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兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に

はじめに

2024年11月17日、兵庫県知事選挙にて、斎藤元彦さんの当選が決まりました。心よりお祝い申し上げます。前代未聞の歴史的な選挙が無事に終わった今、「SNS」という言葉が一人歩きしてしまっているので、斎藤陣営で広報全般を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います。

きっかけ

とある日、株式会社merchuのオフィスに現れたのは、斎藤元彦さん。
それが全ての始まりでした。
ご本人が何度も口にしている通り、政党や支持母体などの支援ゼロで本当にお一人から始められた今回の知事選では、新たな広報戦略の策定、中でも、SNSなどのデジタルツールの戦略的な活用が必須でした。
兵庫県庁での複数の会議に広報PRの有識者として出席しているため、元々斎藤さんとは面識がありましたが、まさか本当に弊社オフィスにお越しくださるとは思っていなかったので、とても嬉しかったです。

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merchuオフィスで「#さいとう元知事がんばれ」大作戦を提案中

その時作成した資料を一部公開します。

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提案資料(一部)
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提案資料(一部)
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提案資料(一部)

ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました。

1. プロフィール撮影

まず、プロフィール写真の撮り直しからスタート。3年前の兵庫県知事選挙の時のイメージは、今の斎藤さんのイメージと異なるため、撮り直しのご提案をしました。大阪にプライベートスタジオをお持ちの信頼できるカメラマンさんと、友人に紹介してもらったヘアメイクさんに急遽ご依頼をしました。

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全ての告知物に使われる重要な写真なので全員で念入りにチェック

2. コピー・メインビジュアルの一新

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X本人アカウントでのコピー・メインビジュアル一新の投稿

次に、コピー考案とメインビジュアル作成に移りました。
コピーは、以前の「躍動する兵庫」から「兵庫の躍動を止めない!」へ。
カラーは、兵庫県旗の色を意識した「兵庫ブルー」をベースとした斎藤さんオリジナルの「さいとうブルー」に一新しました。斎藤さんの持つ、芯の強さと柔らかさを、グラデーションカラーで演出しています。グラフィックエレメントは、ご本人の出身地である須磨の海をイメージしたを採用しました。右斜め上に向かわせることで、 今回の選挙戦を突破し、斎藤さんの率いる改革が進み、兵庫が躍動していく様子を表しています。また、斎藤さんご自身の「人生」をも表しているのです。

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提案資料(一部)
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メインビジュアルを一新

メインビジュアルの統一を徹底するため「デザインガイドブック」の作成も合わせて行いました。選挙カーや看板を制作してくださる業者に配布し、統一したデザインで素敵に仕上げていただきました。

3. SNSアカウント立ち上げ

当時、世の中は100%の反斎藤ムード。
一方、少数ではあるものの、Xなどで斎藤さんを応援する声がチラホラ出初めておりました。
プロフィール撮影やコピー・メインビジュアルの作成が完了したタイミングで、【公式】さいとう元彦応援アカウントを立ち上げ、ご本人のSNSアカウントとは別に、応援したい人が集えるハブとして運用を開始しました。

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公開前のX公式応援アカウントプロフィール

セキュリティについて

全てのアカウントで、認証アプリを活用した2段階認証の設定を徹底し、乗っ取りやアカウントバンなどへの対策を行いました。

公式アカウントとしての信頼感の担保

X本人アカウントが、この公式応援アカウントをフォローし、フォロー数を1としたことで、本人公認の公式アカウントであることが明示され、ユーザーが偽アカウントなどと混乱しないような対策を施しました。

ハッシュタグについて

斎藤さんへの世の中の見方を変えていく上で重要だったのが、ハッシュタグ「#さいとう元知事がんばれ」です。
当時、様々なアカウントで多種多様なハッシュタグが使用されており、公式としてタグを一本化して発信することで、応援の流れに方向性を提供する必要があると考えました。また、タグが統一されてポスト数が増えていくことで、アルゴリズムにも有利に働くため、急速な支援の輪の広がりも期待できます。
「#さいとう元彦がんばれ」ではなく、あえて「知事」を入れることで、「さいとうさん=知事」という視覚的な印象づけを狙いました。さらに、「元彦」さんと「元知事」を掛け合わせて、「前知事がんばれ」ではなく「元知事がんばれ」としたのも、こだわったポイントです。ここは、ご本人も気に入っていました!
ハッシュタグというシンプルで簡単に見えるワードでも、それをどのように拡散してもらいたいのか、表記揺れなどを最小限にできるか、入力しやすいかなど様々な視点を考慮して設計することが大切です。
2024年10月7日のX公式応援アカウント公開の翌日には、約2万件の投稿に付与されトレンド入りしました。

4. ポスター・チラシ・選挙公報・政策スライド

今回、既存のやり方は通用しないと考えていたため、紙媒体も既存の型にははめず、斎藤さんのことを分かりやすく様々な年代の県民の皆さまに届けるためにはどうしたら良いのか、仕様やサイズの異なるそれぞれの媒体でのベストをデザインチームと日夜追求しました。斎藤さんの今回の選挙におけるブランドイメージを統一すべく、全ての制作物は先述のデザインガイドブックに準拠する形で制作しています。

