みんなでファクトチェック ファクトチェック団体「リトマス」に聞く② SNSプラットフォームとの取り組み

Nらじ
放送日:2024/11/08
#インタビュー#SNS
さまざまな情報の真偽を検証する「ファクトチェック」の活動は、どのように行われているのか。前回に引き続き、国内で活動している団体のひとつ、リトマスの代表を務める大谷友也(おおたに・ともや)さんにお話を伺います。リトマスは、2022年に設立し、公式のウェブサイトでファクトチェックの記事を発信し続けています。検証記事の質の高さなどが認められ、去年、国際的なファクトチェック団体の認証を受けました。そしてこの秋からは、ソーシャルメディアの世界的なプラットフォームと、新たなファクトチェックの取り組みを始めています。その内容や課題などについて伺います。(聞き手:杉田淳ニュースデスク、柴田祐規子アナウンサー)
【出演者】
大谷:大谷友也さん(リトマス代表理事)
SNSプラットフォームと始めたプログラムとは
柴田:
大谷さんが代表を務めるファクトチェック団体のリトマスでは、SNSのフェイスブックなどを運営するメタ社と新たな取り組みを始めたということなんですが、今回はまずそこから教えていただけますか?
大谷:
リトマスは9月からメタ社と提携しまして「第三者ファクトチェックプログラム」というのを始めています。これはメタ社のほうからリトマスに委託して、何か誤っている可能性のある情報があったら、リトマスが選別して、それについてリトマスで作ったファクトチェック記事に誘導するようなメッセージをひも付けるっていうふうにするという形です。
柴田:
メタ社のほうから、フェイスブックなどで流れる情報のファクトチェックをリトマスさんお願いします、と。それで、リトマスのほうで記事を出していってくださいねってことですか。
大谷:
そうですね。メタから「この情報をファクトチェックしてください」というように指定されるわけではなくて、リトマスが自由にメタのフェイスブックなり、インスタグラムなりの情報を見て、これは検証できるなって思った情報があったらファクトチェックの記事を書いて、もとの情報からその記事にリンクがはられるっていう形ですね。
柴田:
その場合はメタ社からお支払いはあるわけですか。
大谷:
そうですね、いくらかはあります。
柴田:
それは報酬というか、何か「ファクトチェック代金」っていうような感じなんですか。
大谷:
一応そうなりますね。
杉田:
それはメタ社としてはどういう意図があるんですか?
大谷:
SNS上の誤情報に対してプラットフォームの責任っていうものが社会的に言われるようになってきたので、それぞれのプラットフォームは対応していることが多いんですね。その流れで、メタ社も「第三者ファクトチェックプログラム」というのを、海外では何年も前からやっていますが、日本では今年になって始まったものです。
杉田:
メタ社から第三者プログラムを委託されたファクトチェック団体というのは日本ではリトマスが初めてということですね。
大谷:
そうですね。第三者ファクトチェックのパートナーとしてやっていく条件のひとつとして、IFCNという、国際ファクトチェックネットワークという国際団体があるんですけれども、そこから十分信頼できるファクトチェック団体だというふうに認められたメディア、日本では今のところ3つ、ネット上でやっているメディアがあるんです。日本ではその3つの中からリトマスが選ばれたという形になってます。
柴田:
実際にこのプログラムでリトマスが手がけた例を教えていただけますか?
