3500万円減収、倒産最多 介護報酬減で在宅介護は「崩壊寸前」
4月の介護報酬改定で訪問介護サービスの基本報酬が引き下げられたことが影響し、ある事業者は半年間で前年同期より3500万円減収した。今回の改定は元々経営が厳しい訪問介護サービス事業者に追い打ちをかける結果となった。業績悪化による倒産は後を絶たず、人手不足でヘルパーの成り手もいない。在宅介護が続けられるか業界は危機に直面している。
「体につかまってください」「服はこれで良いですか」。ヘルパー歴18年で介護福祉士の資格を持つ長谷川奈美さん(40)は訪問先でテキパキと動く。
10月初旬の早朝、東京都豊島区に住む90歳になるキミさん(仮名)の自宅でのことだ。自力で移動はできず、介助がなければ日常の生活を送れない。要介護度は上から2番目の「4」だ。
長谷川さんはおむつ交換や着替え、ベッドから車椅子への移動などを介助する。キミさんに声をかけながら、慣れた手つきで一連の介助を30分以内にこなす。
作業スピードを優先するだけではなく、キミさんの意思も確かめながら介助するには経験やスキルが求められる。長谷川さんは「キミさんが穏やかでいられるように心がけています」と明かしてくれた。週3回、朝と夕にサービスを利用するキミさんの家族は「最初は家族で介護していましたが、腰を痛めてしまった。ヘルパーさんが来てくれるだけで気持ちが楽になります」と頼りにする。
介護保険に基づくサービスは、施設に入居した利用者を介助する施設介護と、長谷川さんが提供するような訪問介護に大別できる。国がサービス単価を定め、3年に1度改定されるが、今回は衝撃の内容だった。
春闘での賃上げや物価高騰を反映し、介護報酬は全体で1・59%引き上げられた。ここまでは良かったが、訪問介護は基本報酬が2~3%引き下げられたからだ。
長谷川さんが提供するような身体介護サービスは軒並み下がり、20分以上30分未満であれば単価は2500円から60円減った。掃除や洗濯、調理などの生活援助サービスも同様で、20分以上45分未満なら1830円から40円下げられた。
基本報酬が下がれば、当然ながら売り上げは減る。収益を確保するため、新規開拓の他、利用者同士の自宅が近ければ訪問時間を調整するなど、効率的なサービス展開に知恵を絞るが限界もある。
愛知県内で月1800人が訪問介護サービスを利用する「コープあいち」(名古屋市)では、経営へ…
この記事は有料記事です。
残り1647文字(全文2672文字)
全ての有料記事が読み放題