「托卵」とは、カッコウなどの鳥類が、自らの卵を他の巣に産みつけ、その巣の持ち主に卵を孵させ子育てをさせること。まさに卵を托すのである。それが転用されて、女性が夫以外の子を出産し、その子を夫に育てさせる(自らも育てるのだが)という状況を言う。
夫の子ではないケース、産婦人科医たちの体感で「10人に1人」
いつからヒトに対して「托卵」という衝撃的な言葉を使うようになったのか判然としないが、夫以外の子を妊娠し、出産するケースはかなり以前からあった。生まれてみたら髪の色も目の色も日本人のそれではなかったという笑えないケースも産婦人科医に聞いたことがある。さらには5、6年前に、複数の産婦人科医から「夫の子ではないケースは決して少なくないと思う」と聞いた。DNA鑑定が簡単でなかった時代からいた「托卵妻たち」
DNA鑑定など簡単にできなかった時代から、女たちは脈々と「托卵作業」を続けてきたのだろうか。夫への反乱として、あるいは自分自身の生きる証として。
妻たちが「托卵」する“3大理由”は
現代の托卵は、いくつかのパターンに分かれる。ひとつはドラマ同様、夫の子か不倫相手の子かわからないまま産んでしまうケース。子を介して、本気で愛している不倫相手との「愛の証」を残したいと語った女性もいる。いつか彼と別れなければならなくなっても、子どもがいれば彼との愛を実感できるはずだから、と。自分の子の成長にこまやかに関われないと嘆く不倫相手もいるのだが、「そこはちゃんとフォローするから」とたまに会わせたりもするそうだ。
「優秀な遺伝子を残したい、産むのは“私”なのだから」
最後のパターンは、最近出てきている「夫よりハイスペで好みの男性の子がほしい」という女性側の欲求だ。以前だったら考えられないことかもしれないが、夫より容姿も頭脳も優秀な男性とたまたま知り合い、この人の子がほしいと思ってしまったら、女性はその欲求を止められないのかもしれない。いずれの場合も興味深いのは、女性たちが夫の心理を深く考えていないところ。悪意があるわけではなく、「子は自分のもの」と考えるのが“メス”としての習性なのかもしれない。そこに男性が口を挟む余地はないというのが女性たちの一貫した言い分だ。
托卵妻は、おそらく今後もいなくなることはない
女性の中には、男性を愛することと「この人の子どもがほしい」という気持ちが直結しているタイプが一定数存在すると思う。だから托卵が起こるのではないだろうか。男性を愛することと、その人の子を産むことはまったく別だと考えるなら、「愛しているから子どもがほしい」は成立しない。女だから出産という過酷な体験をしなければならない。そうもいえるが逆に、女だからこそ出産の自由と権利をひとりで握っているともいえる。托卵妻は、おそらく今後もいなくなることはない。
<文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio