせよ、転職の大きな動機や重要な条件となるのが「給与・報酬」だ。
Business Insider Japanは外資IT企業をはじめとした、いわゆる“ハイスペ人材”が集うキャリアSNS「WorkCircle(ワークサークル)」の協力を得て、転職によって年収を上げ続けてきた「転職強者」たちに話を聞いた。
参考記事:年収700万円を3800万円にした会社員が語る「人間関係の大切さ」、外資ITは「実力主義」だけじゃない
第3回目は、地方で暮らすメルカリのエンジニアだ。
記事に記載の給与情報は、年収の変化をストーリーベースで記したWorkCircleの人気企画「証明済み年収物語」によるもので、金額などは給与明細や源泉徴収票によって確認している。
メルカリ・エンジニア系職(30代)の場合
新卒は地方のIT企業
2015年 約250万円
(転職1)関東のIT企業へ
2016年 約340万円
2018年 約410万円
(転職2)関東のIT企業へ
2019年 約430万円
2021年 約700万円
(転職3)メルカリへ
2022年 約800万〜900万(※オファー額)
2023年 約1000万円
メルカリでエンジニアとして働くCさんは、転職によって順調に年収を上げてきた。
Cさんは地方在住。メルカリではリモートワークを活用しながら働いている。
子どもとパートナーの3人暮らしで、Cさんはいわゆる“大黒柱”だが、約1000万円の年収は、
「地方で暮らすには十分です。子どもは甘やかしてしまっているかもしれませんね。欲しいと言われたおもちゃなどは、ついつい買ってしますので」
と頬をゆるめる。
「勉強会の登壇や運営」で学ぶ姿勢をアピール
自身の転職を振り返って、エンジニアが転職で成功する秘訣を「しっかりアウトプットしていくこと」と話すCさん。
Cさんが2社目から始めたのが、エンジニアを対象とした勉強会の運営だ。
「新しい情報をキャッチアップする姿勢は、エンジニアにはとても大事。
私の場合は勉強会の登壇や運営でしたが、技術ブログを書いたり、コードを提供したり改善提案をするなどオープンソースプロジェクトにコミットすることも転職で評価されます。
加えて、自分の性格に合っている会社を選ぶことも重要です。カルチャーマッチしていないと、いくらスキルがあっても昇格・昇給はできませんから」(Cさん)
「会社のビジョンに共感できない」未来に、今から備える
GettyImages / Satoshi-K
3社目までは「年収を上げること」を転職の軸にしていたが、今は「年収は下がらなければいい」という考えだ。代わりに重視するようになったのが、「会社のミッションやバリューに共感できるか」。
前職は複数の子会社を持つグループ会社。Cさんは子会社で働いており、子会社のビジョンにも共感していたが、親会社の意向によって、徐々にそれが蔑ろにされていった。
そうなって初めて、お金は働く動機として不十分なのだと痛感したという。
「現職(メルカリ)のミッションやバリューには心から共感しています。でも、会社の方針が変わることはある。
正直、この年収とワークライフバランスを維持して転職できる気がしないのが本音です。会社に不満が出てきても、辞められないかもって。
だからこそ、状況が変わったら転職できるように、自分の市場価値を上げる努力を怠らないでいたいんです」(Cさん)
自分の市場価値を客観的に把握しよう
そんなCさんが日々チェックしているのが、企業から年収を提示された上で転職のオファーを受けられる、エンジニア向けの転職サイトだ。
「このサイトで自分の市場価値をいつも確認するようにしています。とある責任の大きな仕事を任されて以降、提示される年収が上がったので、(前出のような)転職への不安はある程度は解消されました。
前職では、最先端の技術に触れられる部署に異動した直後に、自分の市場価値がグッと上がって。
今いる場所で自分の価値をどこまで上げられるかを、追求していきたいですね」(Cさん)
どこまで年収を上げられるか知って欲しい
ここまでWorkCircleの「証明済み年収物語」の協力を得て、仕事と人生、そしてお金について話を聞いてきた。
WorkCircleには現在、自身の給与情報を所属企業を明かした上で提供することで、他人の給与情報にもアクセスできる「認証済み年収データベース」があり、外資IT企業や日系大企業で働く600人以上の情報が集まっている(2024年11月時点)。
ユーザーが盛り上がるテーマは、入社後の昇進スピードや昇給率、転職時の給与交渉の有無、また外資系企業では給与の内訳(株式報酬比率など)などだ。
同社でコミュニティマネージャー兼プロダクトマネージャーを務める塩谷友里恵さんは、多くのユーザーは「時の経過と共にどのように給与が変化していくのか、どのタイミングで給与が上がるのか興味を持っています」と話す。
「『証明済み年収物語』を始めたのは、キャリアの分岐点である転職や昇進・昇給の際にどのように給与が変化したのかを、当事者のストーリーベースで可視化することで、どこまでの高収入が現実的に目指せるのか知って欲しいと思ったからです」(塩谷さん)
日本のビジネスパーソンは、「自身の価値を低く見積もっている、もしくはどこまで目指せるかわからない」人が多いという塩谷さん。背景には、給与や転職の情報について、社員と企業、そして社員同士での格差が依然として大きいことがある。
こうした格差を埋める情報を提供することで、個人、ひいては日本社会の競争力を上げていきたいという同社。挑戦は始まったばかりだ。