はいはい、朽木白哉の弟が通りますよっと


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作:スターリー
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完璧だ!我ながら完璧すぎる!


「やあ、よく来てくれたね。ささ、そこに座って。楽にしてくれ」

 

 そう優しく微笑むのは十三番隊長浮竹十四郎様。

 現在十三番隊舎の浮竹隊長のお部屋にお邪魔している。お呼ばれした理由は志波海燕様の一件のことで謝罪とお礼がしたいとのことだった。

 

 あのとき飛んでった俺のへそくりもこうして信頼として返って来るのだ。

 

 ふっ、計画通り。

 

 ……ほ、本当だよ? 

 

「いやいや、浮竹隊長の方こそお身体に障ったらまずいでしょう。俺がやりますんで座っててくださいよ。お茶何処ですか」

「そういう訳にはいかない。こっちは謝る立場なのにわざわざ来てもらったんだ。お茶くらいなら俺が」

「だァ! たぁたぁたぁ!!」

「俺は猫か」

 

 ちゃぶ台の上にお茶が二つ並んだ。

 茶葉の量、お湯の量、その茶葉にちょうどいい温度。際立つ香りに渋さを消したまろやかなお味。

 

 完璧だ! 我ながら完璧すぎる! 

 

 これでも銀嶺様のお付きとして長年仕えてきたのだ。もうほんとマジ厳しかったの。裏のお仕事がメインのはずなのにこっちの仕事でも一切の妥協を許さないの。今でも完璧に熟せるくらい体に染み込んでるのよ。

 

「うん。美味い」

「ああ、そう言えばお菓子も持ってきたんですよ」

「ええ!? だからこっちが渡す側で」

「はいどうぞこれ」

 

「…………なんだい、これは」

 

「ワカメ大使人形焼きです。白哉兄様が作ったキャラクターです。デフォルメされた饅頭よりリアルになりました。宜しくお願いします」

「そ、そうか。白哉が。うん。か、かわいい、じゃないか……!」

 

 ……あれ、これ、嫌がらせにあたるのだろうか。いやその考えだと逆に白哉兄様が不憫ぞ? でも俺、何か愛着沸いて可愛く見えて来てるんだよね。あれか? 毒され……。

 

「さて、そろそろ本題に入ろうか」

 

 ワカメ大使について少し思いを馳せていると、浮竹隊長が仕切り直す。

 お互い一息つくと目を合わせた。

 

「海燕のこと、朽木、いやルキアのこと。あの一件で俺がやるべきことを君に押し付けてしまった。本当に済まなかった」

 

 そう言って頭を下げる。

 

 自分の非を認めて、俺のような若輩者に素直に頭を下げられる死神は一体どれほどいるだろう。

 

 誠実という言葉はこの人の為にある。

 

 浮竹隊長は裏の世界から見た時に太陽のような人だった。

 

 勿論直接関わるようなことはない。

 だけど、綱彌代の悪意や四十六室の横暴、腐敗貴族の暴走があったときに水面下で静かに事を治める政治的手腕はそれはもう見事で惚れ惚れするものがある。

 

 京楽隊長が暴き、浮竹隊長が策略し、二人でそれぞれの方面で交渉して解決していく。尸魂界の司法にだって臆せずメスを入れる人達だ。それにどれだけの死神が救われたことか。きっと数え切れないほどいるはずだ。

 

 京楽隊長はシビアに切り捨てる判断が出来る人で、その分容赦が無い。浮竹隊長はそこに救いの手を差し伸べてくれる。受け皿を作ってくれるのだ。

 

 間違いなく護廷十三隊の良心。あの白哉兄様がルキア殿を預けるに相応しいとした人物なのは間違いない。

 

「はい。その御心はしっかりと受け取りました。ですが、あまり気になさらないでください。俺もすべきことをしただけですから。朽木家はルキア殿も含めて口下手ですからね。適材適所というやつです」

「そうか。そう言ってくれると助かる。本当にありがとうな」

「いえいえ」

 

 この血と腐敗と裏切りの歴史である尸魂界で、誰かを信じて優しくあり続けること。それは想像以上に難しい。浮竹隊長自身、沢山ヒドイものを見てきた筈だ。

 

 それでもなお、この人はそうあれかしと人を思うのだ。

 

 敵を悉く打ち倒すだけの護廷十三隊が浮竹十四郎のような死神を隊長に据えたこと。それはこの千年の変化。

 

