スパコン「富岳」6位後退 計算速度、米国勢優位強まる
世界のスーパーコンピューターの計算速度を競う最新のランキングで、米国の「エル・キャピタン」が新たに1位となった。理化学研究所と富士通が開発した「富岳(ふがく)」は前回の4位から6位に下がった。1位から4位までを米国勢が占めた。
専門家の国際会議が米国時間18日、半年ごとに集計するランキングの最新版を公表した。スパコンは先端技術研究におけるインフラの役割を担っている。近年は人工知能(AI)の開発基盤としても重要性が増しており、国の科学技術力を示す指標として注目されている。
エル・キャピタンは米ローレンス・リバモア国立研究所が運営する。1秒間に174.2京回(京は1兆の1万倍)の計算性能を示した。前回まで5期連続で1位だった米オークリッジ国立研究所の「フロンティア」は2位に後退したが、計算性能は120.6京回から135.3京回に高まった。
5位にはイタリアの「HPC6」が新たにランクインした。欧州で最も計算速度の速いスパコンとなった。日本では富岳の後継機の開発が2025年に始まる。従来のシミュレーションと、AIの開発と運用の両方の計算で世界最高の性能を目指す。
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(更新)- 堀越功日経BP 日経ビジネスLIVE編集長別の視点
今回のTOP500リストでは、日本勢の上位として、「富岳」に次いで16位、17位にソフトバンクのNVIDIA H100を使ったシステム「CHIE-3」「CHIE-2」が入りました。ソフトバンクは全国にAI計算基盤を分散配置する「次世代社会インフラ」の構築に向けて動いています。10月末には約6000基のGPUを使った計算基盤が稼働開始したことを公表しました。今回、TOP500の上位にソフトバンクが顔を出したということは、通信事業者の枠を超えた同社の取り組みが、いよいよ本格化していることを物語っているといえます。
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(更新) - 浅川直輝日経BP 編集委員別の視点
今回のTOP500スパコン演算性能シェアは、米国55.2%に対して中国はわずか2.7%。これが実勢を反映していないのは明らかです。中国には既にTianhe-3、OceanLightなど数機のエクサ機(演算性能1エクサ超のスパコン)があるとされますが、いずれもTOP500には登録していません。 中国はかつて国威発揚の意図もあってかTOP500に大量のスパコンを登録し、2019年には全演算量の32.3%を占めていました。それが現在では200位中、中国のスパコンはわずか2つ。ハイテク製品の取引制限が厳しくなる中、米中スパコン開発競争はTOP500という表舞台ではなく、水面下で激しく進行しています。
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