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「答えがないのに、ゴールを示すべき」というジレンマをどう乗り越えるか?〜これからの時代の未来との向き合い方(全7記事)

Googleと日本企業の「優秀なエンジニア」の定義の違い これからの時代の組織づくりのヒント

中土井僚氏の著書『ビジョンプロセシング』の出版を記念し、これからの時代の未来との向き合い方を探究するトークイベントが開催されました。『プロセスエコノミー』などの著者でIT批評家の尾原和啓氏、READYFOR創業者の米良はるか氏と中土井氏の3名がトークセッションを行い、「答えはないのに、ゴールを示すべき」というジレンマの乗り越え方について探りました。本記事では、組織運営をしていくうえでのポイントについて語ります。

前回の記事はこちら

従業員数が200人になり「ある意味、創業の時くらい楽になった」

中土井僚氏(以下、中土井):ちょっと別の角度から興味が出てきたことがあるんですね。

(イベントが)始まる直前にお話をうかがった時に、今READYFORさんは(従業員数が)200人ぐらいになっていて。「50人から200人になったら、また組織の大変さって違うんじゃないですか?」というお話をしたら、「ある意味、創業の時くらい楽になった」とおっしゃったのがすごく印象的だなと思っていて。

米良はるか氏(以下、米良):(笑)。

中土井:今の話と関係があるような気がしているんですね。組織運営をしていくうえで、(従業員が)数十人だった時と今とで、米良さんの中では何が自分を楽にさせてくれているのかは、見えているんですか?

米良:そうですね。それで言うと、まさに問いを立てて、その問いに対してしかるべき仲間を集めてきて、その仲間たちに思いっきりフルスイングでバットを振ってもらう場を用意するようになって。自分の性格とマネジメント方法がすごくフィットしてきたところがありました。

中土井:おもしろい。

米良:逆に100人ぐらいの時は、ある程度執行の部分を自分が見ていかなきゃいけないような時でした。私はどっちかというと、個人的にも「会社と社外」をあんまり分けてしゃべっていなくて、「こういう社会が必要だよね。だからREADYFORではこんなことやっていきたいよね」とか考えるほうが向いているなと思います。

最近だとISA(Impact Startup Association)というスタートアップの協会を作っているんですが、スタートアップの協会も同じテンションで、「こういうふうにやろうね」と言って、仲間を集めてやっていたりします。同じ志を持っているんだけど、違うバックグラウンドやプロフェッショナリティを持った仲間たちが集まって、みんなでワイワイやりながら。

目標という目標じゃないけど、「こんな社会になる時には、こういうKPIが実現されていたらいいよね」と言って、とりあえず数字を置いてみて、「そのためにどうしたらいいんだ?」と言って、近づいていくためにみんなでやっているようなイメージです。

中土井:すごいなぁ。

尾原和啓氏(以下、尾原):なるほどな。

組織内で個性を殺すのが、かつては日本の勝ちパターンだった

米良:さらに言えば、それ自体は目標として置いているけど、やはりその過程のプロセスがおもしろいと思って。みんながだんだん巻き込まれていくというか、巻き込んでいっているのかもわからないんですが。

自分のスタンスとしては、「社会にこういう課題があるから、こういうふうにみんなで解決していけたら楽しいよね」みたいなマインドで、あらゆるコミュニティを作っているというか。

尾原:今の話を聞いてすごく思ったのが、やはり米良さんって、結果的にチーミングを前提にした組織になっているんだなって気がしたんですよね。

中土井:私もそう思いますね。

尾原:世の中のものづくりの会社ってチームを前提としていて、最初から役割の中で、どっちかというと「個性を殺して、日本、トヨタのために黙々と機械になっていい製品を作るんだ」みたいなものが日本の勝ちパターンだったわけですよね。

なんだけど、さっき米良さんがおっしゃったように、解きがいがあるいい課題を提供してくれる人って、僕らみたいな問題解決屋からすると“エサを与えてくれる人”みたいな(笑)。

