四大貴族は謀殺や暗殺による全滅を防ぐ為に当主達が一つに集まることはない。
だからといって二人でならセーフとか三人ならオッケーとかそんなことはない。なるべく避けるが吉と言うやつだ。
あるとすれば護廷十三隊、隊首会での朽木家と四楓院家がギリギリだろう。まあ、たとえ志波家がそこに加わっても隊首会を襲おうなんて無謀どころか不可能だし、襲うとしても当主本人が隊長レベルだったりするから相当の戦力が必要になる。やっぱり無理だろう。
さて、朽木家と四楓院家は割と交流がある。
白哉兄様が夜一様から隠密歩法を習うくらいに。おかげで白哉兄様は隠密歩法四楓の参で穴の開いた隊長羽織を捨ててくるように……。まあ、そこまで追い詰められることは少ないけども。
夜一様が喜助様と駆け落ちしてから四楓院家の権力は落ちてきている。だがしかし交流が途絶えることはなく、俺も銀嶺様のお付きの頃から御使いに遣わされてから公私のどちらとしても仲良くさせてもらっている。
特に四楓院夕四郎殿とは幼い頃から面倒を見てきた間柄。最早兄と言っても過言ではない。
「灰世にいさま!!!!」
「ふぐぁあ! その抱きつきジャンプダイブ止めようかぁ! 君の全力は俺じゃなかったら死んでるからねぇ!」
「えへへ!」
見ろこの可愛さを!
男じゃなかったら勢い余って婿に入るところだぜ! ふぅ、危ない危ない。
そんな俺と夕四郎のやり取りを見て鬼の形相なのが二番隊隊長砕蜂様である。勘弁してくださいって。違いますからね!
会うと言っても年に十回くらいぞ?
それでもダブルブッキングするときがある。運悪すぎか? 熱視線がこんなにも嬉しくないことある? 男同士やぞ! 何も起きないって! 変な属性を追加するんじゃありませんよ!
夕四郎殿は若くして当主になった身。
それはもう苦労している。本人の明るさと素直じゃない砕蜂隊長の陰ながらのサポートもあり、今のところ問題はない。少しでも何か助けられたら良かったが、俺は愚痴を聞くくらいしか出来なかった。
しかも今まで気軽に遊びに行けたのが次期当主という来るはずもない次期のおかげで当主同士会うべからずに引っかかりそうなのである。
白哉兄様に何か遭ったら俺が先に体張るに決まってる。だからその日は来ないのだ。
護廷十三隊に入隊してからは忙しいのと会うのが危なくなってしまったという理由で最近まったく会えてない。
一人の友達として会えないのは寂しいが、彼とて一端の男だ。大丈夫じゃろ! と思っていたら、会いたいのお手紙である。
可愛いかよぉぉぉ!!!
だがしかし、少し調べなければならないことが起きてしまった。しかも割と命懸けなヤバめ案件。手が離せない。
ということで夕四郎殿に手紙とプレゼントを用意して、二番隊へ向かったのだった。
「つまり、この私に使いっ走りになれというのだな? 良い身分だな? 朽木灰世」
「あはは、やっぱり駄目ですよね! じゃあ別の人に」
「待て! 誰もやらんとは言ってないだろう!!」
もー! なんなのもー!
彼女の中の四楓院家に対する想いは複雑だ。
夜一様がただ目の前から居なくなるのではなく、喜助様について行ったという事実が渦巻く感情に火に油を注ぐことになったのだろう。
砕蜂隊長は夜一様に対する愛憎に揺れた末、今現在、憎の方向に振り切っている。可愛さ余って憎さ百倍みたいな?
