「呪文が聞こえる」幻聴訴える高齢者 多摩の団地、寄り添う自治会長

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寺島笑花
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 「近所の女性が、夜中に演歌が聞こえると言っている」。東京都多摩市にある多摩ニュータウン・都営愛宕団地。「愛宕3丁目地区」の自治会長、松本俊雄さん(76)の元に2020年、住民から相談が寄せられた。

 その家を訪ねると、ほとんど物がない部屋で、高齢の女性が真っ青な顔をして立っていた。1年ほど前に夫を亡くし、一人暮らし。「呪文を唱える声が聞こえる」と話す。松本さんが「幻聴ではないか」と伝えても、目は泳ぎ、恐怖におののいているようだった。

 夜中に布団を抱え、「玄関先でいいから寝かせてほしい」と近所の人に訴えることもあるという。「放っておけば、さらに悪化する」。週に1~2回、女性の元へ通い始めた。

突然の夫の死、始まった「幻聴」

 「いつ死んでもいいように」…

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    仲村和代
    (朝日新聞社会部次長)
    2024年8月5日11時47分 投稿
    【視点】

     戦後、都市に人が流れ込み、人口が急増した時代に、住む場所を提供するために作られた公営住宅。高齢化が進んだいま、様々な事情で民間の住宅に入れない人たちを受け入れる機能も果たすようになっています。ただ、そうした人たちを支える仕組みは十分ではな

    …続きを読む