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第50回衆院選(2024年)情勢報道集約の簡単な検証

 第50回衆院選 情勢報道集約では、各社が行った選挙情勢の報道を一覧にして評価してきました。

 この情勢報道集約は選挙予測というよりも、「報道各社が選挙情勢をどのように記述したか」という事実の提示を目的としたものです。できるだけ元の報道に手を加えずに、簡単なやり方で要約することを通じて、接戦の選挙区をみつけたり、食い違う情勢報道をあぶりだすことを狙いとしています。したがって特定の報道が他と大きく食い違うようなときも、あえて除外するのではなく平等に扱い、食い違っていることを可視化します。

 他方で情勢報道集約の公開の仕方は、事前に定めたガイドラインに従って、報道が総じて優勢としている候補に序列をつけて上段から並べるというやり方をとっています。新たな情勢報道が出るたびに序列は並べ替えられます。そこに選挙予測としての色合いがつくことは否定できません。

 それがどれくらい妥当であったのかという確認は必要です。

当選者の整合性

 今回の選挙で各社が一番手で報じた候補者が、289の小選挙区のうち何勝し、また何敗したのかということを、政治学者の菅原琢氏が集計されています。なおこのような集計は、参照した新聞の「版」や、紙面かWebかといったことなどによってやや異なる結果を得る場合がありえます。

情勢報道一番手予想勝敗
 読売序盤    247勝 42敗
 読売終盤    255勝 34敗
 日経序盤    244勝 45敗
 日経終盤    244勝 45敗
 毎日序盤    249勝 40敗
 毎日終盤    258勝 31敗
 朝日         256勝 33敗
 産経         251勝 38敗
 共同・地方紙終盤 258勝 31敗
 時事       251勝 38敗

国会議員白書 2024年衆議院議員選挙 選挙区情勢(結果予測)まとめ

 この書き方にならえば、情勢報道集約の最後の更新で最上段につけた候補は 262勝27敗となりました。前回の第49回衆院選(2021年)のときが261勝28敗だったので、今回も各社を総合することで安定した精度を出せたと言えるように思います。もちろんそれは各社が膨大な手間とコストをかけて調査や取材を行っているからこそなので、そうした方々の努力に敬意を払わないわけにはいきません。


上位2候補の整合性

 選挙では当落線上にいる候補者に入れると一票が有効に働く確率が高まるので、上位2候補をさがそうとして情勢報道集約を参考にする方もいます。

 選挙結果を確認したところ、どちらが当選しどちらが落選したかということを問わないならば、上位2候補を正しく指し示せていたのは277選挙区で、指し示せなかったのは12選挙区でした。


産経新聞の影響

 今回の第50回衆院選(2024年)では、産経新聞が強い表現を多用したため、情勢報道集約の序列が影響を受けました。

 一例として以下に挙げる産経の記述は、その他の各社とは大きく食い違うものでした。

●北海道6区
「6区は自民東とつばぜり合いをみせていた立民西川が支持層を固めて大きくリードする」(10月23日産経新聞13版6面)

●神奈川6区
「6区は自民古川が大きく先行する展開」(10月23日産経新聞13版7面)

●和歌山1区
「1区は維新林が大きくリードし、自民山本が追う」(10月24日産経新聞13版6面)

 ここで産経が「大きくリード」「大きく先行」と記述した3人は、いずれも当選がならなかった候補者です。

 今回の産経は、強い表現を振り回しすぎていて違和感を覚えました。「先行」や「リード」といったプレーンな表現にとどまるのではなく、あえて「大きく」などと強調した候補が何人も落選してしまうと、読者を翻弄することになりかねません。言葉の使い方に再考が求められるのではないでしょうか。


選挙予測と事実の提示のバランス

 先に挙げた3つの小選挙区では、産経の情勢報道を反映したことによって情勢報道集約の序列が選挙結果と合わなくなっています。選挙期間中から、この食い違い方は問題になると判断していました。しかし情勢報道集約としては、それでも反映することに意味があると考えていました。

 もしも選挙予測に特化するのであれば、強い表現を多く用いた新聞ほど「軽く」評価するウエイトをかけることによってその影響を打ち消すようなことが可能です。食い違うものにペナルティをかけることもありえると思います。統計的な予測を行うこともできるでしょう。けれどもそうした手を加えれば加えるほど、元の報道を離れて不透明になっていくことがマイナスとしてあります。

