知事を告発した職員を「死をもって抗議」に追い込んだ兵庫県の「懲戒」 公益通報者を守れぬ「保護法」の実態

2024年7月17日 12時00分 有料会員限定記事
0

記事をマイページに保存し、『あとで読む』ことができます。ご利用には会員登録が必要です。

 パワハラや物品の授受を巡る兵庫県知事の疑惑を告発した県幹部の男性が、県議会の調査特別委員会(百条委)への証人出席を前に亡くなった。改正公益通報者保護法は通報者捜しや不利益な扱いを禁じているが、県は公益通報とは別に調査を行い、男性を懲戒処分としていた。組織の不正をただす告発者が、守られる環境を実現するには。(山田雄之、西田直晃)

職員へのパワハラなど斎藤元彦兵庫県知事の疑惑7項目を挙げた告発文書

 「3年前に多くの負託を受けた」「県政を前に進めることが、私の責任の取り方」。1時間40分に及んだ16日の斎藤元彦兵庫県知事の定例記者会見。進退を問われるたび、硬い表情で繰り返し辞職を否定した。

◆頭ごなしに「うそ八百」「公務員失格」

 発端となったのは、元県西播磨県民局長(60)が斎藤氏のパワハラなどを指摘した内部告発だ。退職前の3月中旬、疑惑7項目を挙げた文書を県議や報道機関に配布。元局長の告発文書によれば、「おねだり体質は県庁内でも有名」として物品を業者から譲り受けたことや、出張先の施設のエントランスから20メートルほど手前で車を降ろされた知事が歩かされ、職員を怒鳴り散らす出来事があったと訴えている。
 県は同月27日に元局長の退職を取り消す人事を発表し、斎藤氏は定例会見で「事実無根が多々ある」「うそ八百」「公務員失格」と断じた。告発にあったコーヒーメーカーの授受を幹部の1人が4月に認めたものの、県は5月にこの文書を誹謗(ひぼう)中傷と認定。元局長を停職3カ月の懲戒処分にした。調査の中立性が疑われ6月に県議会が百条委を設置。元局長は今月19日に証人として出席予定だったが、7日に死亡しているのが見つかった。自殺とみられるという。

◆副知事は涙ながらに辞任を表明

 周囲からは辞職を求める声が強まる一方だ。12日に片山安孝副知事が涙ながらに引責辞任を表明し、斎藤氏にも複数回求めたが応じなかったと説明。14日には前回知事選で斎藤氏を推薦した自民党県連会長の末松信介参院議員が「大きな正しい決断をしてほしい」と事実上、辞職を要求した。
 関係者によると、元局長の死後、百条委で読み上げる予定だった陳述書や、斎藤氏が公務中に県特産品のワインをねだるようなやりとりが記録された音声データが残されていたことも判明。「死をもって抗議する」という趣旨のメッセージも残しており、遺族が提出した。百条委は16日の理事会で、19日の会合で調査資料とする方針を決めた。

◆パワハラの告発には事実が含まれていた

 斎藤氏はどんな人物か。東大卒の元総務官僚で大阪府への出向を経て2021年に県知事選に出馬。自民の支援が分裂する中、維新の推薦を受けて初当選した。

斎藤元彦兵庫県知事のホームページ(スクリーンショット)

 「ひょうひょうとして、議会以外でもあいさつする腰が低い印象の知事だったので、告発内容は驚いた」と語るのは疑惑の解明に努める無所属の丸尾牧県議。4〜6月に庁舎前などで県職員向けのアンケート約400枚を配り、27人の回答があった。「擦り合わせると、おねだり体質やパワハラの告発には十分に事実が含まれていた。知事が具体的な説明を果たさず、職に固執する理由が理解できない」と首をかしげる。

◆通報後の処分は禁止されているが

 県職員労働組合の土取節夫中央執行委員長は「職員たちから『県政が滞っている』と聞く。一刻も早く刷新されてほしい」とした上で、「辞めたとしても責任が果たされるわけではない。人が亡くなっている。真実を明らかにしなければいけない」とくぎを刺した。
 兵庫県の元局長のような内部告発者を守るため、通報後の処分を禁止した「公益通報者保護法」がある。2022年施行の改正法で、受付窓口の整備が義務付けられたほか、調査担当者に守秘義務が課された。解雇...

残り 1508/3016 文字

「東京新聞デジタル」スタート
この記事は会員限定です。

有料会員に登録すると
会員向け記事が読み放題
記事にコメントが書ける
紙面ビューアーが読める(プレミアム会員)

※宅配(紙)をご購読されている方は、お得な宅配プレミアムプラン(紙の購読料+300円)がオススメです。

会員登録について詳しく見る

よくある質問はこちら

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。

カテゴリーをフォローする

  • 『カテゴリーをフォロー』すると、マイページでまとめて記事を読むことができます。会員の方のみご利用いただけます。

  • 『カテゴリーをフォロー』すると、マイページでまとめて記事を読むことができます。会員の方のみご利用いただけます。

コメントを書く

ユーザー
コメント機能利用規約

    みんなのコメント0件


おすすめ情報

こちら特報部の新着

記事一覧