浅田真央さんの夢「MAO RINK」探訪 オープニングセレモニーで示した輝く未来

プロフィギュアスケーター浅田真央さん(34)の夢がいよいよ現実となります。自身の名前を冠した「MAO RINK TACHIKAWA TACHIHI」が東京立川市に完成し、11月8日にオープニングセレモニーと内覧会が開かれました。

日刊スポーツ・プレミアムではさまざまなこだわりが詰まった施設の詳報、さらに浅田さんの言葉やこの日限定で行われたショーのコンセプトから、「第3章」と位置付けた指導者としての想いをひもときます。

フィギュア

オープニングセレモニーで演技を披露する浅田真央さん(以下、撮影はすべて、たえ見朱実)

オープニングセレモニーで演技を披露する浅田真央さん(以下、撮影はすべて、たえ見朱実)

コンパルソリー柄に秘めた敬意

多摩モノレールの立飛駅から、商業施設のららぽーとを左手にして道路を左に曲がっていくと、金色の外観が冬空の青に映える建物が右前方に見えてきた。

施されたデザインが特長的だ。氷の上にスケート靴で刻む軌跡であるコンパルソリー柄。フィギュアスケートの「figure」とは図形。競技の語源であるブレードで氷を削り、図形を描いていく技術を、金色が映える外観に敷き詰めていた。

浅田真央さんのリンク「MAO RINK TACHIKAWA TACHIHI」

浅田真央さんのリンク「MAO RINK TACHIKAWA TACHIHI」

選手時代、その当時にすでに試合からはなくなっていたコンパルソリー、課題の図形をリンクに描いて正確さなどを競った種目にも、人一倍熱心だった。多くの振り付けを手掛けたローリー・ニコルさんから、あまた図形の課題を与えられ、誰よりも楽しんでクリアしていったのが浅田さんだった。

世界舞台で活躍し続けられた技術の源泉であり、いまもこだわりを強く持つ。どんなにジャンプ技術が底上げされようが、滑るという基本概念にとって、伝統の「図形」が持つ意味は大きい。

そんなスケートへの敬意を示すような、その外観から浅田さん自身の意志に触れるようだった。

外壁はコンパルソリー柄のパンチングメタルを取り入れた

外壁はコンパルソリー柄のパンチングメタルを取り入れた

自動ドアを通り、エントランスに入ると、カーペットにもコンパルソリー柄が採用されている。奥へ進んでいくと、左側には貸靴の窓口が見えてくる。そして壁の「貸靴」の文字の上に、大げさに目立つことはなく、控えめに描かれたシルエットに目が行く。

館内のじゅうたんはコンパルソリー柄

館内のじゅうたんはコンパルソリー柄

右手を口元にもっていき「内緒だよ」と伝える振り付け。15歳にしてGPファイナルを制したシーズンのフリー「くるみ割り人形」のシルエットだ。少し進んだ「リンク入口」「化粧室」「エレベーター」を示す文字の上にも、同様に選手時代のポーズがあしらわれている。ここが「MAO RINK」であることをそっと示すように、その来歴が刻まれている。

案内表示には浅田真央さんのシルエットが描かれ、楽しませてくれる

案内表示には浅田真央さんのシルエットが描かれ、楽しませてくれる

午前11時過ぎからの内覧会の開始に伴い、その案内に沿って進む。トイレなどにもスケート靴を履いた子どもたちのサインを確認。さらに進んで右手の扉を開けると、国際規格の30メートル×60メートルのメインリンクが姿を現す。2階には常設の観客席1000席が設けられ、仮設(氷上)1000席の設置が可能だという。アイスショー開催を想定し、内装は黒を基調。天井には2つの大きなファンが回る。メインは貸し切り利用が中心になり、選手、プロスケーターなどが集中して練習に取り組める環境を重視した。

受付や化粧室のマークにもこだわりが詰まっている

受付や化粧室のマークにもこだわりが詰まっている

メインリンク

メインリンク

サブリンク

サブリンク

入ってきた扉を戻ると、目の前の扉の先にはサブリンク。20メートル×40メートルはサブリンクとしては国内最大級であり、何よりの特徴は窓。太陽光が注ぎ込み、春には桜、日常的にも木々を見ることができる。冷却の関係で窓を大きく作るリンクは国内では珍しいが、ここが浅田さんのこだわりポイント。白を基調にした室内は一般滑走での子どもたちの利用を想定し、開放的に明るい雰囲気を追求したという。

トレーニングルーム

トレーニングルーム

スタジオ

スタジオ

2階にはトレーニングルーム、ダンスレッスンができるスタジオも設置されている。お手洗いには、ショー開催時などに女性の観客が大半を占めることを考え、できるだけ公演時に待ち列ができないように多くの個室を用意。プロになってからも3つのオリジナルのアイスショーで座長を務めた経験から、見る側の心地よさにも配慮が行き届く。

外観の撮影に足を運ぶと、そこでも一貫したコンセプトに出合う。会場に向かう際に目を見張ったコンパルソリー柄の金色の壁面には、建物全体の外観全てを見て昇華されるコンセプトがあった。メインエントランスから裏手に回ったサブリンクの外装は「銀」色、再びメインエントランス側に戻って見上げた「MAO RINK TACHIKAWA TACHIHI」の館名サインは「銅」色。

金、銀、銅。オリンピックでの輝く3つのメダルを色は、ここから世界に羽ばたくスケーターを育てていく。そんな決意と希望が込められていた。

外装色にもこだわりがあり、右のコンパルソリー柄のパンチングメタルはゴールド(金)、「MAO RINK TACHIKAWA TACHIHI」の文字にブロンズ(銅)、サブリンクの外装をシルバー(銀)になってる

外装色にもこだわりがあり、右のコンパルソリー柄のパンチングメタルはゴールド(金)、「MAO RINK TACHIKAWA TACHIHI」の文字にブロンズ(銅)、サブリンクの外装をシルバー(銀)になってる

次世代へのメッセージ

内覧会から1時間ほど置き、午後1時から始まったオープニングセレモニー。場内が暗転して、この日だけの特別なショーが開演された。

まず登場したのは、キッズスケーター。都内で練習に励んできた男子、女子、それぞれがソロ演技を披露した。観客席からの遠目でも伝わる緊張感に、全力でリンクの上でジャンプし、踊る姿。浅田さんより先に子どもたちが出演し、このリンクでの初の演技者となった演出にも、このリンクの目指すものが明瞭に伝わってきた。

キッズスケーターとともに演技を披露する浅田真央さん

キッズスケーターとともに演技を披露する浅田真央さん

オープニングセレモニーで華麗な演技を披露する浅田真央さん

オープニングセレモニーで華麗な演技を披露する浅田真央さん

そして、3番手として登場した浅田さんも和装での演技を終えると、その後は4人の子どもたちと共演。振り付けでは優しく背中を押すしぐさも組み込んで、世界へと次世代を送り出すというメッセージを鮮明にさせていた。

それはその後にマイクを握った浅田さんが、強調して伝えたことでもあった。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。