基本構想その4 翼型
- 2018/05/11
- 20:27
実機の翼型は米国NASAの前身NACAが開発したNACA633-618です。
所謂NACA6シリーズの層流翼型で18%の翼厚です。
6シリーズの命名法がうろ覚えになっていたのでここで再確認しました。
最初の6は6シリーズ(層流翼シリーズ)であることを意味します。層流翼シリーズとは翼の最大厚を比較的後方に置くことで、翼上面の最低圧力の位置を後方にずらします。これによって前縁から最大厚付近までの空気の流れを加速してその部分の流れを層流(きれいに整った流れ)に保つことで抵抗の少ない翼型を実現するという狙いで開発された一連の翼型です。
次の3は最低圧力の位置を前縁から30%翼弦長の位置に設定したことを意味します。その次の3はこの後の6と対になって意味を持ちます。即ち4番目の数字の6が設計揚力係数を意味し、その前の3はその設計揚力係数の前後±0.3の範囲で抵抗が低いと伝えています。つまり本翼型の設計揚力係数は0.6で、その前後0.3の範囲、即ち0.3~0.9の揚力係数の範囲で抵抗が少ないということです。最後の2桁の18は翼厚を意味しますので、本翼型の翼厚は翼弦長の18%と言うことです。
さて、一般に翼型の空力性能(最大揚力係数や抵抗係数)は翼弦長が長いほど、飛行速度が速いほど良くなる性質があります。即ち翼弦長と飛行速度の積が大きいほど空力性能が良くなります。この積の値を表すのにレイノルズ数Reと言う値があります。Reは翼弦長と飛行速度の積を空気の動粘性係数で割ったもので、
Re=(C*V)/ν
と記されます。Cは翼弦長、Vは飛行速度、νは空気の動粘性係数で、その値は1.50E-05 m^2/secです。何故にνで割るのかと言う詳しい説明は避けますが、翼型に及ぼす空気の慣性力と粘性力の比を意味します。つまり、レイノルズ数Reが大きくなるほど粘性の影響が減って翼型の空力性能が改善されるということです。
そこで問題になるのは、実機と1/3模型のレイノルズ数の相違ですのでこれを次に検討します。実機の翼弦長Cは中央翼で1.2m、外翼は1.2m~0.54mにテーパーしています。このようなテーパー翼の代表的な翼弦は平均空力翼弦(MAC: Mean Aerodynamic Chord)と言いますが、三田式3型改1の場合は1.04mと計算されます。対して、1/3模型では当然その1/3の0.347mとなります。
次に飛行速度Vですが、最良滑空速度で考えてみます。実機の複座状態でその速度は時速82.7km/h、即ち23.0m/secです。1/3模型の最良滑空速度は未だわかりませんが、凡その値は次のように推測されます。滑空中の翼に働く揚力Lは機体の重量Wと釣り合っています。揚力は次の式で与えられます。
L=1/2ρV^2*S*CL
ρは空気密度、Sは主翼面積、CLは揚力係数です。揚力Lは機体重量Wと釣合っていますからLをWに置き換えて、式を変形すると、
V=2*√(W/S)/(ρ*CL)
空気密度ρは実機も1/3模型も同じです。揚力係数CLもそれほど異なりません。そうすると、飛行速度VはW/S即ち、単位面積当たりの重量(これを翼面荷重と言います)の平方根に比例することになります。実機の翼面荷重はW=450Kg、S=15.87m^2から、W/S=28.36となります。
1/3模型の重量はこの段階ではまだ正確に判りませんが、次の基本構想5 目標重量で検討するように、10Kg以下になります。ここでは仮にW=10Kgと置くと、S=1.76m^2ですから、W/S=5.68となります。従って、1/3模型の翼面荷重の平方根は実機のそれの0.445となります。1/3模型の最良滑空速度は実機の凡そ0.44倍程度に下がることになります。
以上のことから、実機と1/3模型のレイノルズ数は凡そ次のようになります。
実機Re=1.04*23.0/1.50E-05=1.6E+06=1,600,000
模型Re=0.347*23.0*0.44/1.50E-05=2.3E+05=230,000
即ち、実機は約160万に対して、模型は23万と実機の14%程度に落ちますので、翼型の空力性能は実機よりかなり悪くなってしまうことが予想されます。そこで、模型のレイノルズ数で少しでも空力性能が良く、尚且つ実機の翼型のシルエットイメージを壊さないものを採用したいと思って探し当てた翼型が同じNACA6シリーズの15%翼厚のNACA632-615です。
両翼型の比較図を下に示します。