 情勢報道集約シンプルな事実の提示に重点を置いているからこそ、多くの人に利用してもらえているように思います。だから予測に特化するようになると情勢報道集約の意味は小さくなってしまうのです。

 ぼくは他方で得票数の推定なども行っていますが、そうしたものも含めて、予測ではなく「今がどうなのか」という基準を作るのを目的としています。個人的な思いも含めて言えば、未来がどうなるのかは常にこれから何をするかにかかっているので、それを決めつけていくことには抵抗があります。あくまで今がどういう感じで、どこまできているのかということを確認することに意味があるように思います。ですから現時点では、予測に重点をずらすのはあまり良いとは考えていません。

 そのうえで、情勢報道集約を予測に利用する方には、最上段につけた候補を見るだけでなく、各社の整合性や食い違い、序盤から終盤への流れなどを観察してもらえればと思います。そうすれば270くらいの小選挙区の形勢は見極められるようになっています。


最終盤は野党にシフト

 情勢報道集約で最上段につけた候補のうち、262人が当選し、27人が落選したことはすでに触れました。この27人の当落はどのように動いたのでしょうか。

 集計したところ、最上段にいた与党候補が落選し、野党候補が当選したのが17件を占めました。これを「与党→野党17」と表記することにすると、それぞれの動きはこうなります。

  与党 → 野党 17
  野党 → 与党 9
  野党 → 野党 1

 なおここでは簡単にするために、萩生田光一氏、三ツ林裕己氏、広瀬建氏の3名は無所属自民系として与党側に、中村勇太氏を無所属野党系として野党側に集計しています。

 政党別に細かく書くと次のようになります。

  自民 → 立憲9
  自民 → 維新3
  自民 → 国民2
  自民 → 無所属野党系1
  公明 → 国民1
  無所属自民系 → 国民1

  立憲 → 自民 6
  維新 → 自民1
  立憲 → 無所属自民系2

  立憲 → 国民1

 与党から野党に返ったところが多く、野党から与党に返ったところが少ないことからは、次のことが考えられそうです。

①情勢調査が与党の劣勢度を総じて過小評価していた可能性。

②選挙期間中、刻々と与党が劣勢になっていったため、情勢報道集約の評価が追いつかなかった可能性。

③情勢報道が出終わってから投票日までの間に形勢が野党側に傾いていた可能性。

 こうしたことは今後の検証に値すると思います。


情勢報道集約(当選マークつき)

 最後に、第50回衆院選 情勢報道集約について、最も左の列に当選者を示す[当]の印をつけたものを掲載しておきます。

北海道

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青森県

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岩手県

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宮城県

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秋田県

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山形県

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福島県

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茨城県

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栃木県

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群馬県

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埼玉県

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千葉県

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東京都

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神奈川県

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新潟県

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富山県

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石川県

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福井県

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山梨県

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長野県

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岐阜県

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静岡県

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愛知県

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三重県

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滋賀県

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京都府

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大阪府

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兵庫県

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奈良県

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和歌山県

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鳥取県

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島根県

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岡山県

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広島県

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山口県

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徳島県

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香川県

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愛媛県

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高知県

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福岡県

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佐賀県

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長崎県

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熊本県

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大分県

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宮崎県

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鹿児島県

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沖縄県

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 以上です。お読みいただきありがとうございました。

 やることがいっぱいあって、まだ色々なところに手が回らない状況ですが、一つ一つ対応しようとがんばっているところです。

2024.11.15 三春充希

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  • 11本

コメント

3
福田寿史
福田寿史

各社の選挙報道の信頼度を考えるのに大変参考になりました。

SAIBA_KAZUTO
SAIBA_KAZUTO

いつも 貴重な情報を ありがとうございます
落選した2位の候補の「惜敗率」を(集約一覧に)添えて頂けると ありがたいです
体調にご留意ください

may-ko
may-ko

いつもありがとうございます!興味深く拝見しています。

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未来社会プロジェクト代表。様々な統計をもとに世論や選挙、社会問題を研究しています。著書に『武器としての世論調査』。 ツイッター:https://twitter.com/miraisyakai フェイスブック:https://www.facebook.com/miraisyakai
第50回衆院選(2024年)情勢報道集約の簡単な検証|三春充希(はる) ⭐未来社会プロジェクト
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