「つまり、お願いしてもいいと?」
「まあ、いいだろう。少し癪だがな」
でも、この人、四楓院家に対して色々捨てきれてないのよ。喜びが隠しきれて無いですぞ砕蜂隊長。てか、それどういう感情ですか? 複雑過ぎて俺でも分からんとです。
まあ、夕四郎殿にはこれからあまり会わない代わりに手紙の数とプレゼントを増やそうと思う。その橋渡し役を砕蜂隊長にお任せしますね。
存分に四楓院成分を補給してくださいませませ。
ここからはマジな調べ物。
ちょっとしたホラー(俺の中で)。
杞憂ならそれでいい。信じるとは疑いの先にあるものさ。ダンガンロンパでそう教わったからね。
五番隊隊長、藍染惣右介様のその感情をまだ支配出来ていない。
前提、俺は感情支配の過程で人の感情を読み取れる。そして起きた異変がある。
最近、
それ以外が全て見えているのであれば最早それは見えているも同義である!! みたいな? あってほしくなかったこんなハプニング。
十中八九、藍染隊長の姿をした誰かである。本当にありがとうございました。そして本人が何処に居るか何をしてるかは不明だ。
これは探る必要がある。
そして、ある日「君は知りすぎた」って言われながら後ろからグサッと背中を刺されるのだろう。
ははっ、全然笑えないんですけど。うん。時間をかけよう。
未報告の斬魄刀であるのは間違いない。
俺のような支配系、洗脳系、偽装系、認識系、変身系。もしくはメタモン。或いは……。
私たち入れ替わってるぅぅぅ!!!
って能力の可能性もあるだろう。
映画では青春の始まりだったが、それが能力として自在に扱えるなら凶悪の一言に尽きる。俺が言えることではないけども。ブーメランくっそ刺さるけども!
いや、だからこそ、危険性をよく知る俺が警戒してしまうのも無理ないのである。
コソコソするということは人に聞かれたくないことをしていると口外に言っているようなもの。
もちろん、憶測で物を言うのは探偵として失格だ。
証拠を集め、事実を知り、背景を探り、動機を特定し、たった一つの真実を見つけるのだ。
強力な能力だ。
本人か、部下の能力かも分からない。
藍染隊長は始解を見せてくれていたが、羽々音のように能力発動の条件の可能性があるを考えるとそれも分からなくなる。もしそうだと仮定しますよ?
もうね。護廷十三隊の隊長格全員が見てるんですって! すっごいわよねぇ!! …………いやねぇ、これ、オラよりスマートに能力下にしてなーい?
そしてこの能力は他人の協力を得るほど凶悪さが増すモノ。それをしないはずないじゃない? そう考えると藍染隊長には部下以外に複数人の協力者がいると考えるべきだ。
もし自分ならつおい幹部ほしいもの! んちゃ(混乱)!
どんな能力で誰が使っていて、どんな規模なのか。何も分からないということか分かったのだった。
よく思い出すと俺が藍染隊長に会うとき、明らかに偽物の場合が多い。
警戒されている。俺を知っている。過去までも知られている可能性がある。だが、詰めの甘さを見るにあちらも俺の情報が揃えきっていない、かもしれぬ。
天ノ羽々音と俺が一緒に居ることはほぼない。
結びつけられるならマジ零番隊。未来見えてるよ。バケモンかな?
何がともあれ、もうこれ以上怪しまれるのはまずい気がする。俺の斬魄刀の能力もこの疑いさえもだ。
感情支配は俺自身にも有効だ。
自分自身を思い込みで洗脳する。ダブルスタンダードじゃなくてダブルシンク。1984って奴だ。
あれは藍染隊長ではなく、藍染隊長である。あれは藍染隊長であるが、藍染隊長ではない。
いいね?
この関連の調べ物をするときは必ず同じ内容の別目的を用意すること。
ここで重要なのは俺は別に正義の味方ではないということだ。突き止めたところで何も無い。ただ何か起きたとき周りを傷つけようとしたなら、それに対するカウンターに成れれば良いのだ。
とりあえず、グサッされたときの為に回道習いに四番隊に行こう。ああ、浮竹隊長でもいいかなぁ。
五番隊隊舎にて。
書類仕事を片付ける藍染惣右介はその手を止めて筆を置き、隣で作業している雛森副隊長に声を掛けた。
「雛森くん。最近妙な鳥を見ないか?」
「鳥、ですか?」
同じように手を止めて少しだけ考えると一つだけ思い当たるフシがあった。最近よく懐いてくれる小鳥のことだ。
「あ! そう言えば最近綺麗な青い小鳥をよく見かけるんです。可愛らしいですよね?」
「そうだね。…………僕もそう思うよ」
そうして二人で窓の外を見る。ただ藍染惣右介の眼鏡はまるで悪役のごとく怪しく光るのだった。