断面が見えない状態ではシルエット的に殆ど違いが判らないかと思います。
両翼型の空力性能を比較して示します。手元にあったデータはレイノルズ数100万と20万ですので、100万を実機レイノルズ数、20万を1/3模型レイノルズ数として見ます。
まずはRe=100万での抵抗係数の比較です。

両翼型の抵抗係数はほぼ同じで、迎角が-4°~+6°程度の間はCd=0.007程度の非常に小さい値を保ちます。一方模型レイノルズ数のRe=20万では次のようになります。

実機翼型の633-618は抵抗係数の低い迎角の範囲でもその値は0.016~0.018とRe=100万の場合の倍以上に増えます。一方632-615は0.014~0.015と倍増で済みます。
一方、揚力係数は次のように、Re=100万でもRe=20万でもほぼ両翼型は同じです。


このことから、グライダーにとって重要な揚力と抗力の比である揚抗比(CL/Cd)は次のようになります。


Re=100万では両翼型の揚抗比はほぼ同等で、最大揚抗比は130超が実現されますが、Re=20万では抵抗係数の違いから、迎角7.5°程度までは明らかに632-615の方が優れた特性を示します。最大揚抗比も632-615は81.6、633-618は72.2と、前者が約
13%程優れます。
以上のようなことから、実機のレイノルズ数では18%翼型と15%翼型の性能に差は殆ど無いことが判りました。厚翼にするほど構造的には強度、剛性を確保し易くなりますから、実機が18%翼型を採用した理由は良く判ります。一方1/3模型では最大揚抗比が実機の72.2/132=0.55と激減しますから、少しでも滑空性能の劣化を食い止めるために、15%翼型を採用することにします。
所謂NACA6シリーズの層流翼型で18%の翼厚です。
6シリーズの命名法がうろ覚えになっていたのでここで再確認しました。
最初の6は6シリーズ(層流翼シリーズ)であることを意味します。層流翼シリーズとは翼の最大厚を比較的後方に置くことで、翼上面の最低圧力の位置を後方にずらします。これによって前縁から最大厚付近までの空気の流れを加速してその部分の流れを層流(きれいに整った流れ)に保つことで抵抗の少ない翼型を実現するという狙いで開発された一連の翼型です。
次の3は最低圧力の位置を前縁から30%翼弦長の位置に設定したことを意味します。その次の3はこの後の6と対になって意味を持ちます。即ち4番目の数字の6が設計揚力係数を意味し、その前の3はその設計揚力係数の前後±0.3の範囲で抵抗が低いと伝えています。つまり本翼型の設計揚力係数は0.6で、その前後0.3の範囲、即ち0.3~0.9の揚力係数の範囲で抵抗が少ないということです。最後の2桁の18は翼厚を意味しますので、本翼型の翼厚は翼弦長の18%と言うことです。
さて、一般に翼型の空力性能(最大揚力係数や抵抗係数)は翼弦長が長いほど、飛行速度が速いほど良くなる性質があります。即ち翼弦長と飛行速度の積が大きいほど空力性能が良くなります。この積の値を表すのにレイノルズ数Reと言う値があります。Reは翼弦長と飛行速度の積を空気の動粘性係数で割ったもので、
Re=(C*V)/ν
と記されます。Cは翼弦長、Vは飛行速度、νは空気の動粘性係数で、その値は1.50E-05 m^2/secです。何故にνで割るのかと言う詳しい説明は避けますが、翼型に及ぼす空気の慣性力と粘性力の比を意味します。つまり、レイノルズ数Reが大きくなるほど粘性の影響が減って翼型の空力性能が改善されるということです。
そこで問題になるのは、実機と1/3模型のレイノルズ数の相違ですのでこれを次に検討します。実機の翼弦長Cは中央翼で1.2m、外翼は1.2m~0.54mにテーパーしています。このようなテーパー翼の代表的な翼弦は平均空力翼弦(MAC: Mean Aerodynamic Chord)と言いますが、三田式3型改1の場合は1.04mと計算されます。対して、1/3模型では当然その1/3の0.347mとなります。