米良:それに近い気がします(笑)。だから、おもしろがられます。それはすごくそうですね。

尾原:そうそう。だから米良さんって、たぶん最初からチーミングとしてメンバーが集まってきやすい組織だったから、かえって執行としてパーツの仕事をやらなきゃいけない時は大変だった。

米良:そうですね。言語化していただいた。

尾原:逆にチーミングだけで回るようになったら、これってむちゃくちゃ組織の作り方のヒントになる気がしますよね、中土井さん。

中土井:そうですね。

READYFORは「とても細かく数字管理がされている会社」

中土井:私が今のお話ですごく興味深く思ったのは、米良さんがREADYFORというプラットフォームでやっていた思いがかたちになっていって、それが離合集散していく動きを自組織の中でも実現されたんだろうなと思うんです。

自組織とREADYFORというプラットフォームの違いがあるとしたら、固定費を払うか・払わないかって、すごく大きい話な気がするんですよ。READYFORに集まっている方々は雇っているわけじゃないから、ある意味、彼らに対して米良さんがリスクを取る必要はないですよね。

例えばヤマダさんという人が「このプロジェクトをやりたい」ってなった時に、そのプロジェクトをやりたいと言った人に、先行でREADYFORさんがお金を出しますってなったら、それはリスクです。ただ、そのリスクを取る必要がないという話で言うと、自組織の場合は従業員の給料というかコストが発生する。そこって似て非なる動きがあるだろうなと思うんですね。

それでも、READYFORのプラットフォームと同じように組織のことを捉えて運営されているんじゃないかなと見えたんですが、その点はどうですか?

米良:どうなんだろう。

尾原:単純に言っちゃうと、「200人に毎月給料を払わなきゃいけないんだから」みたいな思考がよぎりませんか? それを前提として、やはりチーミングがチープになっちゃいませんか? みたいな話です。

中土井:そうそう。翻訳してくださってありがとうございます。

米良:でも、普通に会社の中には売上目標はありますし、利益目標もあるので、基本的には非常に管理されています。

中土井:なるほど。おもしろい。

米良:なので、とても細かく数字管理がされている会社だと思います。

READYFORの目標設定のポイント

米良:なんですが、今日の話にも通ずるかもしれないんですけど、ある程度トラックがあるところじゃないと数字管理ってできないじゃないですか。

過去の推移がないと数字の目標って立てられないと思うので、それ以外はどっちかというとムーンショット的に置いて、ガンガンPDCAですかね。とりあえず、見えないゴールに向かっていろんなことをトライしていきながら、吸収してやっていこうと。

こういうのはマイルストーン的に管理していて。ただ、これぐらいの時にこういうチャレンジを何個やるとか、別に数がすごく厳密に測られているわけじゃないですけど、そのぐらいのペースで解像度が上がっていたらいいよねみたいにやっている感じです。

どこの会社も同じかもしれないですが、既存事業のほうが、ある程度数字を読めるから目標がきちっと置かれているし。とはいえうちの会社だったら、既存の事業でもけっこうトライアルをやっていたりするんですが、そのへんの目標はわりとマイルストーンっぽく置いている感じですかね。

中土井:おもしろい。

米良:この目標系の話は、さっきのチーミングの話とは。

中土井:いや。そういう意味で言うと、すごく新しいこれからの時代の組織運営だなと思ってお話をうかがっていました。

メンバーの専門性を集めて「問い」を解く組織

中土井:逆の観点でちょっと意地悪な質問をしちゃうかもしれないんですが、READYFORさんぐらいやりたいことを応援することが当たり前というか、「やりたいことあってこそだよね」となった時に、組織の中にはやらないといけない仕事も出てきたりするじゃないですか。

米良:はい。

中土井:「やりたいこと至上主義」「やりたいこと原理主義」みたいになっちゃうと、やらなければならないことをめぐって、組織の中で不協和音が起きてもおかしくないなと思うんですね。そういったことって、米良さんの中ではどんなふうに見えていらっしゃるんですか?

米良:そうですね。それで言うとうちは、「あなたがやりたいことをやりましょう」っていう組織ではあんまりないと思います。

中土井:へぇ〜! おもしろい。

米良:基本的には、問いを解きたいと思っている人が集まってくる組織。「この問いは自分1人では解けないから、みんなの専門性を集めて解いていきましょう」みたいなことをおもしろがっている組織という感じですね。

尾原:脱出ゲームって、自分が解くんじゃなくてみんなで解くことが楽しかったりするから(笑)、それに近いんですかね。

米良:私、そもそも脱出ゲームをやったことなくて。すみません(笑)。でも、そうですね。なので、さっきの「チーミングとチーム」の「チーム」の部分の定義をちゃんと理解しているかはわからないんですが、うちのメンバーはわりと長く働いているメンバーも多くて。

本当にいろんな試行錯誤を繰り返しながら、信頼できる仲間とそれぞれの能力を合わせて、「こんなことが解けた」ということをどんどん繰り返していくというのが、今うちで起こっている状況かなと思います。

中土井:おもしろいなぁ。

「山登り型プランニング」と「波乗り型プランニング」の違い

中土井:ちょっとスライドをシェアさせていただきたいです。私がこの書籍の中で言っている「パラダイムシフト」の大きなもので、計画のジレンマって、結局のところ「やる前に勝ち筋が見えないとやりません」というのは自分都合な発想なんですよね。

自分の都合に合うかどうかという話なのに対して、山登り型の場合って、山に登りたいのは自分の都合だし、登り方を決めるのも自分の都合。(一方で)波乗り型は、自分の都合とはまったく違うけど動くというところに、どうダンスしていけるかという話だと思っているんです。

この「ビジョン」というのは、4つのカテゴリーで表現しているんですよ。ビジョンクローバーモデルと言っているんですが、私たちのこれまでのビジョンが到達目標と語られるという意味で、「Should型」のようにすごく偏っていると見えていた。

北極星のように「こうしたいよね」「こんな社会にしたいよね」って米良さんがおっしゃっている部分は、まさにWillだなと思っているんですね。それに対して、ShouldでCanに落としていく。

Canというのは「ロードマップ型」と言っているんですが、これはShouldなりWillなりで示された方向性をどういう階段を上っていくか、どうやればいいか、道筋が明確にわかるというものです。

なのでShouldを示して、そこに到達させたい会社側と、コスパやタイパを考えたくなる社員側という意味で言うと、ShouldとCanだけで成立している場合は相性がいいんですよね。

山登り型はShould、Canだけですごく相性がいいのに対して、波は勝手に変わる。これがCould beに当てはまるところなんですが、起こり得ることは、「今後どうなるかはどんどん変わっていくよね」って、まさに問いが強制的に生まれる話だと思っているんですね。自分たちが何を解かないといけないかが問われている話だと思うので。

今のお話が非常に興味深いなと思ったのは、「やりたい」がWillなのに対して、「やらなければならない」のShouldが離れている時にどうするのかな? というのが、私の先ほどのご質問だったんです。米良さんはそれに対して、問いが欲しくて、問いを解くことを求めている。

ShouldとWillとCould beという3つの観点から、何を自分たちでやっていけばいいのかという「謎解き」を好む人たちがいること自体は、非常に新しいロールモデルの姿をされているなという感じがしましたけどね。

Googleの「優秀なエンジニア」の定義

中土井:尾原さん、聞いていた感じはどうですか?

尾原:でも、僕もすごくそういうタイプなんですよね。「ものすごいWillを強く持った人に振り回されたい」っていう、マゾ型問題解決人間なので。一方で、米良さんと中土井さんのお話を聞いていて思い出したのが、Googleの優秀なエンジニアの定義なんです。

日本でエンジニアというと、ここで言うShould、Can型の人。納期までにできるだけ失敗を少なく、予算の中で最大クオリティのものを作れる人が、たぶん日本っぽいエンジニアの定義になっちゃうと思うんです。Googleの中では、「自分ができる中の最大の問題を自分で定義しやり抜くこと」が優秀なエンジニアの定義なんです。

