石破首相 初の日中首脳会談や日米韓首脳会談 内容は【詳しく】

石破総理大臣は、訪問先のペルーで中国の習近平国家主席と初めてとなる日中首脳会談を行い、建設的で安定的な両国関係を構築していく方向性を確認しました。

また石破総理大臣は、アメリカのバイデン大統領と初めて対面での会談に臨んだほか、日米韓首脳会談では北朝鮮に対する懸念を共有し、緊密連携を確認しました。

記事後半では、今回の首脳会談のねらいなどについて担当記者が解説しています。

石破首相 習近平国家主席と初の日中首脳会談

APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議のため、ペルーの首都リマを訪れている石破総理大臣は、日本時間の16日午前7時すぎから30分余り、中国の習近平国家主席と初めてとなる日中首脳会談を行いました。

冒頭、石破総理大臣は「日中両国は地域と国際社会の平和と繁栄に重要な責任を有している。両国の間には発展に向けた大きな可能性が広がっていると同時に、多くの課題や懸案が存在している」と指摘しました。

その上で「両国が『戦略的互恵関係』の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係の構築という大きな方向性を共有することは国際社会にとって重要な意義がある。習主席との間で率直な対話を重ねる関係を築いていきたい」と述べました。

そして「日中関係を安定的に進めていくため国民の納得と共感が不可欠だ。日中関係が発展してよかったと国民が実感できる具体的な成果を双方の努力で積み上げていきたい」と強調しました。

会談では、両国が「戦略的互恵関係」を推進し、建設的で安定的な関係を構築していくことを確認したものとみられます。

一方、石破総理大臣からは、東シナ海の情勢や、中国軍が日本周辺で活動を活発化させていることなどに懸念を伝えたものとみられます。

また、東京電力福島第一原発にたまる処理水の海洋放出をめぐり、先に両国が日本産水産物の輸入再開で合意したことを踏まえ、早期に実現するよう求めたものとみられます。

習主席「建設的で安定した関係を」

中国の習近平国家主席は、会談の会場に入ってきた石破総理大臣に「こんにちは」と声をかけて迎えたあと握手を交わし、報道陣の写真撮影に応じました。そして会談の冒頭で、習主席は「お会いできてうれしく思う。改めて当選おめでとうございます」と述べました。

その上で習主席は「国際情勢や地域情勢が大きく変化する中で、中日関係は改善と発展の重要な時期にある。中国は、日本と共に、互いにパートナーとなり、脅威とならないという重要な共通認識を守って、戦略的互恵関係を包括的に進め、新しい時代の要求にあった建設的で安定した中日関係を構築したい」と述べました。

また、中国外務省の発表によりますと、習主席は会談で「歴史や台湾などの重要な原則の問題を適切に処理するとともに意見の隔たりを建設的に管理し 両国関係の政治的な基礎を守ることを望む」と述べたうえで人的・文化交流を深めるべきだと強調しました。

さらに、「両国は協力とウィンウィンの関係を堅持して世界の自由貿易体制とサプライチェーンの安定を守るべきだ。世界的な問題や地域の問題で協力を強化して真の多国間主義を実践し、ともに地球規模の課題に対処すべきだ」と述べたということです。

そして、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、これまでどおり「汚染水」という表現を使いながらも、先に両国が合意した中国による日本産水産物の段階的な輸入再開について、「両首脳はハイレベル対話の仕組みを活用し、合意を早急に行動に移すことで一致した」としています。

石破首相「大局的な観点から意見交換できた」

石破総理大臣は会談のあと記者団に対し「『戦略的互恵関係』の包括的な推進と建設的かつ安定的な関係を構築するという大きな方向性で確認を見た」と明らかにしました。

そして、両国の外相の相互訪問を行うとともに、日中ハイレベル経済対話などを実現するため調整を進めていくことを確認しました。

その上で、東京電力福島第一原発にたまる処理水の海洋放出をめぐり、先に両国が日本産水産物の輸入再開で合意したことについて「今後きちんと合意を実施していくことを確認した。習主席自身が言及したことは非常に重いと考えている」と述べました。

さらに日本産牛肉の輸出再開とコメの輸出拡大についても習主席から言及があったと説明しました。

一方、東シナ海情勢や中国軍の活動の活発化への懸念を伝えたことも明らかにし「さまざまな意見の相違はあるが、今後も会談を重ねていくことで一致した」と述べました。

また、台湾情勢をめぐり最近の軍事的な動向も含めて注視していると伝え、台湾海峡の平和と安定が国際社会にとって極めて重要だと強調しました。

日本人学校に通う男子児童が登校中に襲われて死亡した事件をめぐっては、中国に滞在する日本人の安全確保を求めたのに対し、習主席は「日本人を含むすべての外国人の安全を確保する」と応じたと説明しました。

さらに石破総理大臣は、中国で拘束されている日本人の早期解放を求めました。

そして「大局的な観点から意見交換ができたと思う。非常にかみ合った意見交換だったという印象だ。首脳間を含むあらゆるレベルで頻繁に意思疎通や往来を図り、課題と懸案を減らし協力と連携を増やしていくため、互いに取り組みたい。首脳どうしの会談をする重要性を改めて強く認識した」と述べました

バイデン大統領と対面で初会談 北朝鮮への対応など確認

石破総理大臣は、訪問先のペルーで、アメリカのバイデン大統領と初めて対面での首脳会談を行い、日米同盟をさらに強化していくとともに、北朝鮮による核・ミサイル開発やウクライナ情勢への対応で今後も協力することを確認しました。

