「天国で楽しくやっていてねと思いながら、いつも声をかけています」
こう話すのは喜三誠志さん(63)です。
ことし9月の豪雨災害で孫の喜三翼音さんを亡くしました。
誠志さんは豪雨災害から2か月となるきょう、石川県野々市市の自宅にある仏壇の前で静かに手を合わせて孫の死を悼みました。
翼音さんは美術部で絵を描くことが好きだったということで、誠志さんのもとには翼音さんの死を知った人から似顔絵や手紙などが届けられています。
“孫との約束” 祖父がフクロウを描き続ける理由
石川県能登地方の豪雨災害から2か月となるきょう、輪島市の川の氾濫で中学3年生の孫を亡くした祖父がNHKの取材に応じ「災害への備えをすれば今後、孫のように犠牲となる人は減ると思うし、それがせめてもの供養になる」と今の思いを語りました。
“寄り添う2羽のフクロウ”
誠志さんは「輪島塗」のまき絵師で、輪島市の朝市通りに店を出していましたが、1月の能登半島地震による大規模な火災で店舗は全焼しました。
ことし5月には100キロ以上離れた石川県野々市市に移り、自宅兼工房で製作を続けています。
亡くなった孫の翼音さんも地震の後も休日などには店の手伝いをしてくれたということで、ことし8月にも工房を訪れたといいます。
この時に翼音さんからアドバイスを受けたのがフクロウのデザインでした。
「かわいいので店の看板商品にした方がいい」と言っていたといいます。
1羽だけではさびしいので2羽のフクロウが寄りそったデザインにしてほしいとも言われ、そのアイディアを取り入れた漆器のマグカップはことし9月に完成。
その直後の豪雨で翼音さんは命を落としました。
“フクロウ描き続けることが翼音との約束”
誠志さんは、生前の翼音さんのアイデアをもとに「寄り添う2羽のフクロウ」を漆器のマグカップに描き続けています。
まき絵は漆器などの表面に細い筆を使ってうるしで絵を描き、金粉をほどこすなどして仕上げます。
「HAnonのフクロウ」と名づけこれまでにおよそ100個を製作しました。
なぜ孫が亡くなってしまったのか、助けることはできなかったのか。
悲しみや後悔の思いは今も消えませんが、それでもフクロウを描き続けることが翼音さんとの約束だと感じています。
いつ誰が災害に巻き込まれてもおかしくないことを知ってほしいという思いも込めて製作を続ける誠志さんは「翼音は優しかったですし、いつも店を手伝うよと言ってくれていました。翼音のことを思いながらフクロウを描いています」と話していました。
“翼音のフクロウを全国の人に見てほしい”
誠志さんは翼音さんのアイディアを取り入れて製作した、フクロウを描いたマグカップを多くの人に見てほしいと各地を回っています。
11月16日には東京・千代田区で開かれたイベントに出店しました。
店内には誠志さんがまき絵をほどこした輪島塗の箸やお椀のほか、フクロウを描いたマグカップが並べられました。
店頭に立ち続けた誠志さんは、マグカップを手にした客に翼音さんの写真を見せながら、災害はけっして人ごとではないという思いで豪雨災害の状況などを伝えていました。
50代の女性は「災害は大変だと思いますがやっぱり体験しないとわからないと思いました。実際にご家族からお話を聞くことができてこれまでと違って感じることができました」と話していました。
誠志さんは豪雨災害のあと静岡県の催しにも店を出し、11月23日には大阪・堺市で、24日には兵庫県西宮市で開かれるイベントでも店を出すことにしています。
誠志さんは「翼音の死を無駄にしたくないんです。全国各地でさまざまな災害があると思いますが、多くの人にこのフクロウを手に取ってもらって私のようにならないように、皆さんふだんから気をつけてくださいというメッセージを伝えたい」と話していました。
“災害の犠牲となる人が減れば せめてもの供養に”
豪雨災害から2か月となるきょう。誠志さんは改めて胸の内を語ってくれました。
「翼音が災害で亡くなるとは思ってもいませんでしたし、いまだに信じられないという気持ちです。豪雨災害の記憶は薄れてしまい、何が起きたのか忘れられてしまうかもしれません。ただ、災害に日頃から備えをしてもらえれば翼音のように犠牲となる人は減ると思いますし、それがせめてもの供養になると思います」
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