中土井:それ、すごいですね。

尾原:おもしろいのが、実はこの中にWillは入っていないんですよね。

中土井:おもしろい。

尾原:問題そのものは、でっかい会社のビジョナリーの人が提供したもので「俺だったらここまで解決できるもんね」「いや、俺だったらここまで解決できるもんね」と言って、「よし、やりきった。俺、やりきる中でめっちゃ成長した。次のもっとデカい課題は何なんだ?」みたいなことをやっていくのは、わりとハッカーっぽいタイプに多くて。

中土井:おもしろい。

尾原:実は、世の中でこれに一番行き着いた人がビル・ゲイツさまなわけですよね。

中土井:なるほどねぇ。

尾原氏曰く、ビル・ゲイツは「ハッカーの総大将」?

尾原:あの人って、「世の中をOSで満たす」みたいな時は、ライバルを追い落とす問題解決も使っちゃっていたんだけど、Microsoftが成功した先に「俺、なんかもっと問題解決できるはずなんだけどな」と言ってビル&メリンダ・ゲイツ財団を作ったら、「マラリアを撲滅するのが俺の仕事じゃね?」「温室効果をなくすことが俺の問題解決じゃね?」となった。

彼からしてみると、あんまりWillはなくて、問題解決やデカいことをキャッキャやっているだけのハッカーの総大将がビル・ゲイツだったりするので。こういう人間が米良さんの下には集まっているんじゃないかな(笑)?

米良:(笑)。でも、おっしゃることがすごくよくわかって。「こういう社会があるといいよね」というのが、まさにWillの部分だと思うんです。解きたいと思っている課題や、「こういう社会にしたいよね」「じゃあ、それってどうやったら実現できるかな?」というアイデアをいろんなかたちで持っている人たちが集まっている。

私自身も「もしかしたら、こうやったらいけるかもしれないよね」というものをみんなで議論しながら、「じゃあ、やってみよう」「こういう結果を残してみよう」と言ってやってみる部分が、ここで言うShouldに近いのかなって思います。

ただ、やはり「すでに世の中にあるビジネスモデルをそのまま再現します」という話ではなかったりするから、そこに向けてのプロセスはいろいろやってみながら壁にぶち当たって、「あっ、こんなことがわかった。こんなことがわかった」っていう。

ただ、そもそも「どういう世界を作りたいか」というWillが一番引き金になっているから、そのプロセス自体もおもしろがるというか。

例えば、必ずしも「この期限までにこの設定ができなかったら、もう自分は終了だ」みたいになるわけじゃない。だって、それがゴールなわけじゃないよねって、もともと思って関わっているから、それが大きいかなっていう気がしました。

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退職代行に怯えない組織になるために(全3記事)

“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方

メディアでも話題となり、企業側も問題意識を持っている「退職代行」サービス。本イベントは「退職代行に怯えない組織になるため」と題し、退職代行ビジネスの現状と人材定着の施策について探りました。本記事では、従業員とのコミュニケーションの取り方について、具体例を紹介します。

退職者が出た時に「会社がどんな対応をしたか」は見られている

松島一浩氏(以下、松島):次に、僕が今日一番しゃべりたいことかもしれないです。「退職者が出た時の対応」ですね。「退職どうしましょう?」という相談を本当にいただくんですが、めちゃくちゃこだわってください。

もう今は10月(イベント開催は2024年10月11日)なので、新卒の方がいたら遅いかもしれないんですが、一発目に(退職者が)出た時に上司や会社がどんな対応をしたかということを、やっぱり同期の子は見ていますよね。これがすごく大事。

個人情報やいろんな問題があるので、退職理由を言えないとかいろいろなケースがあると思います。ただ、そこに対して上司がどう思っているのかを、できればチャットとかではなくて、全体の場や朝礼とかでみんなに伝える場を取るべきだなと考えています。

(共有の仕方は)「まぁまぁ、あいつはもうしょうがないから」「しょうもないよ」みたいな感じじゃなくて。私のクライアントでもいるんですが「退職代行を喰らいました。すごく残念です」と。

申し訳ないこともしたし、でも悔しいし、こっちも傷ついてるということを正直に話し、反省も述べる。「でも、こういうことを伝えたかったんだよね」という後悔も全体にちゃんと開示した時に、その後も残った子たちとのコミュニケーションがすごく良くなったという話を聞いたりします。

