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アンダーグラウンド・テンプレート

昨今、昔は忌避されて隠れていたアングラ文化が注目を浴びて、サブカルチャーに変化した。
「推し活」はマーケティングに使われ、「昨日の〇〇見た?」にはアニメタイトルが入る。
TikTokではインフルエンサーがアニソンに合わせて踊り、TVでは芸能人として声優がバラエティに出演する。
ぼくらが陽キャから隠れて生きてきた日々が嘘のように、オタクの市民権は一般人と同レベルに達しつつあるように見える。

しかし、今日のオタク特集で映し出されるのは女性向けジャンルにぬいぐるみやアクスタ片手に写真を撮る女オタク。まあ「金になる」点で見ると、数の多い女オタクを取り上げたりするのは妥当だろうし、昔からのオタクのイメージをブラッシュアップする目的もあるのだろう。
BL、NL、夢にスポットライトが当たる一方、男オタクやGLにはまだまだ厳しい世界のようだ。
百合厨のぼくは少し泣いた。
まあ、こういうぼくも、アクスタとご飯で写真を撮る女オタクなのだが。

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ぼくが沖縄で撮った写真 アクスタは倉敷さん(@kura1512)


「オタク」と同様に「メンヘラ」にも変化が訪れている。
メンヘラの初出は2ちゃんねるのメンタルヘルス板。ただ、こころに不調を抱えた人たちが慰めあう場所だった。
ぼくが初めて書き込んだスレッドはここにある。ぼくだってメンヘラだったのだ。
それが今ではステータスに変わった。「ファッションメンヘラ」という言葉が現れるくらいには。
男が自分のことをメンヘラ製造機だと自慢し、
女が私ってメンヘラかもー、とハーフツインをしてカッターを握る。どうせそのカッターで腕を切ることはないのに。
「メンヘラ」も「オタク」と同様に一般化され、「地雷系」「病みカワ」となって日常生活に染み込んでいる。
JS〜JC向けの雑誌、「りぼん」がおくすりマーカーやらお注射ペンやらを付録に付けていたりするし、HoneyWorksだって闇が強いタイプの曲を出して英才教育を行っている。
こうしてメンヘラはトレンドになり、ステータスに変わったのだ。

そんなマスメディアたちの努力によってアングラ文化は一般化された。
けれど、ぼくはこの変化を肯定的には受け取れない。ぼくは過去を美化し、それに憧れを持つ人間だ。まるで2ちゃんまとめ動画に出てきたスラングを日常で使う子供のように、ぼくは昔のアングラ文化を過激で面白いものだ、と崇拝しているのだ。文化の一般化、すなわち昔から持つ強烈さが薄れたのだ。 それは悪い話ではないのかもしれない。それでも、なんだかぼくには、アングラ文化というものがチープでつまらない露悪的なものになってしまったように感じる。
アングラ文化にはルールがあった。ルールを守れない人間は「半年ROM」らなければならなかった。
今のインターネットはどうだろうか?醜い争い・炎上が絶えないこの場所に、ルールは存在するのだろうか?いいや、ノーだ。この電子の世界はアナーキーなのだ。

文化の露悪化は最近顕著に見られるようになってきたと思う。
過激な「曇らせ」に人が集まるようになった。日常系アニメをほぼ見なくなった。
ソシャゲのシナリオはシリアスであればあるほど称えられ、初心者がそれを読む様を「愉悦」などとニヤケ笑いを浮かべながら面白がる。
インターネットの低年齢化に反比例するように、その内容は鬱屈になっている。“好奇心”で小学生がオーバードーズをした事件だってある。
トレンドを押すだけで目に入る社会への不満。
病み垢、摂食界隈、奇形界隈、政治垢。
増えるオタクと減らないオタク叩き。
人間が闇に染まるのにここまで完璧な場所はないだろう。そうして闇に染まって承認欲求以外すべてを落っことした人間の名称に「メンヘラ」があてがわれた。するとメンヘラはあっという間に増殖した。
絵が、小説が、ゲームが、メンヘラのテンプレートを作り出す。
ハーフツインやウルフカット、ピンクと黒で、厚底スニーカーで、ハイライトはない。付属品にオーバードーズとリストカットとかがあって…。
オタクが愛したものたちは、すべて化け物を作り出す道具へと変貌した。
まあ、オタクの大半がメンヘラと化したこの世界では誰もこんなこと気にも止めないのだろうが。
アンダーグラウンドはアナーキーに変貌した。
ただ「メンヘラ」というアングラの真似事のテンプレートだけを残して。

ぼくにとってのオタクは、信者である。「嫁」を崇拝し、なによりも愛する、常人の道をちょっと外れたなにか。
ぼくにとってのメンヘラは、どこにでもあるものだった。ただ精神に問題を抱え、傷ついている人間だったのだ。
この2つには相関性なんてないはずなのに、令和の世では「メンヘラ」は「オタク」の進化形を指してしまう。
こんなインターネットにぼくは耐えられない!
どうしてぼくはこの時代に生まれてしまったのだろうか、もう少し早く生まれたかった。
「インターネット黎明期」のアングラ感を、ぼくは直で味わいたかったのだ。

ぼくはやはり、過去賛美が過ぎるのだろう。
こんなぼくもまた、この露悪的な電子の海を漂うメンヘラであるのに。


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アンダーグラウンド・テンプレート|にゃつめ
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