tiny desk concerts JAPAN

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↓つづく

 このページを見つけてくださって、ありがとうございます。散らかった机の上のQRコード、よく気がついてくださいました。

 あ、小沢健二です。NHKの公式サイトをお借りして、今回のTiny Deskの演奏や演出について書いてみます。

(スチャダラパーのリハーサルの音が聞こえる、日比谷野音の楽屋で書いています。急いで書かないと見られない! 笑)

 まず「音が突然遠くの音に切り替わる」というテクニックは、今年2024年のツアーを記録した『追伸モノクロマティック』という映像作品を構想していた時に思いついたものです。

 通常のライブビデオでは、最前列のカメラが撮った映像を見ている時も、会場最後方のカメラの映像を見ている時も、ずっと同じ音を聞いています。

 しかし、視点(どこで見ているか?)が切り替わっているのに聴点(どこで聞いているか?)が変わっていないのは、本当はふしぎな話です。自然界では、立ってる場所が変われば、聞こえる音は変わります。

 そこで試しに、視点(カメラ)が切り替わるのと同時に、聴点(マイク)も切り替えてみたら、作品に動きが出た気がしました。

 瞬間移動したような感じというか。

 さらに進めて、音と絵が自由に切り替わって、わけわかんなくなるようにしたのが『追伸MCMQ』でした。笑

 Tiny Deskのお話を頂いたのは、ちょうど『追伸MCMQ』の編集後でした。

 そもそも「音がめちゃくちゃ凝ってる」のはアメリカのラジオ~ポッドキャスト文化の特徴で、定番ラジオ番組(ブラタモリみたいに多くの人が歴代アナウンサーの名前が言えるやつ笑)から生まれたTiny Deskに合ってもいて、洒落てるはず。

 そこで「カメラが切り替わるように音も突然切り替わる」手法と、せっかくテレビを生業としている人たちがお客さんなのだから、みんなに携帯で撮影してもらって、視点と聴点をふやしたいということをNHKにお話ししました。

 Tinyのディレクターは以前『SONGS』でお世話になったIさんで、おもしろさをわかってもらえるだろうと信頼していたのですが、やはりわかってくれました。

 信頼、大事です。笑

 そして本番後、(ネタバレします! 注意!)お客さんから送られてきた携帯動画を次々見ていたら、録画しながら(おそらく赤ちゃんを抱えて)『いちょう並木』をご自分で歌っている動画があり、NHKの皆さんもぼくも、めたくそ盛り上がりました。

 あんな映像、あんな音!

 本番の前説で「携帯で撮影OKです」と言ったら部屋中どよめいてましたが、お客さんを信頼して撮影OKにして、良かったです。

 信頼、大事ですって。笑

 仕事をさぼって、はダメか、仕事の手を休めて笑、見に来てくださった皆さん、本当にありがとう。

 そしてNHKのみんな、恐れずに次々と変わったことを取り込んでくださって(QRで埋めてある、このハックしたみたいなページもですが)、本当に感謝しています。

 なんか、以前は「民間企業では変なことができるが、公的機関ではできない」みたいなのがあったと思うのですが、今や「民間企業のほうが色々センシティブで安全志向」みたいなところがあり笑、公的機関であるNHKが変なこと、大胆なことを楽しんでくださったのは、めちゃくちゃ心強かったです。

 そして思うのは、視点(カメラ)の切り替えが確立された手法である一方で、聴点(マイク)の切り替えはもっと可能性のある手法なのでは、ということです。

 これを読んでいるミュージシャン、エンジニアのみなさん、追究してみませんか?

 一筆書きで長くダラダラすみません。もう一つだけ、今回のドラムセットについて。

 まず、例えば生のスネアを叩くと、超一流のドラマーが「毎回同じ音を出そう」と思って叩いても、音は毎回違ってしまいます。

 これは「ショットムラ」と言われ、超一流の(白根くんのような)ドラマーはムラが超人的に少ないのですが、それでも毎回違う音が出ています。

 自然界には必ずムラがあるのです。

 一方、デジタルのドラムマシンは、このムラが(ほぼ)なく、毎回機械的に同じ音を出しています。そのために音が「冷たい」とも言われますが、それは「強い」「バキバキ」「イケイケ」とも言えます。EDMとかを想像してください。

 ドラムマシンでもアナログのものは、音にムラがあります。アナログドラムマシンは一回一回音を発音しているので、良く聞くと毎回音が違うのです。

 そのためか、「アナログドラムマシンの音は温かい」とか「柔らかい」言われます。マーヴィンゲイの『セクシュアル・ヒーリング』とかを想像してください。

 話は戻って、人間が叩くドラムは、自然なムラがあります。だから「とても温かい」「とても柔らかい」のですが、それは「ユルい」とも言えるし、「表現の幅が広い」とも言えます。

 それぞれが、良いのです。

 生演奏が繊細な水性絵の具なら、ドラムマシンは油性絵の具で、油性絵の具にも種類が(デジタルとアナログドラムが違うように)ある、みたいな。

 今回のドラムセットはいわば、ハイハットが水性絵の具(生演奏)、スネアとバスドラがべったりと色の強い油性絵の具(ローファイな12ビットのデジタルドラムSP1200)です。

 そもそもハイハットは二枚のシンバルが組み合わさっていて、叩き方はもちろん、足の踏み方で音の長さや響きを変える、複雑で高度な楽器。

 ならば、せっかく一流のドラマーがプレイするのだから、ハットは生がお得とも思いました。笑

 そして、以上の超異様なドラムセットに取り組んでくださった白根くん、本当にいつもありがとう。

 いくらアイデアがあったって、信頼できるプレイヤーがいなかったらただの妄想です。

 こういう話は尽きないので、このへんで。日比谷野音の楽屋で書きながら、こういうディープな話をゲストで来ていたSTUTSくんともできて、とても良い時間でした。

 信頼。信頼の、話です。

 またいつか。

日比谷公園、音楽の現場にて

小沢健二