だから、誤魔化したりしない。退職に対してちゃんと真剣に向き合ったり、思ったりしてるんだという上司や会社の姿を見せた時に、「退職代行を使いますか? この人にはちゃんと言いたいなってなりませんか?」というふうに思うんですよね。

だから(新卒社員が目の当たりにする)1人目の退職が本当に大事だと思います。今からでも遅くないと思いますので、退職社員に対してどうそれを取り扱うかということでした。

上司が部下に気持ちを伝える場を設ける

松島:「隣のエースとランチ」も、ちょっと斜めの(関係での)発想です。自社の自チームだけに閉じないことが大事で、活躍してる他の部署の先輩や上司とランチしたり交流する場を作ってあげるということですね。



ある程度、口裏を合わせたりしてもいいかなと思います。「こういうことに悩んでるんだよね」「ちょっと視野が狭くなってるから、こんなアドバイスをしてくれたらうれしいな」ということを、部長同士やマネージャー同士が連携してヘルプするような関係。そんなことができたらいいかなと思ってます。

「チーム内アワード」も本当にそうで、言いたいことがあるんですが、これは本当にやってほしいです。いろんなMVPや賞や昇進があるんですが、それとは別に、僕もこのあいだ半期に1回の会の後に全員に「○○で賞」みたいな賞の名前をつけてカードを渡したんです。

こういうことをやっただけなんですが、非常に盛り上がりますし、上司が部下にちゃんと気持ちを伝える場や、「見てるよ」を伝える場として、定期的にこんなことをやるのが大事かなと思っています。

「チームKYS」は何かというと「会社良くする」の略なんです。人事の方も現場の方も、やっぱり1人で戦うのはなかなか大変だと思うんですよね。今日のセミナーも、僕は知り合いに「1人で参加しないでぜひ会社の人と複数で参加いただいて」と伝えたんですが、「明日からこうしようぜ」みたいなことをやってほしいなと思っています。

「でもな、これを部長に言ってもな」と思うんだったら、課長とリーダーでチームKYSを結成して、会社を良くするための取り組みを何かしらしていく。仲間を会社の中に作るということですね。ぜひこれをやってほしいなと思ってます。

思っていることを言えない状態が一番病む

松島:「新卒との約束」というのは、ある意味メンターの逆側みたいな話なんですが、新卒や新人にちゃんと約束をするのが大事かなと思っています。

うちの例で言うと、僕は今年の新卒は3つのことを約束したんです。これも業態や社風もあるかもしれませんが、とにかく読書を1ページでもいいから絶対に毎日するという「毎日読書」。本当は一生って言いたいんですが、これを約束として1年間しました。

あとは寝る前に必ず自分の胸に手を当てて、「今日は全力だったか?」で、YESと言って寝ることを約束しました。もう1つは、会社の中に思ってることを言える場を作る。

ただただ「乗り越えろ」「がんばれ」だけじゃなくて、言いたいこと言える場所があることが大事。人事でもいいし、もちろん直属のメンターでもいいんだけど、その上の部長でもいいし、誰かに思ってること言える場を絶対に作ろうと。

体がしんどくても、大変だなぁと思っても、思ってることを言えない状態が一番病むので、思っていること言える状態を絶対に会社の中に作ろうという話をしました。強い要求と共に、そこが今の時代に必要かなと思って、そんなことを最近はやっていたりします。

就活における「オヤカク」問題

松島:という感じで、怒涛で続けちゃっていいですか、新保さん。

新保博文氏(以下、新保):実はタイムキープ的にはまだ大丈夫なんですが、たぶんみなさんが気になるであろういくつかを飛ばして聞いてきたい。例えば「入社式に親を招待」とか。

松島:これは本当に聞いたお話で、ちょこちょこそういう会社が増えてるんだと思いますが、めちゃくちゃ良いなと思っていて。今、親に事前に(入社を承諾しているかどうかを企業が確認する)「オヤカク(親確)」という言葉があったりしますよね。

