元過労暗殺者、平和だが平和じゃない世界へとやってきた 作:シャオロウェをすこれ
「光がっ......」
あの鏡に石を当て込んでから、どうしてなのかは分からないが突然目を覆いつくさんばかりの光が溢れ出してきた。あまりにも突然だったのでどうすることもできず、ただただその場に立ってそれになすがままになるしかなかった。
クソッたれ、どうなってやがる......って、はぁ......?
「ここどこだよ......!?」
眩い閃光から目を開けた先には、先ほどまでいたはずのエンジニア部管轄の部屋とは全く違う、野外の場所だった。それに先ほどまでいたはずの白石部長やカヤ防衛室長も誰もいない。建物が並んでいるが、これは......見覚えのある景色だ、まさか......都市の23区......?
だとしたら不味い、今が何時か分からないが裏路地の夜だったら掃除屋共がすぐに来るぞ。それに23区は都市でもおそらく最悪レベルで治安が悪い。私はともかく、もしカヤ防衛室長までここに来ているんだったら本気で不味いぞ......!手負いで動けない状況なんだから、早く見つけ出さないとやばい......!23区だと身ぐるみはがされて性のはけ口にされたら上出来、最悪踊り食いで食われてもおかしくない......!
とりあえず刀を抜いて常に臨戦態勢に、それから捜索を始めないと。でも23区なんて幼少期のころに暮らしていた程度しかないから土地勘がほぼないぞ......こんな状況で特定人物を情報なしで探せとか無茶もいいところだろうし、第一そもそも近くにいるとも限らないし......ええい!クソが!!
「無事でいてくれることを祈るしかないか......!」
ひとまず適当に駆け出してあちこちを探してみる。幸いなこと......いや、情報が聞きだせない分不便かもしれないが、ここらへんには人気が無い。適当な建物の中を虱潰しに探していくことが出来る。だけど......いないな?気配もしないし......本当に近くにいないのか?
セブンかツヴァイのフィクサーでも近くにいれば、さっきも思ったが情報を引き出せるかもしれないのに......ツヴァイorセブンのフィクサーは基本的にマトモな奴が多いから、割と教えてくれるんだけどな.......まぁ、ないものねだりしてもしょうがないか......マジで速くしないとな。
しっかし、本当に手がかりが見当たらないぞ?ただでさえ時間は刻一刻を要するというのに、こんなんじゃ......いや、私の心配が杞憂で、私が戻ってきただけってならそれはそれで別にいいんだがな......でもこういう時の悪い予感は当たるんだ、最悪の事態を想定して動くのが常だろう......お?
「あれは......」
暗闇の中にひっそりと輝く、黄色い花びら。何枚か赤く濡れているが数を伴って落ちているそれは、少なくともこの周囲に明かりがない視界にはとてもよく目立つものだった。あれは......多分、イサンさんがあの時に身に着けていた、可能性の実体とやらについていた花びらに違いない。
つまり、あれを辿っていけば......多分イサンさんに合流できるはずだ。血のような赤い液体に何枚か濡れていることが不安だが......いんや、どんな結果になろうとも行くしか選択肢はあるまいか......
花びらを辿っていくと、明かりのついている小さな小屋へと辿り着いた。中からも人の気配がするので、もしいるならおそらくここで間違いないだろう。ノック......はする必要ないな、そのまま扉を開けるか。でも、念のため警戒はして......いくぞ!
「!?......そなたなりか。血はめでたからぬ......部長の血が滲み揺れたりん。そなたも手伝ってくれはしないだろうか。」
中にはさっきと同じ黄色い花を纏ったイサンさんと、負傷し意識がないのか血を流している白石部長がいた。怪我の具合を見るに、命に別状はなさそうな怪我だが......しかし一体、これを誰にやられたんだ?というかそもそも、何故......いや、考えている場合じゃないか。とりあえず処置だな。
「ひとまず包帯程度しかありませんがそれを使いましょう。ですが、この抉られたかのような傷は......」
「がぁすますくのようなものをつけた者どもに傷つけられし。鉤爪が迫る中、私たちは逃げゆくことしかできず。」
「がぁすますく......ガスマスクですか。......ガスマスクですって?この夜に?......まさか。」
『429......6105......』
『114......514......19198......10......』
『0120......398......8......831......』
「......冗談じゃないぞ。逃げますよ!今すぐ!ウタハさんは私が抱えていきますから!」
「あっ、何事か......」
「説明している場合じゃありません!死にたくないなら逃げてください!!」
次の瞬間、長年使われていなかったのかほとんど吹き抜けのようなものと化した壁から次々と掃除屋が入ってくる。後ろに何が入っているのか分からない赤色の液体タンクを背負いながら、相変わらず意味の分からない言葉を発しているが......こいつらがいるってことは、外はもう......