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制作した告知物

中でも最も作成に時間を要したのが、こちらの公約スライドです。ご本人から上がってくる文字のみのワードファイルを読み解き、どのような方でも見やすいデザインを意識したスライドに仕上げるため、2024年10月23日に行われた記者発表のギリギリまで手直しをしていました。

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公約スライド(一部)
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公約スライド(一部)

公約スライドの全貌はこちらからご覧いただけます。
https://saito-motohiko.jp/wp-content/themes/saito_motohiko_v3/img/saito-motohiko_20241023.pdf

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X本人アカウントでの記者発表に関する投稿

当日の発表では、公約スライドをパネルとして印刷していただき、多くの媒体に掲載されました。選挙期間中には事務所の壁にも掲示されており、県民の方に斎藤さんの政策や想いを届けることができました。
ご本人から、「1番最初に政策発表記者会見ができて良かった」という言葉を頂き、大手では出せないスピード感や小回りの利いた対応が功を奏したのではないかと振り返ります。実際、全広報活動において、「先手」を意識しておりました。

5. SNS運用

斎藤陣営が公式として運用していたのは、以下のX本人アカウント、X公式応援アカウント、Instagram本人アカウント、YouTubeです。TiktokやLINEなど他にも様々なSNSがあるため、リソースが潤沢に準備できる陣営であれば、全方位的な運営ができたのかもしれません。ただ、今回は本当に限られたリソース(皆さま本業もお忙しい)での運営でしたので、戦略に基づき最適な媒体を取捨選択しました。私のキャパシティとしても期間中全神経を研ぎ澄ましながら管理・監修できるアカウント数はこの4つが限界でした。

◉X本人アカウント:元兵庫県知事 さいとう元彦(当時)
https://x.com/motohikosaitoH
◉X公式応援アカウント:【公式】さいとう元彦応援アカウント
https://twitter.com/saito_ouen
◉Instagram本人アカウント:さいとう 元彦
https://www.instagram.com/motohikosaito_hyogo
◉YouTube:【公式】届け、さいとう元彦の声
https://www.youtube.com/@motohikosaito_hyogo

運用でこだわったポイントは大きく以下です。SNS戦略については、こちらのnoteでは収まりきらないので、また別記事で公開できればと思っています。

・ブランドイメージの統一
・ご本人のリアルな姿や人柄が伝わるコンテンツを届けること
・政策を分かりやすいビジュアルや表現で県民に届けること
・各SNSに適したレイアウトや内容に最適化して届けること
・できる限り配信回数を増やして多くの情報を届けること

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Instagram本人アカウント投稿
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Instagram本人アカウント投稿
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X本人アカウントの投稿
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X公式応援アカウント

私が監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などを責任を持って行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用していました。写真および動画の撮影については、現地で対応してくださっているスタッフの方々にお願いすることをベースに、私自身も現場に出て撮影やライブ配信を行うこともありました。

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選挙カーの上から臨場感を届けるためのライブ配信中

今回の支援期間中にフォロワー数は以下の通り急増し、注目度の高さを日々感じていました。結果、X公式応援アカウントは、東京都知事選挙で盛り上がりを見せた【公式】石丸伸二 後援会のフォロワー数54,000を超えておりました。

◉X本人アカウント:元兵庫県知事 さいとう元彦(当時)
約78,000(9月末時点)→約243,000(11月20日時点)
◉X公式応援アカウント:【公式】さいとう元彦応援アカウント
0(10月7日立ち上げ)→約64,000(11月20日時点)
◉Instagram本人アカウント:さいとう 元彦
約6,800(9月末時点)→約36,000(11月20日時点)
◉YouTube:【公式】届け、さいとう元彦の声
0(10月11日立ち上げ)→約48,300(11月20日時点)

2024年11月19日、斎藤さんが第54代兵庫県知事に就任されたと同時に「#さいとう元知事がんばれ」から「#さいとう元彦知事がんばれ」へとハッシュタグをアップデートすることで、この物語は無事に幕を下ろしました。

選挙は広報の総合格闘技!?

実際選挙を終えてみての私の率直な感想は、「選挙は広報の総合格闘技」であるということです。質・量・スピード全てが求められ、食べる暇も寝る暇もない程でした。脳みそを常にフル回転し続けなければならない点が、最もハードでした。ただ、やはり会社を設立してから仲間とともに日々真剣に広報と向き合ってきたこの8年の経験があったからこそ、この大きな試練も乗り越えることができたのかなと思います。
今回、様々なメディアで「広報・SNS戦略」を誰が手掛けているのかについて憶測が飛び交い、「大手広告代理店がやっている」やら「都内のPRコンサルタントが手掛けている」やら本当に都度事実無根の記事が拡散されていることは身内から聞いていながらも、当時、目の前の成果物を仕上げることだけに集中するようにしていました。当選後の日経新聞の記事や大手テレビ局の複数のニュース番組でも、「400人のSNS投稿スタッフがいた」という次なる「デマ」がさも事実かのように流されてしまい、驚きを隠せないと同時に、「私の働きは400人分に見えていたんや!」と少し誇らしくもなりました。そのような仕事を、東京の大手代理店ではなく、兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたいです
日経新聞の記事:
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF15D1O0V11C24A1000000/
そして、SNSを通して応援の輪が広がった背景を語るのに外せないのは、やはり、デジタルボランティア皆さまの存在だと思っています。広報の総合格闘技の試合の中で、同じ目的に向かって、みんなと一緒に闘っているような感覚を持っていました。ありがとうございました。