「親ブロック」とか「親ブロックブロック」どうしようとか、みんなそういう話をしてるんです。入社式に親を招待すると言って、「いやいや、うちの親は来ないって言ってます」となっても、ぜひなんとか親に来てもらってほしい。

地方であってもできれば来てほしいな。実際はリアルで来てほしいですが、最悪オンラインでも。そこで、新入社員に親への手紙を読んでもらうんですよ。ここまで育ててくれたことへの感謝と、これからの決意をしてもらうという話があって。これは最高ですね。

新保:そういう意味だと、さっきの「大学のテーマパーク」という話がありましたが、お金を払ってサービスを受ける側だったところから、お金を貰う側になるという決意をすると、少し切り替わるかもしれないね。



松島:この後、何かあった時に親とも連絡が取りたいとか。もう社会人なんですが、もうそういうことが必要な世の中かなと思ってもいるので。

入社式に親を呼ぶ理由は「1つの区切り」

新保:うがって見ると「親を入社式?」みたいなになるかもしれないですが、今の時代で言うと、決意表明で(親も子も)どっちも区切りがつくのかもしれないですね。

松島:これ、絶対に親のためにやるべきだと思っていて。親が承認される瞬間って、結婚式ぐらいしかないんじゃないかなと思ってる。結婚式で「自分の子育てって間違ってなかったんだな」って思って泣いたりすると思うんですよね。

新保:なるほど。

松島:社会に育てられてる自分の子どもを見て、1つの区切りとして親にプレゼントしてあげたいって、僕も息子を2人持つ親として思ったりして(笑)。

「ぜひ来てください! うちの入社式は最高です。これはお母さんにとっても区切りでしょう。来てください」って人事が力強く言って、手紙を読むというのがあったら、現職の社員や先輩にとっても良い時間だし。

新保:確かに。

松島:人事にとって、みんなにとって、絶対に良い時間なんですよ。

新保:(子どもの成長を感じる機会は)たまに結婚式をやって感動的だったというのが、入社式でなんとも言えない幸福感が味わえる。その場にいる幸福感があるんでしょうね。なるほど。

たぶんこれは本当に(話が)尽きないし、聞きたい。前回も「もっとこれを聞きたい」とか「これの資料はないのか」というご要望がチラッとあって。

松島:そうそう。

新保:ちょっとそれをやると大変なプレゼン量になるだろうし、後でアンケートに回答いただいた方には、30個全部を入れられるかはわからないんですけど、取り組み集としてポイントや効果を入れられればなと思ってます。

社外ネットワークの重要性

新保:突っ込むとあれですが、心理学とかで、やっぱりどれも「あ、心理学のこの効果だな」というのがけっこう多いです。たぶんそれを心理学で考えたんじゃなくて、実地で帰納法的にいろいろと試して(こういう結果に)至ってるんだろうなと思って、おもしろいなと思いました。

松島:でも、みなさんもやってらっしゃると思うんですよね。

新保:だと思う。たぶん「これをやってるよ」っていうのがあると思うんですが、もう1工夫があるなと思って。しゃべり場でも、ただただ「同期が集まってやろう」じゃなくて、ファリシテーションを入れて「この項目をやろう」みたいな。

さっき「縦の関係」というのが出てきたと思います。そういう意味で言うと今の話って、縦・横・ななめまであると思うんですが、社外とやっているのがポイントだと思って。

松島:そうですね。



新保:社外の飲み会とか、外に触れてもらうのって怖いなとは思うんですが、逆にそれが良いんですよね。

松島:うん。僕らの敵とか言っちゃいけないけど、敵は退職代行というよりかは、SNSと、実家暮らしの過保護な親と、かまってほしい彼女や彼氏なんですよ。

新保:うーん、なるほど。

松島:ここが敵なんですよ。自分より仕事がんばってないけど稼いでるとか、早く帰ってる同期や同級生とか。そうなった時に、外のコミュニケーションや外の友だちやメンターを、上司やメンターが作ってあげる時代だなと思っていて。