「クソッ、案の定だ!」
チラッと後ろを見た先には、場所という場所を全て埋め尽くした掃除屋の軍団が大勢、私たちの後ろにいた。そして裏路地の『ゴミ掃除』を行う奴らは、私達という新たに出てきた『
ひとまず私はウタハさんを抱えて、時々後ろにいるイサンさんの様子を見つつ迫りくる掃除屋たちから逃げ続ける。どこか、どこか安全な場所、掃除屋たちが入ってこれない、安全な屋内じゃないとダメだ。かといって入るために扉を壊そうもんならそこから掃除屋に入られてジエンドだし、そうだな、理想は地下がいいんだが......そんなもん都合よく見つからないよなぁ!
「イサンさん!次の突き当りを右に!」
「承知......せり......ぜぇ......はぁ......」
......不味いなぁ、イサンさん相当疲弊してるぞあれ。ダメだ、このままじゃ私が良くてもイサンさんが死んでしまう......でもかといって、イサンさんを先に行かせても何か状況を打破できる訳でもないし、そうしたら私が囮役をすることになるのだろうがそうなった場合ウタハさんが危ない。疲弊状態のイサンさんにウタハさんを抱えさせるわけにはいかないし.......
「っ!危な......」
左の路地から出てきた掃除屋を咄嗟に斬り伏せる。掃除屋が単体で行動することはない。一人......一人?まぁいいや、とにかく一人いたら十人はいると思えって言葉がある。つまり、ここの路地から掃除屋が出てきたということは、後ろにも大量に控えているということを指す。
段々と追い詰められていっているのが手に取るようにわかる。盤面的にも大分詰みの状況と言えるし......どこか、本当にどこかないのか......!?......待てよ、あれは......?
......脳を象ったあのマーク。ちょっと気持ち悪いと思っていたが、あれは......旧L社支部か!図書館が都市に突き出したのとは真逆に、半ば地面に埋まっているが......ちょうどいい、あそこなら掃除屋の追撃をかわせるかもしれない!あそこに行くしか、というかそれ以外選択肢がない!
「イサンさん!こっちです!こっちに来てください!」
「はぁ......はぁ......しょう......ち......」
すれ違いざまにイサンさんにウタハさんを渡して、イサンさんの後ろにいる掃除屋を斬り裂く。正面、右、左、上......あちらこちらからやってくる掃除屋の数は、装着している黒色の殻と夜の闇が同化して無尽蔵にいるように思える。いや、実際そうなんだが......ええい、とにかくイサンさんが地下に逃げる時間稼ぎはした、私も逃げるぞ!
「フンッ!!」
L社支部の入り口にある適当な障害物を蹴り飛ばして、掃除屋共が入ってこられないように入り口を塞ぐ。そうしたら幸いというべきか、蹴ったところから天井が崩れ落ちて壁のようになって道を塞いでくれた。まぁ、帰るとき苦労するかもしれないが......その時はその時だ、今は難を逃れることを考えたらいいか。ひとまず今は......難をしのげたことを幸運に思おう。
「イサンさんは......いたいた。イサンさ~ん!!」
「!そなたは......無事なりか。安らぎを取り戻したり......これより心が落ち着きはなし。」
「っ......あぁ、シグレさん......迷惑を......かけたね......」
「ウタハさん......」
刀を下げてイサンさんの方に目を向けると、ウタハさんも目を覚ましてくれていた。よかった、とりあえず起きてくれたみたいだ......怪我こそしているけれど、まぁ大丈夫なようにも見えるし......安心はできないが、ひとまずは安心......意味不明だな?ああ、もういいや......掃除屋との追いかけっこはもう勘弁だ.......久しぶりだけども.......
さて、L社支部にどうにかして逃げ込んだはいいが......酷い有様だな、これ。何があったんだ?L社はあのクソみたいな光をまき散らして白夜・黒昼を招いたこと以外は健全なエネルギー企業だったはずだが......この有様は、ネズミ共が荒らしに入っただけでは説明付かないな......どうなってやがる......と、待てよ、これは?
「刀の帯......見覚えのあるものだな。黒雲会のものと酷似しているように見えるな......」
銀色に塗装された、しっかりとした刀を結びつけるための帯。刻印された印からして、これは黒雲会のもののようだが......どうして、黒雲会がここに?エンケファリンでもパクりに来たのか?L社支部が崩壊したからと言って......まぁ確かに、エンケファリンは高価だ、盗んで売れば利益は相当だろうが......
しっかしそうなると不味いな、今もなおこの下には黒雲会がいるってことか?黒雲会が大勢ここを荒らしに入ったから、こうも荒れていると......?ああ、もう、本当に......!なんでこんな面倒なことばかり起きるんだよ!カヤ防衛室長は......無事だといいが。裏路地の夜に飲み込まれていないことを祈るしかないな......
とりあえずここにいてもどうしようもないし、ウタハさんがどこか安全に休める場所が必要だ。L社が崩壊してからかなりの時間は経っているし中もこんなにもボロボロな様子だが、まだどこかに一つ二つくらい安静にできる場所というか部屋はあるだろう。そこを探しに行かないとな......
