オフシーズンのお知らせ
結城浩です。いつもご愛読ありがとうございます。 おかげさまでこのWeb連載も今回で第440回を迎えました! みなさまの応援に感謝します!
さて、たいへん恐れ入りますが、 次のシーズン準備のため、下記の通り更新をお休みいたします。
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 2024年11月15日(金) | 第440回更新 |
| 2024年11月22日〜2025年1月10日 | オフシーズンのため更新はありません |
| 2025年1月17日(金) | 第441回更新(以降、毎週金曜日更新) |
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登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
テトラちゃん:僕の後輩。 好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。言葉が大好き。
四辺形
僕「この四辺形
問題1(平行)
《九点平面》の世界で、
四点
テトラ「おもしろいですっ! 見た目では
僕「そうだね。 それは、ベクトルを使ってこの《九点平面》における《いわば平行》を定義していることになる。 見た目ではなくて、数式を頼りにする」
テトラ「この問題1は、機械的に成分を計算してみればいいはずですよね? では、やってみます」
テトラちゃんの計算
問題にある
次に、
残念です……
僕「ちょっと待って。最後のところ、どうして《
テトラ「だってそうですよね。
僕「
足し算と掛け算の演算表(再掲)
テトラ「あっ、そうでしたっ! この演算表を使うんでしたね。
でも、
僕「いやいや。《九点平面》の世界では
テトラ「ああ、そうでした。
僕「うん。
だから、
テトラ「ということはですよ、
四辺形
僕「そうだね!」
解答1
《九点平面》の世界で、
四点
ミルカ「今日は、どんな数学?」
僕「あ、ミルカさん」
登場人物紹介(追加)
ミルカさん:数学が好きな高校生。 僕のクラスメート。メタルフレームの眼鏡に長い黒髪の《饒舌才媛》。
テトラ「いまは、ベクトルで《九点平面》というものを考えているところです」
僕とテトラちゃんは、これまでの議論をミルカさんに伝えた。
ミルカ「ふうん……ところで、村木先生からテトラへの伝言がある」
テトラ「伝言? あたしに?」
テトラちゃんは首をかしげる。
ミルカ「テトラに《カード》を渡すとき、直線とは何かと言い忘れたそうだ」
テトラ「直線とは何か……哲学的ですね」
ミルカ「哲学じゃない。数学だ」
テトラ「直線というのは、こう……何と言いますか。まっすぐな線で——」
僕「なるほど!!」
テトラ「きゃあ!」
僕の中で急激に、ベクトルが《九点平面》とつながって、 声を上げてしまった。
僕「《いわば直線》も作れるよ! 《いわば平行四辺形》や《いわば平行》だけじゃない!
さっきは、
テトラ「直線を——定義する?」
ミルカ「ふうん……直線のパラメータ表示?」
僕「そうそう!」
直線のパラメータ表示
点
テトラ「はあ……」
僕「通常の平面ベクトルや空間ベクトルの場合は、パラメータ
テトラちゃんはしばらく指で空中に何かを描いて考えていた。 たぶん、頭の中のベクトルをたどっているんだな。
テトラ「なるほど、確かにそれは直線です……それで?」
僕「それでね、僕たちの《九点平面》においても、 この《直線のパラメータ表示》を使って直線というものを考えられるんだ。 《九点平面》にはベクトルがある。ベクトルの和もスカラー倍もある。 だから、まったく同じ定義で《いわば直線》が定義できる!」
ミルカ「《いわば直線》というか、直線そのものだな」
テトラ「あの……でも、さきほどからすでに四点
四点
僕「うん、それはそうなんだけど、ここで使っていた直線は補助的なものに過ぎないよ。 僕たちの《九点平面》にはたった九個の点しかないと考えるなら、 点と点を結ぶ途中には何もないんだから」
テトラ「ははあ……少しわかりました。
つまり、四辺形
僕「そうだね。
《九点平面》の世界では、四辺形
ミルカ「それは違うな」