 優しさもまた強さだ。それがもっと広がればいい。

 

「そうだ。これから呼ぶときは下の名前で呼んでも良いか?」

「良いですとも」

「それじゃあ灰世。これからもよろしくな」

「はい!」

 

 うん。なんか懐かしいと思ったら、なんかこう、銀嶺様を思い出す。

 銀嶺様も浮竹隊長も同じように誰かが楽しそうにしていると自分のことのように笑う。その在り方がとても尊いとそして美しいと思うのだ。

 

「今日は体調が良くてね。もう少し付き合ってくれないか?」

「俺でよければ、何時間だって付き合いますよ」

 

 きっと、いつか。もう少し余裕が出来たら……。

 

 京楽隊長と浮竹隊長に俺のことを、天ノ羽々音(あまのはばね)のことを話そう。

 

 この二人ならきっと俺を上手く使ってくれるはずだ。

 

 それまでに俺は、俺のするべきことをしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 九番隊には瀞霊廷通信を編集、発行、印刷をしている瀞霊廷通信編集所がある。そこで九番隊隊長東仙要は次なる瀞霊廷通信の為の作業をしていた。

 

「―――隊長。東仙隊長!」

「ん? ああ、檜佐木か。すまない、少しぼーっとしていた。何かあったか?」

「い、いえ、その、急ぎではないので、お疲れですか?」

「いや、そういう訳じゃないんだ。少し考え事をな」

「そうですか」

「でも、そうだな。少し外の風に当たってくる」

「はい! いってらっしゃませ!」

 

 そう言うと編集所から出て、少ししたところにある木の切り株に腰掛けた。

 

 思い出すのは、昨晩のことだ。

 

 東仙の元を尋ねてきたのは最近六番隊に入隊したと噂の十席だった。名を朽木灰世。あの四大貴族朽木家の者だ。東仙は面識も関わりもないだけに少し警戒しながらも招き入れたのだった。

 

「初めまして、朽木灰世と申します。よろしくお願いします。これ菓子折りです。どうぞ」

「そうか、有り難くいただこう。私は東仙要だ。それで朽木家の者が私に何か用でも?」

「はい。謝罪をしに来ました」

 

 東仙には当然思い当たる節はなく、ただ困惑するばかりだ。

 

「私と君は初対面の筈だが?」

「はい。それは間違いありません。…………俺が謝罪したいのは貴方の親友の歌匡様のことです」

 

「な……に……?」

 

 こちらの動揺を置き去りにして、東仙は目の前の男の動きを知覚する。

 

 深々と頭を下げたのだった。

 

「申し訳ございませんでした」

 

 何を今更と、声を荒げそうになるのを抑え込む。

 

「綱彌代の悪事を止められず、咎める事も出来ず、公平な裁きを受けさせることも出来なかった」

「そもそも、君には関係のないことだ」

「それでも、俺は四大貴族の死神として恥ずべき行為があったならば謝らなければならないのです。それがそう生まれたものの責任ですから」

 

 早いも遅いもなく、知ったならばそう動くのだ、と。

 

「本当に申し訳ございませんでした。いずれ必ず報いは受けさせますから」

 

 彼は本当にそれだけ言って出ていったのでした。

 

 その一連の出来事が頭の中をずっと支配している。たったあれだけの出来事で心の整理が上手くつかないでいた。もうとっくの昔に結論は出していたと思っていたが、そうもいかないらしい。

 

 しばらく切り株に座っていると副隊長の檜佐木修兵が心配してやってくる。

 

「隊長。その、やっぱり具合でも悪いんじゃ……」

「いや、大丈夫だ。心配を掛けたな」

 

 編集所に戻ろうとしたとき、バサバサと風を切る音が聞こえる。そして近くの木に止まったようだった。

 

「鳥がいるのか?」

「ええ、はい。綺麗な青い小鳥が」

「そうか」

 

 すると、愛らしい小鳥の歌が聞こえてくる。

 

 

「本当に綺麗な声だ」

 

 

 東仙要の正義が揺らいでいる。

 

 




スーパー貴族大戦になるため、灰世くんが仕掛けることはありません。万が一、綱彌代が朽木家に仕掛けて来た場合、空間転移即卍解、殲滅戦になります。綱彌代が愉悦前に終わらせます。
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