日本の議論

「慰安婦」「南京事件」「百人斬り」、日教組偏向教材こんなに… 文科省40年ぶり通知で一掃できるか

旧日本軍による「中国人皆殺し」を話し合おう

日教組傘下の大分県教組では平成13年、旧日本軍をことさら悪く描く自虐史観を小中学生に植え付けるような冬休み用教材を作成、使用していたことが発覚した。小学4年用教材では「あくまは長ぐつをはいてきた」という物語を掲載。旧日本軍の将兵が写真を撮ってあげると偽って中国の村民を広場に集め、老人から子供まで機関銃で皆殺しにするというストーリー。「なぜ、長ぐつをはいたあくま(旧日本軍)は、フウちゃん(主人公)たちを殺そうとしたのでしょう。みんなで話し合ってみましょう」との課題が与えられていた。

中学2年用では、「日本軍の中国侵略」と「加害をみつめて」をテーマに、南京事件などについて、被害者数を盛り込み詳細に説明。旧日本軍によって首を切られる寸前の中国人の写真や南京で生き埋めにされる中国人の写真も掲載。この2枚の写真は「軍人のポーズや服装、影の位置などが不自然」として、信憑性について議論が分かれているものだった。ある児童は「日本人がこんなに悪いことをするとは思わなかった」と感想を記していた。

「日本軍『慰安婦』は過激な教材か」と問題提起

日教組が毎年行う教育研究全国集会(教研集会)では、不適切な教材を使った偏向的な授業が武勇伝のように発表されることも少なくない。

24年には、日中戦争の南京戦で報道された日本軍の百人斬(ぎ)りについて、新聞記事などを使い、事実と断定して中学生に教える教育実践が報告された。

百人斬りは昭和12年、東京日日新聞(現毎日新聞)に掲載され、旧日本軍の元将校2人が、どちらが先に日本刀で百人斬るか競争を始めたという内容だが、その真偽をめぐっては、報道に立ち会った元カメラマンが「戦意高揚のための記事で、あり得ない話だ」と証言したほか、毎日新聞が平成元年に発行した「昭和史全記録」でも「事実無根」と自社の報道を否定。さらに両将校の遺族による名誉毀損訴訟でも東京高裁が18年、「甚だ疑わしいものと考えるのが合理的」と指摘している。

ところが、長崎県の中学の男性教諭は「加害の事実」を教える平和学習として、百人斬りの新聞記事や写真を生徒たちに見せ、「日本は中国に攻め入って、たくさんの中国人を殺しました」「戦争になったら、相手国の人をたくさん殺せば殺すほど勲章がもらえてたたえられるんです」「だから殺されたのは兵士だけでなく、一般のお年寄りや女性、子供たちもです」と語りかけていた。

25年の教研集会では、慰安婦について、日本政府の見解に反する主張を展開するリポートもみられた。日本政府は19年に慰安婦について、「いわゆる強制連行を直接示す資料はない」とする答弁書を閣議決定し、教科書検定でも軍や官憲による強制があったとする記述は認められていない。

現行のすべての中学教科書には、慰安婦の記述すらないが、埼玉県の中学の男性教諭は平和教育分科会で「日本軍『慰安婦』は過激な教材か」と問題提起。新聞投稿を根拠に「日本軍の隠滅工作」により強制連行の証拠がないと主張した。

教諭は「今の若い教員たちは中立という言葉を使い、『慰安婦は否定されているからだめだ』ということで授業でやらない。それでいいのか」と訴えた。

朝日新聞が26年8月に、強制連行説の最大の論拠だった証言記事を誤報だと認める前の話だが、新聞への読者投稿を根拠としている時点で不適切だ。

「萎縮せず、積極的に指導効果高い教材使用を」

今回の通知では、多様な見方や考え方のできる事柄や未確定な事柄を取り上げる場合には「特定の事柄を強調しすぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、特定の見方や考え方に偏った取り扱いとならないこと」と、留意範囲を幅広く設定した。その上で、教育委員会や校長に管理の徹底を求めている。

一方、指導効果の高い補助教材も数多く作成、使用されている実態があるのも事実だ。特に、現段階では教科書がない道徳については、教員が苦労しながら子供たちの心に響く教材を自作し、使用しているケースも少なくない。このため、通知では、「教育的見地からみて有益適切な補助教材を有効に活用することが重要」とも明記した。

文科省幹部は「今回の通知で一番懸念されるのは、教員が萎縮して補助教材を自ら作成、使用しなくなることだ」とした上で、「今回の通知を機に、教職のプロとして、指導効果の高い補助教材を積極的に作成、使用していってもらいたい」と話している。

会員限定記事

会員サービス詳細