僕「え、どうして?」
ミルカ「《九点平面》でも《辺》はある。
四辺形
四辺形
四辺形
僕「ああ、確かにそうだね」
ミルカ「もちろん、《九点平面》にどんな概念を構築するのも自由だから、 区別できないとしても構わない。だが《四辺形》と呼ぶからには《辺》という概念もほしくなる」
僕「うーん……なるほどねえ、それは《四辺形》や《辺》という名前を与える妥当性に関わる話だね。 数学というより国語かな」
そこで、テトラちゃんが手を挙げた。
テトラ「ちょっと整理させてください」
僕「そうだね。《平行四辺形》《平行》《直線》《四辺形》……」
テトラ「思うんですけど、
点
点
ミルカ「いえる」
僕「いえるね。見た目ではもちろんいえるけど、
ベクトルで考えてもいえるかな……うん、いえるね。
《点
ミルカ「点
テトラ「割り算? 《九点平面》で割り算ってどうするんですか?」
ミルカ「たとえば《
テトラ「ははあ……ということは、
僕「三点
テトラ「はい。これは見た目と一致しますね」
ミルカ「見た目と違う場合も考えよう。点
問題2
点
テトラ「ああ、なるほど。点
僕「おお、早い!」
テトラ「だってそうですよ。点
点
僕「《影武者》は本人とは違うよね」
ミルカ「《影武者》を本人と同一視するのはまずいだろう」
テトラ「かっ、《影武者》はたとえですようっ!」
僕とミルカさんが同時にツッコんだので、テトラちゃんはあわてて反論した。
僕「ごめんごめん。ベクトルでもちゃんと確かめられるね。
《点
テトラ「はい。直線
解答2
点
テトラ「《九点平面》で、三点
テトラちゃんが描いた平行線
僕「なるほどね。だったら、こんな平行線でもいいよね」
僕が描いた平行線
ミルカ「ふうむ。座標平面で考えると、テトラが描いた平行線の傾きは
僕「おお!」
テトラ「ほんとうですね!」
ミルカ「さっきテトラは、三点
テトラ「はい。《九点平面》で考えると、そうですよね」
僕「ベクトルで確かめたよ」
ミルカ「もちろんまちがいではない。私は
僕「うん。僕もそう思う」
テトラ「はい……それはあたしもわかっていると思います。 この世界には九個の点しかないわけですから」
ミルカ「《九点平面》の直線の数は有限だな」
僕「確かに……」
テトラ「直線の数が有限の世界って、楽しいですね。ミニチュアの世界みたいです。 《九点平面》の直線の数って、全部でいくつあるんでしょう……数えてみますっ!」
問題3(《九点平面》の直線の数)
《九点平面》の直線はいくつあるか。
テトラちゃんは、ノートにいきなり列挙し始めた。
いや、これは、ちゃんと考えないと《もれなく、だぶりなく》数えるのは難しいぞ……
僕「できた。意外と簡単だったなあ」
テトラ「あたしもできましたっ! 意外と簡単ですね」
ミルカ「それで?」
僕「《九点平面》の直線は全部で
僕の解答
ミルカ「ふうん……」
テトラ「違います。先輩、三つ足りませんよ?」
僕「え?」
テトラ「先輩は、垂直線を忘れてます!」
僕「ああ……本当だ!」
解答3(《九点平面》の直線の数)
《九点平面》の直線は全部で
僕「僕は、三点のうち、二点決めればもう一点が決まると考えたんだよ。
テトラ「いえいえ」
ミルカ「テトラのおかげで《九点平面》に存在する
テトラ「何か、特別な鑑賞ポイントがあるんでしょうか?」
ミルカ「たとえば、異なる二直線をピックアップすれば、 《平行ではない二直線は一点で交わる》ということが見てとれる。 もちろん証明もできるわけだが、見るのは楽しい」
僕「なるほど、確かにね!」
テトラ「《九点平面》の中に、ミニチュアの幾何学があるんですねえ……」
二直線が一点で交わるようす
テトラ「ふと思ったんですけれど、
《九点平面》は
ミルカ「《十六点平面》にすると、《九点平面》とはまったく違う世界が生まれそうだな」
僕「せっかくのミニチュア感が薄れるからだね」
ミルカ「そういう理由ではない。《
テトラ「素数? ベクトルに素数が関係するんですか?」
瑞谷先生「下校時間です」
下校時間になってしまった。
でも、僕たちの探求は終わらない。
たった
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(2024年11月15日)