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トリドールホールディングス創業者・代表取締役社長の粟田貴也

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Text by Takaya Awata

これまで、日本の外食企業の海外進出は鬼門と言われてきました。海外展開を継続的に成功させている日本の外食企業は少なく、世界の誰もが知るような日本の飲食チェーンはまだありません。先にも書いたように同業他社は海外進出に慎重になっていると感じます。

しかし私は、日本経済の停滞やそれに伴う値上げが受け入れられづらい国内の環境、少子高齢化などの社会的な要因を考えると、海外進出のリスクよりも国内だけで事業を完結させるリスクのほうが高い時代だと考えているのです。

「飽くなき成長」を求めるのならなおさら、今後市場が2桁成長する地域もある海外に軸足を持っていたほうがいい。海外展開を加速することで、2023年3月期には1883億円だった売上高を、2028年3月期には4200億円まで伸ばす計画です。

中長期経営計画を発表した当初は売上目標を3000億円に設定していたのですが、それから海外企業のM&Aも行い、4200億円まではいけると目標を上方修正しました。

国内外合わせてナンバーワンの売上となったハワイ・ワイキキ店は、日本の1店舗の約10倍以上の年間売上があり、サンフランシスコ店も約5倍ほどの売り上げがあります。食材も家賃も高いけれど、日本より価格を高く設定でき、お客様の数も多いため、爆発的な売り上げが出るのです。

海外店舗数は現在の861店から2028年3月期で3000店まで拡大する計画を立てています。各店舗が繁盛店となれば、現地でキャッシュフローがまわる。日本の事業で出た儲けを海外出店にまわすのではなく、海外で稼いだお金で海外の出店を進められるようになっていくのです。これにより、想定よりも遥かに速い出店スピードを実現できます。

今後は、かつて約50店舗を展開していたものの、現在の店舗数はゼロとなった中国本土への進出に再び挑みます。なんといっても魅力的なのは、14億人の人口です。GDPの伸び率も高く、店が出せれば日本の10倍の速度で店舗数・売り上げ共に伸ばせるのではないかと考えています。

2023年時点ではチャイナリスクが高まり、海外から中国への投資は急減しました。中国経済見通しの悪化や米中対立の激化から、「今は中国進出すべきではない」と考える企業が多いのもわかります。

しかし、周りが手控えている今だからこそ、トリドールにとってはチャンスなのです。すでに、グループブランドのタムジャイサムゴー ミーシェンとタムジャイワンナム ミーシェンは中国本土で25店舗以上を展開しています。ノーボーダーネットワークを活かせば、丸亀製麺の進出も成功できると考えています。

あとは、アメリカです。アメリカでヒットする業態になることは、世界に市場を持つことと同義。やはり私はこの市場で勝ちたいのです。外食の世界の揺るぎない王者は今も昔もアメリカであり、市場としても魅力的です。アメリカ経済は世界ナンバーワンでありながらまだ成長しており、人口も増えています。

アメリカはいち早く飲食チェーンが発展した国です。私の考えでは、アメリカは州ごとに条例があり、文化の異なる人が集まってできている国であるがゆえに共通の価値観というものがあまり存在しない。そうした国の特徴と、マニュアルさえあればどこでも再現性が担保されるというチェーンシステムがマッチして、飲食チェーンが成長していったのだと思います。その再現性の高さゆえに、マクドナルドやスターバックスなどアメリカ発の飲食チェーンは、世界中に展開することができたのでしょう。

この外食先進国で、トリドールの業態が誰もが知る飲食チェーンになる。そんな夢を抱いています。

海外事業はここから5倍、10倍と成長し、売上比率で国内を追い抜かす日もそう遠くないと考えています。ハワイで空き物件と出会ったことからスタートした海外進出は、頼もしい仲間を得て、やっと世界の飲食企業と戦える体制が整ってきたところです。

日本発のグローバルフードカンパニーへの挑戦は、まだスタートラインに立ったばかりなのです。

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