判例タイムズ1523号で紹介された事例です(東京地裁令和6年2月28日判決)。
本件は、被告(労働組合法11条によって、法適合組合として労働委員会の証明を受け主たる事務所の所在地において登記して法人となった労働組合)の組合員であると主張する原告(数度の権利停止処分を経て除名された。)が、被告の平成27年から令和5年までの総会決議について、いずれも瑕疵がある旨主張して、被告に対し、主位的に不存在であることの確認を、予備的に無効であることの確認を求めた事案です。
原告が不存在の確認を求めた総会決議では執行委員長の選任などが決議されていましたが、原告は自ら除名した総会決議は招集権限を有さない者により招集された総会による決議であることにより不存在であると主張し、判決はこうした原告の主張をすべて認めました。
(まず、最初に執行委員長の選任が決議された第一次総会決議につき)
・代議員の選任のために各支部における直接無記名投票が実施されておらず、被告は立候補者がいないものとして被告代表者らにおいて特定の組合員に声掛けをして代議員になってもらい、各支部において代議員の選任のために立候補者を募る手続さえも行われていないこと、そのため、原告は、代議員に立候補する意思があったにもかかわらずその機会がなく立候補できなかったこと、他方で、Aは、代議員に立候補していないにもかかわらず被告から説明もなく案内書及び代議員証の郵送を受けたことから代議員として本件第1次総会に出席したことが認められる。
・これらの事実によれば、本件第1次総会においては、代議員の選任手続について選挙大会規定10条に反し直接無記名投票を行わないといった瑕疵があったということができる。また、Aが代議員になった状況からすると、少なくともAの所属している支部においては、代議員の選任に同支部の組合員の多数の意思が反映されていたとはいえないし、被告代表者が、活発に組合活動をしていた人や大会に出席してくれそうな人等に声がけをしていたと供述していることからして多くの支部において同様の状況であったと推認されるのであり、各支部において直接無記名投票と同視できる程度の民主的手続によって代議員が選任されたということもできない。
・労働組合においては、その規約に役員が組合員の直接無記名投票により選挙されること又は直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されることを定める規約を含むことが必要とされており(労働組合法5条2項5号)、代議員が直接無記名投票により選出されることは、組合民主主義の確保のため重要なものと解される。本件のような選挙手続によって選任された代議員による決議は組合員の多数の意思を反映したものということはできず、上記に照らし、その瑕疵は重大であり、もはや法的に総会決議と評価することはできず不存在というべきである。
労働組合法
(労働組合として設立されたものの取扱)
第5条2項 労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。
五 単位労働組合にあつては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。
そして、その後なされた決議についても、「本件第1次総会決議は不存在であるから、当該決議において選任された役員によって構成される執行委員会は正当な執行委員会ではなく、その後に招集された大会は、法的には大会の招集権限を有する(組合規約12条1項)執行委員会ではないものが招集したものとして、組合員の全員が出席して開催された等の特段の事情がない限り、その大会において行われた決議は不存在は評価される(株主総会について、最高裁判所第三小法廷平成2年4月17日判決民集44巻3号526頁参照)」として、連鎖的にすべての決議が不存在であったと評価しています。
・・・きちんと手続きを履践していなければ怖いことになるということですね。