「イサンさん、ウタハさんを安静に出来る場所が必要です。下に行けばあるかもしれないので、とりあえず私がまず下に行けそうな場所を探してきます。イサンさんとウタハさんはここで待っていてください。」
「承知せり、部長、それでよろしいか。」
「......私の為に、すまないね......」
よし、ひとまず探索の許可が下りてよかった。それじゃあ、下に行くための道を探しに行くとしようか。見た感じ大分広いみたいだし......それなりに時間が掛かりそうだが、出るだけ早くしないとな。
瓦礫を踏み越えて、とりあえず奥の方へと進んでみる。道中壁に書いてあった文字を見ると、そこには『コントロールチーム』と書いてあったので、おそらくここで全体の指揮を執っていたのだろう。しかしL社が崩壊して、L社支部もこう埋まってしまった訳だが......もしここで指揮を執ってる指揮官がいたら、一体そいつは何をしてたんだろうな?
そうどうでもいいことを考えていると、ここの奥にある部屋から何人か人の気配がしてきた。誰であろうと見られるのは不味いな、気配を消して近づいてみるか。丁度いい感じに扉の隙間から観察できそうだし、ここから対象観察といこう。
『おい......ここのエレベーターはまだ動かねぇのかよ?』
『チッ、急かしやがって......んなことくらいちったぁ我慢しろや。今あいつが社員証を取りに行っているから、もう少しすれば動くようになるはずだ。』
『はぁ、それもそうか......ったく、なんでL社はこんな面倒くさいエレベーターにしたんだよ......いちいち動かすのに社員証による認証が必要とか、お高い翼さんはよく考えるもんだ。』
『あぁ~、モクが吸いてぇな。最近エンケファリンを染み込ませたモクが高くてな......シケモクばっかなんだよ。はぁ......』
......ふむ。どうでもいい会話だったが、エレベーターを動かすのに社員証が必要というのはいい情報を知れたな。それに、もうすぐ誰かがここに社員証を持ってくると......よし、決めた。そいつから社員証を奪って、下に移動しよう。下手にこっちを知られるのも面倒だし、こいつらも始末するか。
音を出さないように、慎重かつ迅速に背後へと近づく。そして、刀の切っ先が相手の頭に触れるラインまで行って......ここだな。
「!?」
「死ね。」
座っていた黒雲会組員を頭から胴体にかけて二枚切りにし、そのままの流れで隣の対象も横に薙がすように首を斬る。キヴォトスに来てからそれなりの時が経ったからか、こうして人を斬るのはなんだか久々だ。あっちは斬っても斬れないからな。まぁ、好き好んで殺したいわけではないがな。
むしろあっちの方がよっぽど斬るのに抵抗が無くていいというか......おっと、どうやら鴨が社員証を背負ってやってきてくれたようだ。
「アニキ~?社員証持って来やしたが......アニ」
「......うん、これっぽいな。」
扉の前にやってきた舎弟らしき人物を斬り裂き、持っていた社員証であろう物を奪う。瓦礫に埋まっていたのか、大分土汚れとそれから争いの痕であろう、血痕がついているが......認証の為に必要なID部分は汚れていない、これなら大丈夫だ。よし、それじゃあ戻ろう。入り口に黒雲会がいたら不味い......いや、というか多分来てるか!早く戻るぞ!
「.............?」
『咲かせん。』
『は、花が!纏わりついて!』
『あ......ぁ......』
『花に......委ねる......美しい......』
走って戻ってきたその先には、身体ほどのサイズに咲き誇った黄色い花と枝に絡まれた黒雲会の組員たちが大量にいた。......はい?どういう状況?なんとなくというか現在進行形でイサンさんがこれをしているのは理解できるが......何が起こっているんだ一体?
「え、イサンさん、これは......」
「あぁ、そなたなりか。少々待たれよ、今......花が咲き誇らん。」
「さぁ、咲き誇り給え。今この瞬間に、ぱっと開花せよ。」
「......これは......凄まじい......」
イサンさんが手に持つ花の扇のようなものを一閃した瞬間、枝に絡まっていた組員たちが一瞬で花と化してどこかに消えていってしまった。残ったのは、地面に落ちた赤色交じりの黄色い花だけ。最初からそこになかったかのように、跡形もなく......なんて能力なんだ、一体......
「人とは時が来ば、枯れる運命......かの者たちは、それが今だっただけゆえに。」
「......そうですか。まぁ、何はともあれ無事でよかったです。下へ行く道のりを見つけました、行きましょう。」
「承知。」
イサンさんとウタハさんと共に、先ほどまでいたエレベーターの場所まで再び戻る。本当に、目的の場所が見つかればいいんだが......あ、待てよ。
そういえば、死体放置したままだな......イサンさんとウタハさん、大丈夫か......?不安だし、片づけてから行くか......
ちょっと短いのは許して......許して.....
あ、よかったら感想と高評価だけよろしくお願いします.....
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