【案内】MS WordからLaTeXへの移行を考えている人に向けて

この記事は文書作成ソフトの移行を検討している人に向けているものです。LaTeXそのものの説明には深く突っ込みません。また、MS Wordを否定する意図はありません。あくまで移行を考えている人に参考程度に読んでほしいものです。筆者はMS Word 2016を最後に使わなくなっており、一部Wordに関する古い記述があるかもしれません。


Microsoft WordなどのGUIソフトは直感的な操作が可能です。コンピュータに不慣れな人でも、少しのトレーニングで基本的な機能を使えるようになります。一方、ページ番号、見出しや目次のカスタマイズなど、やや高度な機能を使おうとすると、いきなり操作が複雑になります。どんなに操作を直感的にしようと思っても、細かい機能をいじるとなれば複雑化は避けられません。

MS Wordは世界中で使われている文書作成ソフトで、言語が違っても開くだけなら大きな問題はありません。

昔のMS Wordではできなかったものの、すでに解消されていることもあります。

  • Word 2007以降、数式入力は格段に進化
  • Word 2013以降、破損ファイルの修復が強化

そのため、数式入力を理由にLaTeXを使っていた人がMS Wordのほうに移行することもあるようです。ソースコードの入力がよほど嫌いであれば、それもやむを得ないでしょう。

ただし、依然としていくつかの解消困難な問題を抱えています。

  • ただ設定を開くだけでメモリを多く消費する機能がある(改善傾向?)
  • レイアウトや設定の移行が不安定で、とくにバージョン間での互換性は期待できない
  • 細かい余白設定が現実的でない

正直、レイアウト調整に深いこだわりがなければ、LaTeXを強く勧める理由はありません。CやJavaやPythonといったプログラミングの経験者がLaTeXを習得するのは本当に一瞬ですが、まったくのプログラミング未経験者がLaTeXに手を出すのは覚悟が必要です。


では、なぜLaTeXが今でも愛されているのか。理由はいくつかあります。

  • 個人利用・商用を問わずに誰でも無料で利用できる
  • Windows, Mac, Linuxなど複数のOSで利用可能
  • 美しい組版が実現でき、極めれば商用出版に使える
  • バージョンが異なってもレイアウトが崩れにくい
  • 章立てが必要な論文や報告書を作成しやすい
  • 数式入力がキーボードのみで可能
  • 内部エンジンであるTeXは極めてバグが少ない

ただし、どうしてもLaTeXの壁となってしまうことはあります。

  • ソースコードの記述からコンパイルまでの流れを理解する必要がある
  • ソースコードの管理方法を理解する必要がある
  • コンパイルエラーが起きたときにエラーメッセージを読んで調べるスキルが求められる
    (忍耐強く説明を読める必要がある)
  • トラブルが生じたとき、状況を人に説明するスキルが求められる
  • 落ち着いて理解しようとしないまま、見よう見まねを続けるとすぐに限界が来る

要するに、ソースコードを書いてコンパイルするとだけ知っていても、本当にそれだけの知識ではとても使いこなせません。したがって、LaTeXを使うメリットを十分に理解していなければ、手を出すべきでないと言えます。

ソースコードをコンパイルするという流れは、それを理解すれば多くの恩恵が受けられます。設定部であるプリアンブルを適切に使い回せば、フォーマットの統一が簡単です。かつてpLaTeX時代に壁だったフォント設定もXeLaTeXやLuaLaTeXを利用することにより、手軽にできるようになりました。

そのため、現在の状況としては、Microsoft WordもLaTeXも、基本的な機能は大して変わらず、好きなほうを使えばよいという状態になっています。ただし、余白設定や組版の仕上がりを気にするのであれば、LaTeX一択となりますが。

正直、「LaTeXは便利か?」と問われると、本音の回答は「微妙」です。エラーに数日間悩まされることもあります。ただしこれは、「Microsoft Wordは便利か?」も同じです。便利かどうかと漠然と考えるのではなく、理由や使用場面を整理してから選ぶべきだと思います。

それでも、LaTeXだけで一通りの文書作成を済ませられるようになると、基本的にWordに移行する意味はないと個人的に思っています。どうしても数式パッドを使って数式を入力するほうが負担が軽いとか、その手の理由でもない限りは、LaTeXを使うことになるでしょう。

気持ちとしてはLaTeXを強く推奨したいのですが、万人向けとはいえません。コンピュータの操作に不慣れな人に対していきなりLaTeXというのはハードルが高いように思えます。また、すでにWord文書を大量に保管している場合は、LaTeX環境を整備すると同時に、Wordの閲覧環境も維持する必要があります。

なお、「理工系ならばTeX」とかいう謎の主張をたまに見かけます。しかし実際、TeX/LaTeXを使うべきでない場面はあります。有効な場面とそうでない場面を整理して説明できない人は理工系としての素養が欠如しています。

どんな物事も、勢いだけで始めるのではなく、下調べをしましょう。そして、軽々しく「便利」とか言うのはやめましょう。

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