はいはい、朽木白哉の弟が通りますよっと


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作:スターリー
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はいはい、朽木白哉の弟が通りますよっと


 尸魂界は上空にある霊王様が住まう霊王宮とその遥か真下に統治の基礎たる三権とその運営を行う貴族が住まう瀞霊廷、地続きながら霊力を通さない巨大な壁を隔てた向こう側に大勢の魂が住まう流魂街がある。

 

 霊王様を王属特務とも呼ばれる零番隊がお護りし、瀞霊廷を護廷十三隊が守る。ちなみに流魂街は放置である。

 

 尸魂界は霊王様が表舞台に出ることはもはや無く、志波家が没落したためにそれを除いた四大貴族と上級貴族にその他諸々集められた四十六室やらで運営されている。

 

 四大貴族のその権力、影響力は衰えを知らずに今も絶大。一言で表すならマジヤバイである。

 

 その一角、朽木家は貴族街の商店だけでなく護廷十三隊で代々六番隊隊長を任され、当代では朽木家歴代最強とまで呼ばれる朽木白哉様が当主となった。

 その器たるや、この先百年は安寧が約束されたと思われていた。

 

 だがしかし、そうは問屋が卸さなかった。

 一見完全無欠に見える白哉様にも問題が生じてしまったのである。

 

 周囲の反対を押しのけて大恋愛の末に結婚した白哉様と緋真様。共に手を取り合って生きるお二人はまさにおしどり夫婦。それはもうラッブラブでしたが、その幸せは長くは続かなかったのです。

 

 緋真様はお身体が弱く、白哉様の献身的なお支えもついぞ届かず、日に日に床に伏せるようになり、そして眠るように穏やかにお星様へと旅立って行きました。

 

 それから数十年。

 白哉様は今も緋真様を想い、日々過ごしておられます。

 

 その御心は美しいもののそうも言ってられない朽木家の老人の一人がポツリと呟いた。

 

 世継ぎ問題、どーしよ、と。

 

 

 

 俺の名前は朽木灰世(くちきはいせ)と申します。

 何を隠そう昨日から養子になって朽木白哉様の弟になりました。

 

 あえて言おう! 俺は霊力が高いだけの分家のニートであると! 

 

 いくら分家とはいえ、かの朽木家の血筋である。そらもう財産的には親の脛に齧りついても一切傷つかないレベル。働く必要ないじゃない! 働きたくないでござる! 働きたくないでござる! 

 

 人に責められない為にはみんなと仲良く繋がりを適度に維持して牽制しつつ、お偉いさんに気に入られて悪口を言えない空気にすることが一番。そして人とよろしくやるコツは飲み会である。

 

 具体的には本家と各親戚の家に入り浸っては定期的にそこの重鎮と朝まで愚痴を聞きまくるということをしている。

 

 朽木家は基本勤勉、生真面目、堅物の集まりで最初は蔑んだ目でものすごく軽蔑されるのだが、何度も会ってるうちに身内で立場もない相手だと警戒が緩んで次第に軟化する。そして仲間認定すると途端溜め込んでいた愚痴やら不満やらを自慢話やらを爆発させるのだ。

 

 最近はもう、顔出せば「酒か! 小遣いか!」と聞かれて「酒!」と答えれば「まあまあまあとりあえず話を聞いていけ」と話の通りが良い。

 

「貴様は何の目的があって儂に近づくか! 答えてみよ!」

「遺産! ただ酒! お小遣い!」

「誰がやるか馬鹿者め!」

「「だっははははっ!!!」」

 

 気難しいジイさんも懐に飛び込んでデレ期を迎えると可愛いものである。

 

 そして小遣いをむしり取ったらその金で若い連中と飲みに行くのだ。そこでも勿論みんなのストレスを解消させることに徹する。偉ぶらない。ここ大切。若い奴らもいずれは偉くなっていく。その時に俺をよろしくしてもらうのさ。

 

 お年寄りと若い連中の間を無限ループ。永久機関が完成しちまった。ノーベル賞はいただいたぜ。

 

 朽木家で良くも悪くも俺のことを知らないやつはいない。むしろ朽木ネットワークは俺にお任せである。

 ついでに合いそうなやつを引き合わせて、バチバチになりそうなやつは距離を置かせる、ということをしていたら現在朽木家は歴史上最も団結しているとされている。知らんけど。これ俺の功績ね。……俺関係あるかこれ? 

 

 

 親戚の集まりでよく言われるあの言葉。

 

「あの人、結局何やってる人なの?」

 

 答えよう! 我こそは人間関係の緩衝材にしてカンフル剤! コニュニケーションのぬるっぬるの潤滑油なれば! 俺こそが朽木家のヒモだァ! 