新保:間違いないですね。

「コトガラ」と「ヒトガラ」の理解が不安を小さくする

松島:僕も、同期の飲み会をいろんな会社さんと3対3でやってるんですよね。意識の高い人同士でもすごく良いし、「めちゃめちゃ本気で仕事をがんばっている友だちが社外に欲しいんだよね」というニーズは、がんばってる子たちにもすごくあって。

当然、大人のほうが人脈を持ってるわけだから、それをちゃんとバンバン使ってあげるということは、すっごく意識してやってますね。

新保:違う調査では、社外のネットワークや社外の活動がある上司のほうが尊敬できるというデータが明確にあるので。例えばそこへ行った友だちから「松島さんってこういう人なんだよね」と言うのは、心理的に「ウィンザー効果」といって、他人からの評判のほうが信頼度が高いとか。

松島:結果的にそういうことも生まれたりはします。

新保:だと思います。すごく合理的ですね。さらに、この矢印はわかったけど、コミュニケーションとは何かと言うと「コトガラ」と「ヒトガラ」だなと思って。



仕事内容とかビジネスの話と、仕事の背景にある人としての価値観やマインドセットとか、興味関心みたいなもの。きっとこれを組み合わせながら、さっきの送別会とかでも「この仕事がこうだよね」と言いつつ、その人の姿勢とかも見ている。

僕がいつも聞いてて思うんですが、意識してなのか無意識なのか両方あると思うんですが、ミックスされてるなというのは聞いていておもしろいですね。

松島:僕たち、これを永久に話してますもんね(笑)。

新保:もうすでに「開始30分前にこのタイムラインでいきましょう」というのを越しているので(笑)。

松島:ああ、ごめんなさい(笑)。

新保:(笑)。

退職の仕方でその後の人生の質が変わる

新保:みなさんランチタイムで、時間には終わろうかなと思っているのでちょっと巻きでいきます。本編の最後としてお伝えしたいところを、松島さんからお願いします。

松島:これをどうしてもお伝えしたくて。退職の仕方でその後の人生の質が変わるということを、やっぱり忘れちゃいけないなと思うんですよね。これは大人の使命として持っていなきゃいけない。

(人材の)定着や離職防止をどうするか、という経営的な言葉で言う側面はありつつ、退職代行の問題で、僕らはここをちゃんと持ってなきゃいけないというのが強くあります。

人生で逃げちゃいけない瞬間ってそんなにたくさんない気がしてます。10年付き合った恋人に別れ話をする時とか転職の時も、僕はそういう機会なんじゃないかなと思ってます。

それを、あいさつもせずにLINEで辞めるという選択を、新卒や若者にさせることがかわいそうだと思っていて。その後の人生がどうなっちゃうんだろうな? って思うわけなんです。なので、この意識はすごく持たなきゃいけないと思っていて。

これは僕が尊敬する部下なんですが、全権で非常にたくさんの部下を抱えて向き合ってきた、ある管理職の言葉をみなさんにお伝えしたいです。退職者が出た時にどうするかという話を聞きました。

「結婚が入社で、離婚が退職みたいなものですから、それはエネルギーを使います。最後に向き合うことから逃げたくなるのが当たり前で、当たり障りのないことを言って腹の中を見せずに辞めたいと思うのです。ただ、私が大事にしていることは、そうじゃない別れ方があることを教えることです」。

「退職する日が来たとしても、自分はそのエネルギーを使い、本音を伝え、留意してもらえる先にある未来よりも、転職することを覚悟に変える。そんな良い別れ方をしたいと思ってます」という、ちょっと痺れる言葉をもらいました。

新保:痺れますね。

松島:上司やマネージャーとか、そういった人の味方でありたいなと僕も新保さんも思ってるので、これを機会にみなさんとつながれればなと思っております。

新保:今日はオンラインですが、冒頭にちょろっと出た「部下のハートに火をつける会」に参加したいですと言ったら、リアル開催をちょこちょこしてますので。

松島:ただの飲み会なんですが。

新保:あはは(笑)。でも、温度感はちょっと特殊ですよね。

松島:そうですね。

新保:ありがとうございます。

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