石破総理大臣とアメリカのバイデン大統領との日米首脳会談は、ペルーの首都リマで日本時間の16日午前4時半からおよそ10分間行われました。

この中で、石破総理大臣はバイデン大統領の日米同盟に対するこれまでの貢献に謝意を伝えました。

その上で両首脳は日米同盟をさらに強化していくとともに、日米韓の3か国など同志国のネットワークを発展させるため、今後も協力することで一致しました。

また、北朝鮮による核・ミサイル開発や拉致問題、それにロシアによるウクライナ侵攻への対応で、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。

初の日米韓首脳会談 北朝鮮に懸念 3か国で緊密に連携を

石破総理大臣は、日本時間の16日朝のおよそ40分間、アメリカのバイデン大統領、韓国のユン・ソンニョル大統領と就任後初めてとなる日米韓3か国の首脳会談を行いました。

冒頭、石破総理大臣は「われわれを取り巻く安全保障環境は極めて厳しい。インド太平洋地域の発展と繁栄のためには日米同盟、米韓同盟、そしてその戦略的な連携が極めて重要だ。北朝鮮への対応はもちろん、さまざまな分野で連携を緊密にしたい」と述べました。

会談では、北朝鮮が先月、最新型のICBM=大陸間弾道ミサイルだとするミサイルを発射するなど挑発行為を繰り返すとともに、ロシアとの軍事協力を進めていることに深刻な懸念を共有し、3か国で緊密に連携して対応することを確認しました。

その上で、3か国によるさらなる連携強化に向けて、調整を担う事務局を新設することを申し合わせました。

また、首脳らは覇権主義的な動きを強める中国も念頭に、力による一方的な現状変更の試みを含む地域情勢をめぐっても意見を交わし、協力を続けていくことで一致しました。

石破首相 APEC 2031年の議長国に立候補表明

APEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議は、ペルーの首都リマで、石破総理大臣のほか、アメリカのバイデン大統領や中国の習近平国家主席らが出席して日本時間の16日未明に開幕しました。

この中で、石破総理大臣は、地域の持続可能な成長と繁栄の実現に引き続き貢献するため、
▽ルールに基づく公正で透明性のある貿易や投資環境の維持・強化
▽質の高いインフラ投資の推進
▽女性の経済的地位の向上と能力構築
の3点を重視する考えを示しました。

その上で、日本が過去に2回、APECの議長国を務めた経験も生かし、7年後の2031年の議長国に立候補することを表明しました。

日本が2031年の議長国に決まれば、2010年の横浜以来の国内開催となります。

国際情勢が不透明感を増す中、石破総理大臣としては、APECの議長国に名乗りを上げることで、地域の発展に積極的に貢献する姿勢を示し、存在感を高めたい狙いがあるものとみられます。

【解説 動画】日米・日米韓・日中 一連の首脳会談 ねらいは

現地で取材にあたっている政治部と国際部の記者に中継で聞きました。

(動画は4分53秒 データ放送ではご覧になれません)

Q.アメリカのトランプ氏の再登板を前にした一連の会議。日米、日米韓の会談のねらいは?

政治部・岩澤千太朗記者
石破総理としては、これまでの政権が重視してきた日米や日米韓の緊密な連携を引き継ぎ、抑止力や対処力を、より強化していきたい考えです。と言いますのも、北朝鮮が、弾道ミサイル技術を向上させているのに加え、ウクライナとの戦闘参加など、ロシアとの急接近も指摘されているからです。政府内からは「ロシアが、核やミサイルの技術を北朝鮮に提供するのではないか」という懸念も出ていまして、アメリカの政権交代もにらんで、これに対じする枠組みを確固たるものにしておきたいというねらいがあります。

Q.そして日中。山積する課題に進展はありそうか?

日中間の課題や懸案は、歴代の総理大臣による取り組みを振り返ってみても、初めての会談で大きく前進が見込めるほど簡単ではないと言えます。石破総理としては、まずは主張すべき点は主張しつつも、経済など協力できる分野での連携を模索するこれまでの外交方針を踏襲し、相手の出方を探ることになると思います。

一方で、ある外務省幹部は「中国は、トランプ政権の発足で、アメリカとの競争が激しくなるのを見込んで日本に接近してきている。今が関係改善を図るチャンスではないか」と話しています。こうした国際情勢が追い風となるのか、このあと石破総理が会談の手応えをどのように説明するかに注目したいと思います。

Q.トランプ氏との会談を調整中とのことだが、最新の状況は?

現時点では確定していませんが、日本側は、南米での一連の日程のあと、アメリカに立ち寄り、トランプ氏と会談できないか、打診しています。ただ政府関係者の1人は「まだ回答はないが、会談を要請している各国に断りの連絡が入り始めているようだ」と明かしています。

また、外務省幹部は「8年前の安倍元総理の時とは状況が違い、落ち着いた環境で会談した方がよいかもしれない」と話していまして、政府は、今回、実現しない場合でも、引き続き早期の機会を探ることにしています。

Q.中国側はどう出てくる?

中国総局・須田正紀記者
中国は、石破政権の発足をきっかけに共通の利益を拡大する「戦略的互恵関係」を改めて確認し、日本との関係安定化につなげたいとみられます。そうした意向をより加速させているのが、不確実性を増す中国とアメリカの関係。中国製品に高い関税を課すと訴えてきたトランプ氏が再び大統領となることが決まり、「貿易戦争」と呼ばれた事態の再発への懸念が高まっています。

さらに、中国国内の景気の先行きはいまだ見通せないままということもあり、外交関係者の間では、中国はせめて日本との関係は安定させる方向に向かってもおかしくないという見方が出ています。

しかし、話を聞いた中国の専門家は、特に中国が「核心的利益」とする台湾や、アメリカとの関係をめぐり、日中の間で根本的なズレがあると話していました。今回の会談は、中国側にとっては関係の安定化を念頭に置きながらも石破政権の出方をじっくり見極める場になりそうです。

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