大谷:
今のところ始めたばかりで多くはないんですが、この間、中国に台風が上陸した際、中国でこんなに被害が起きてますっていう映像がフェイスブックで流れたんですが、その映像が実は昔の関係ない台風の映像でした。その情報には、フェイスブックやインスタグラム、スレッズなどで拡散されたりすると、リトマスの記事を見てねっていうメッセージがつくようになっています。イメージとしては、警告するというよりはちょっとこっちの情報も参考にしてくださいねっていう、違う情報も見てくださいねって呼びかけるような感じです。
こうしたことをきっかけに、ファクトチェックっていう活動があるんだってことを、フェイスブックを主に使ってる方にも知ってもらえたらいいなと思っています。
「ファクトチェック」普及の課題は
杉田:
「ファクトチェック」の知名度って上がってきてるんでしょうか。
大谷:
少しずつ上がってきていると思うんですけれども、まだまだ我々リトマスの名前を知ってる人もほとんどいないでしょうね。海外ではテレビや新聞が日常的にファクトチェックのコーナーを持っていて日常的に発信しています。例えばこの間のアメリカの大統領選の討論会のとき、トランプ氏が誤ったことを言ったらすぐに司会者がいやそれはちょっと違いますね、これはこういうデータがありますよ、みたいな訂正情報をすぐ発信できるようになっていたり、リアルタイムでできる体制が出来上がってるんですけれども、日本の場合はまだそこまでいっていないと思います。
杉田:
ファクトチェックはこの先どうなっていくんでしょう。課題についてはどのように感じていますか?
大谷:
課題としては、生成AIによって素人でも精巧な偽動画、偽画像を作れたりするようになると言われています。それに関しては、日本では今のところあまり広まっていないかと思っています。というのはそこまで精巧なものを作らなくても人は結構だまされてしまうっていうのがあります。割とチープな、「チープフェイク」って呼ばれているものですけれども、画像などを部分的に変えたり、過去の関係ない映像を今の出来事かのように言い張ったり、そうした簡単なトリックによって結構たくさんの人がだまされるという現実がありますので、精巧な偽動画や偽画像は、ある意味あんまり広まっていないかと思います。
もうひとつの課題としては、誤情報対策について、政府のほうからも誤情報が多いから何とかしなさいみたいに言うことがあって、それを受けてプラットホームが対応したりということもあるんです。でもそれがあまり行き過ぎてしまうと政府の都合のいい情報ばかり流れる、ディストピア(抑圧的な社会)ぽいことが起きてしまって、政府の都合の悪い情報を流す人がフェイクニュースを流したとして逮捕されたりとか、そういった未来が日本で起きないともかぎらない。ですから、政府が誤った情報を、災害時のうその救助要請などをなくしたいという気持ちも分かるんですけが、そういったことからどんどん広がって、あれこれが誤情報だから早く対応しなさい、みたいに言われるようにならないよう、バランスを気をつけなきゃいけないということはこれからあります。
柴田:
その部分は独立した精神を保っていくということですね?
大谷:
そうですね、政府から言われないためにも、民間のほうできちんと努力して十分やれてますから、別に政府は口出ししなくて大丈夫ですっていうのが必要かなと思っています。
杉田:
リトマスはそこにどう関わっていこうという抱負をお持ちですか?
大谷:
メタとの連携もそうですし、プラットフォームで起きた出来事はプラットフォーム内で十分コントロールして、偽情報がはびこらないようにする努力をしていただきたいと思ってますし、そのためにリトマスも協力したいと思って連携を始めたって形ですね。
柴田:
ファクトチェックする対象を今後リトマスは広げていく計画はありますか?
大谷:
そうですね、テーマに関しては今までどおりノンジャンルという形でやると思うんですが、対象については、今までツイッター、X中心だった対象をメタにも広げたように、最近は動画、YouTubeやTikTokを特に若い人や、若い人以外でも動画メディアは結構見ていると思うので、そうしたところはリトマスは今のところ手薄かと思うので、そのあたりにも積極的に取り組みたいと思っています。
あとはネットだけでなくて、リアルで有名人が発言したこと、政治家が発言したこと、あるいはメディアが報じたことについてもファクトチェックの対象になっていますので、それらも漏れなく取り組んでいきたいと思います。
柴田:
リスナーからの投稿をご紹介します。
最近は偽情報がすごく多いから、こういったファクトチェックしてくれるところがあると、すごくありがたいよね。
柴田・杉田:
ありがとうございます。
ここまで「みんなでファクトチェック」のコーナーでした。
【放送】
2024/11/08 「Nらじ」