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ウクライナが米の長射程ミサイル使用か ロシア「迎撃した」と主張

藤原学思 ブリュッセル=牛尾梓

 ロシア国防省は19日、ウクライナに隣接する南西部ブリャンスク州の施設が、米国がウクライナに提供した長射程ミサイル「ATACMS(アタクムス)」による攻撃を受けたと発表した。事実なら、米国がウクライナに対しATACMSによるロシア国内への攻撃を承認後、初めてとみられ、ロシアの出方によっては緊張が激化するおそれがある。

 ATACMSは射程約300キロの地対地ミサイル。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)も同日、米国とウクライナの高官の話として、ATACMSがロシア領内の攻撃に使われたと報じた。

 ロシア国防省の発表によると、攻撃があったのは同日午前3時半ごろ。防空システムなどで5発のミサイルを迎撃し、1発を損傷させたが、破片が軍事施設付近に落下して火災が発生した。けが人などはいないという。

 ロシアのラブロフ外相は19日、ブラジル・リオデジャネイロでの記者会見で、「今夜、ブリャンスクでATACMSが繰り返し使用されたことは、もちろん、彼ら(米欧)がエスカレーションを望んでいるというシグナルだ。米国人なしでは使用できない。プーチン大統領は何度もそう言っている」と言った。

 一方、ウクライナ軍参謀本部も19日、ブリャンスク州の軍事施設を攻撃したと発表した。標的は、ウクライナ国境から115キロ離れている同州カラチェフ近郊にあるロシア軍の兵站(へいたん)拠点という。

 参謀本部は使用した兵器について言及していないが、複数のウクライナメディアはATACMSが使われたと報じている。

 米メディアは17日、バイデン米大統領が、ウクライナに提供したATACMSでロシア国内を攻撃することを承認した、と報じていた。NYTは、これまでATACMS使用許可に難色を示していたバイデン氏が方針転換に踏み切った背景には、北朝鮮兵のロシアへの派遣問題があると伝えている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は19日、ロシア南西部クルスク州に約1万1千人の北朝鮮兵が派遣されているとし、「この部隊は10万人規模に拡大する可能性がある」と述べた。その上で、「プーチン(大統領)は人間もルールも守らない。時間を与えれば与えるほど、状況は悪化する」として、さらなる支援を求めた。(藤原学思、ブリュッセル=牛尾梓)

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    小泉悠
    (東大先端科学技術研究センター准教授)
    2024年11月20日7時33分 投稿
    【視点】

    米国は当初、ATACMSの使用をクルスク州(ウクライナ軍の侵攻地域)に限るとしていたようですが、蓋を開けてみるといきなりクルスクとは全然別の場所がターゲットになりました。ちゃんと米国との調整の上でなのか、ウクライナが独断でクルスク以外に使用したのかが気になるところです。 また、この攻撃の直後にロシアは「核抑止に関する国家政策の基礎」という文書の改訂版を公表しました。以前から予告していた通り、米国の軍事支援やそれを用いたロシア領内への攻撃が核使用の要件になりうるとの内容が追加されています。 逆にいうと、ATACMSに対するロシアのエスカレーションは今のところ宣言政策の変更という形でなされており、実際の核使用に結びつくものではないように見えます(実際、HIMARSやウクライナ製ミサイル/ドローンによるロシア領内攻撃に対しても核で応じているわけではない)。

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