最後に

今回の知事選は、兵庫県の未来だけでなく、今後の日本、そして政治や選挙のあり方にすら大きな影響を与える重要な選挙であったと考えており、約1か月半、全身全霊で向き合ってきました。従来のマスメディアを通して、県民の皆さまに情報を届けるのではなく、「オンライン(空中戦)」でも「オフライン(地上戦)」、ご本人の口から、兵庫県に対する想いや、これまでの実績、これから取り組まねばならない重要な政策について、愚直にそして必死に直接語り続けたこと、そしてそれが県民の皆さまに届いたことが今回の勝因だったと考えています。決して「SNS戦略」だけが勝因ではないことも強く訴えたいと思います。出口調査で、政策や公約を重視したという回答が最も多かったことからもそれが裏付けられており、お一人お一人がしっかりと情報を吟味して判断し、投票というアクションを起こした結果、この歴史を変える大勝利を生み出しました。

何はともあれ、私自身も本当に一生の記憶に残る素晴らしい経験をさせていただいた1ヶ月半でした。この記事が、今後の選挙で候補を支える関係者の皆さまに、そして広報に関わる全ての方にとって、役に立つものとなることを心から願っています。
「広報」というお仕事の持つ底力、正しい情報を正しく発信し続けることの大変さや重要性について、少しでもご理解が深まるきっかけになれば幸いです。

最後に、よくご質問を頂きますが、私は政界に進出するつもりは全くありません。また、特定の団体・個人やものを支援する意図もなく、株式会社merchuの社長として社会に貢献できるよう日々全力で走り続けたいと思っています。

結びの言葉として、心からのお祝いを申し上げるとともに大逆転での勝利を掴むことができて本当に良かったと嬉しく思います。
ドラマチックすぎる出来事でしたので、いつか映画化されないかななんて思っています!笑

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X公式応援アカウントのサムネイル撮影の際。須磨海岸にて。

株式会社merchu
代表取締役 折田 楓(おりた かえで)
https://www.instagram.com/kaede.merchu/
https://merchu-inc.com

○ 2021年より兵庫県地方創生戦略委員
○ 2022年より兵庫県eスポーツ検討会委員
○ 2023年より兵庫県空飛ぶクルマ会議検討委員 / 西宮市産業振興審議会委員
フランスESSEC大学留学 | 慶応義塾大学卒業 | フランス大手金融機関勤務 | 株式会社merchu創業・代表取締役

外資系金融機関退職後、母とともに婚活サロン“mariagetutu”を立ち上げ、SNSおよびWebを活用し効率的なターゲット層へのアプローチに成功。
これまでの経験から、ブランディングの持つ影響力や重要性を実感し、オンラインブランディングが実現可能な会社、“株式会社merchu”を地元兵庫県で設立。
兵庫県、広島県、山口県、徳島県、高知県、神戸市、藤沢市、倉敷市、広島市、江田島市、由布市、株式会社リクルートや有馬グランドホテルなど、これまでに150以上の行政・企業・団体の広報・PRを手がけている。
最近では、全国紙へのインタビュー記事の掲載や地元テレビ局・ラジオ局の番組への出演、日本各地でのセミナーなど社外での活動にも力を入れている。

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コメント

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ギンジョウジュンマイ
ギンジョウジュンマイ

広報って倫理観ゼロでもいい仕事なんだ。勉強になりました👌😘

地亜貴(c_c)/
地亜貴(c_c)/

貴重な体験をしっかりまとめたものを読ませていただきありがとうございます。

「400人のSNS投稿スタッフがいた」なんてデマをしっかり払しょくできる1次情報になりますね!

「私の働きは400人分に見えていたんや!」そうおもいますよね!誇らしく思ってよいと思います。

いわゆるオールドメディアvsネット・SNSではなく、多くの有権者が多種多様な情報を得られる環境と、その情報から真実さを確かめ自らの意思を判断できるメディアリテラシーが、今回の選挙をきっかけにさらに向上することを願っています。いや、向上すると確信しています。

ネットを愛する身として、御社と折田さんの活動に感謝です!

ゆたか
ゆたか

素晴らしいですね。
貴重な情報ありがとうございました。
機会があれば、私もデジタルボランティアで協力したいと思います。ボランティアは、具体的には何をすればいいのですか?こちらからの持ち出しは必要ですか?

ジャック
ジャック

丁寧な説明、ありがとうございます

改めて
当選おめでとうございます

これからの兵庫の躍動を心より願っております

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株式会社merchu 代表取締役 / branding, consulting, promotion, produce / Kobe ⇄ Tokyo / born in 1991
兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に|折田 楓
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