 

 そんな感じの日常を歩んでいたのだが、先日実家に帰ったら父が仁王立ちしていた。どしたん話聞こか? と話を振ると「白哉様に何かあった場合お前かお前の子どもが次期当主だ」とオマエ明日から白哉様の屋敷な? と蹴り出された。

 

 …………いでぇっ! いやちょっ、次期当主の扱いちゃうやんけ! つか! 子ども居ないし! これ白哉様の責任感を利用した作戦でしょ! やだやだ帰して! 俺みたいな木っ端が朽木家の敷居跨いだら末代まで恥ですよ! うっわ、鍵閉めやがった! 

 

 締め出されました。はい。

 

 一応外聞もあるだろうと護廷十三隊の六番隊に入隊することに。しかも席官も用意してくれるらしい。十席だって。

 

 それ俺が先に死ぬのでは? ふざけんな! こっちはただのヘベレケだぞ! そんなのに最前線務まるかい! 遠回しの死刑だぞ! 止めてくれよ! それならいっそのこと一思いにやってくれよ! 

 それにこの状況で死神なったらイジメられるくない? コネのボンボンの無能って好感度ゼロからマイナスなやつですよね!? 約束された敗北ですよね!! 

 

 とは言いつつも鍛えていた時期はあった。

 俺とて男の子、そりゃ斬魄刀に憧れる。お家のお力で秘密裏に入手した斬魄刀で修行して始解できるくらいまで到達しましたとも。珍しい生物系で刀が青い小鳥になったのだ。

 

 そのまま飛んでいって今なお行方不明である。

 

 うっそだろおい! 

 おま、斬魄刀、なくなっ……。常時始解っていうか、常時家出っていうか。

 でも時々楽しそうな声でピュピッっと脳内に報告だけはしてくるんだよなぁ。

 

 …………。

 

 あの子が帰ってきたら、俺、卍解するんだ……。

 

 

 若い連中にこの状況のことを話すと「本家の養子に……極まってきましたね」と言われ、年寄り連中に話すと「お前がそんなふうに苦しんでおると酒が美味く感じるなぁ!」と愉悦部が出来上がっていた。なんだ極まってるって。

 

 俺が晴れて自由の身になる為には白哉様が新しい花嫁を見つけて子どもを授かること。デリケート過ぎるよその話題。しかも丸投げしやがったぞ! 

 

 そして、現在。

 白哉様と朝ご飯である、

 

「白哉様。参考までに好みのタイプは?」

「緋真だ」

「いや返しとして重すぎるよ! あのできれば性格とか性癖とか何フェチとか教えて貰えませんか?」

「緋真だ」

「そこで名前出しちゃうと変な意味になっちゃうでしょ!! 健全な範囲で良いですから!」

「緋真だ」

「無限ループか!」

「ふっ」

 

 白哉様と仲は悪くない。

 緋真様との結婚やルキア殿を朽木家に招く際、ゴリゴリに協力してから何度も食事をする仲だ。

 

 いやぁ、あの時は凄かった。

 毅然とした態度ながら誠実な対応をなさる白哉様と言葉の足りないところを補ったり、各家の説得にこれまでの愚痴という名の情報から互いに利の有るように交渉したり、それはもう大活躍しましたとも! 

 

 これの悲しいところはなんでお前そこに居るの? っていう視線と白哉様には納得したけどお前には納得してない、みたいなヘイトが全部俺に集まるところだ。

 あと全員もれなく揃いも揃って白哉様の顔見た後俺の顔見て吹き出すのやめてほしい。

 いくら日頃の行いが悪いからって言ってもね、真面目な時くらいは許してほしいぞい! ねーもーヤになるわー。

 

「何故そのようなことを聞く」

「お見合い相手の参考にしようと思いまして」

「ならぬ」

「ええ? でも本家の皆様の心配もごもっともではありますよ。少々お節介ではありますが。せめて俺を後継者に据えるの辞めません? 分不相応すぎて辛いんですけど」

「……屋敷の者達には苦労をかけるが、私にまだその気はない。それに兄を追い出したところで状況は変わらぬ。また別の遣いを寄越すだけだろう。しばらくは様子を見るとする」

「いやいやいや、そうなるとここで死神として暮らすことに」

 

 働きたくないでござるぅ! 働きたくないでござるぅ! 

 

「不満があると?」

 

「ないですぅ」

 

 なぁんで俺、引き留められてんのん!? 

 




朽木灰世

朽木家分家の飲んだくれのニート。
彼と酒を飲むと怒って泣いて悲しんで最後に残るのはなんだかんだ楽しかったなという感覚でストレスが消えるので実はお金払っても飲みたい人は多い。

斬魄刀の名は、天ノ羽々音
解号は、求めろ

珍しい生物タイプの斬魄刀でしあわせの青い鳥のような愛らしい群青色の小鳥になる。



能力、一定時間過ごした人の感情を完全に操る。



おかしい。推しの子の短編を考えてたらBLEACHが生えてきたぞい。設定と導入だけ放流しておきます。
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