次に飛行速度Vですが、最良滑空速度で考えてみます。実機の複座状態でその速度は時速82.7km/h、即ち23.0m/secです。1/3模型の最良滑空速度は未だわかりませんが、凡その値は次のように推測されます。滑空中の翼に働く揚力Lは機体の重量Wと釣り合っています。揚力は次の式で与えられます。
L=1/2ρV^2*S*CL
ρは空気密度、Sは主翼面積、CLは揚力係数です。揚力Lは機体重量Wと釣合っていますからLをWに置き換えて、式を変形すると、
V=2*√(W/S)/(ρ*CL)
空気密度ρは実機も1/3模型も同じです。揚力係数CLもそれほど異なりません。そうすると、飛行速度VはW/S即ち、単位面積当たりの重量(これを翼面荷重と言います)の平方根に比例することになります。実機の翼面荷重はW=450Kg、S=15.87m^2から、W/S=28.36となります。
1/3模型の重量はこの段階ではまだ正確に判りませんが、次の基本構想5 目標重量で検討するように、10Kg以下になります。ここでは仮にW=10Kgと置くと、S=1.76m^2ですから、W/S=5.68となります。従って、1/3模型の翼面荷重の平方根は実機のそれの0.445となります。1/3模型の最良滑空速度は実機の凡そ0.44倍程度に下がることになります。
以上のことから、実機と1/3模型のレイノルズ数は凡そ次のようになります。
実機Re=1.04*23.0/1.50E-05=1.6E+06=1,600,000
模型Re=0.347*23.0*0.44/1.50E-05=2.3E+05=230,000
即ち、実機は約160万に対して、模型は23万と実機の14%程度に落ちますので、翼型の空力性能は実機よりかなり悪くなってしまうことが予想されます。そこで、模型のレイノルズ数で少しでも空力性能が良く、尚且つ実機の翼型のシルエットイメージを壊さないものを採用したいと思って探し当てた翼型が同じNACA6シリーズの15%翼厚のNACA632-615です。
両翼型の比較図を下に示します。
断面が見えない状態ではシルエット的に殆ど違いが判らないかと思います。
両翼型の空力性能を比較して示します。手元にあったデータはレイノルズ数100万と20万ですので、100万を実機レイノルズ数、20万を1/3模型レイノルズ数として見ます。
まずはRe=100万での抵抗係数の比較です。
両翼型の抵抗係数はほぼ同じで、迎角が-4°~+6°程度の間はCd=0.007程度の非常に小さい値を保ちます。一方模型レイノルズ数のRe=20万では次のようになります。
実機翼型の633-618は抵抗係数の低い迎角の範囲でもその値は0.016~0.018とRe=100万の場合の倍以上に増えます。一方632-615は0.014~0.015と倍増で済みます。
一方、揚力係数は次のように、Re=100万でもRe=20万でもほぼ両翼型は同じです。
このことから、グライダーにとって重要な揚力と抗力の比である揚抗比(CL/Cd)は次のようになります。
Re=100万では両翼型の揚抗比はほぼ同等で、最大揚抗比は130超が実現されますが、Re=20万では抵抗係数の違いから、迎角7.5°程度までは明らかに632-615の方が優れた特性を示します。最大揚抗比も632-615は81.6、633-618は72.2と、前者が約
13%程優れます。
以上のようなことから、実機のレイノルズ数では18%翼型と15%翼型の性能に差は殆ど無いことが判りました。厚翼にするほど構造的には強度、剛性を確保し易くなりますから、実機が18%翼型を採用した理由は良く判ります。一方1/3模型では最大揚抗比が実機の72.2/132=0.55と激減しますから、少しでも滑空性能の劣化を食い止めるために、15%翼型を採用することにします。