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#625 「学校法人 関西大学事件」大阪地裁

2024年11月13日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第625号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【学校法人 関西大学(以下、K大学)事件・大阪地裁判決】(2024年1月11日)

▽ <主な争点>
研究活動上の不正行為(盗用)による停職3ヵ月の懲戒処分の有効性など

1.事件の概要は?

XはK大学との間で雇用契約を締結した大学教授であるところ、同大学から2022年4月28日付で研究活動上の不正行為(盗用)を理由に停職3ヵ月の懲戒処分(本件懲戒処分)を受けたほか、同年5月11日付で所属学部の教授会による副学部長解任処分および所属大学院研究科の研究科委員会による科目担当を当分の間認めない処分(本件教授会等処分)を受けた。

本件は、Xが本件懲戒処分および本件教授会等処分は無効であると主張して、K大学に対し、次の各請求を求めたもの。
(1)本件懲戒処分が無効であることの確認
(2)雇用契約に基づき、合計425万1805円の賃金(本件懲戒処分により支給が停止または減額された賃金および期末手当ならびに本件教授会等処分により支給が停止された2022年9月分以前の各手当の合計額)およびこれらに対する遅延損害金の支払
(3)雇用契約に基づき、2022年10月分から2024年3月分までの月額6万5700円の賃金(本件教授会等処分により支給が停止された各手当の合計額)およびこれらに対する遅延損害金の支払
(4)不法行為(無効な本件懲戒処分および本件教授会等処分)による損害賠償請求権に基づき、550万円(慰謝料500万円および弁護士費用50万円)およびこれに対する遅延損害金の支払

2.前提事実および事件の経過は?

<K大学およびXについて>

★ K大学は、大学のほか、大学院、高等学校、中学校等を運営する学校法人である。

★ Xは、K大学との間で雇用契約を締結した、○○学部(以下「本件学部」という)の教授であり、2016年10月1日から2020年9月30日まで大学副学長を務め、2020年10月1日から2022年9月30日までの任期で本件学部副学部長を務めていたが、2022年5月11日、同副学部長を解任された。

★ Aは、2017年4月から2021年3月まで、K大学の職員であったが、2018年4月から職員研修制度により同大学院○○研究科(以下「本件研究科」という)博士課程前期課程の院生となった者である。


<本件懲戒処分、本件教授会等処分に至った経緯等について>

▼ Aの指導教員であったXは2019年9月末頃以降、Aの「日本の高等教育における国際化戦略の課題」と題する修士論文(以下「先行論文」という)作成を指導した。Aは同時期から2020年1月頃までの間に同論文を作成し、本件研究科に提出した。

▼ その後、XはK大経済論集に掲載する論文募集に執筆申込みを行い、2020年7月末までに「WTO設立以降の教育サービスの国際化と日本の高等教育」と題する論文(以下「本件論文」という)を同大経済学会に提出した。

★ 本件論文の約70%が先行論文の表現と同一であったが、先行論文を引用した旨の表示はなかった。なお、本件論文の提出前にXがAに対し、同論文の内容を確認する機会を与えたことはない。

▼ 2021年3月、Xに不正行為(論文の盗用)の疑いがあるとの匿名の告発が大学の学長室にあった。

▼ 大学側はその告発内容に関する予備調査を行うこととし、予備調査委員会を設置した。同委員会は同月、学長に対し、本件論文が先行論文を「盗用」した疑いが濃厚である旨の内容の予備調査報告書を提出した。

▼ その結果を受けて、同年4月、本件論文に関する本調査を実施するため、本調査委員会が設置された。なお、同委員会ではXによる弁明の機会が設けられた。同年9月、学長はXに対し、同委員会による調査結果を通知した。

▼ 上記調査結果は本件論文について、その表現の約70%が先行論文の表現と同一であるにもかかわらず、先行論文に全く触れておらず、「適切な表示なく流用した」ことは明らかであり、Xの「盗用」に当たると認定するとともに、Aに対して真摯に使用許諾を得ようとしたものとは認められないことなどから、悪質性は低いとはいえないなどとした上で、本件論文の速やかな取下げを勧告した。しかし、Xはこれにしたがわなかった。

▼ その後、K大学は2022年4月28日付で、研究活動上の不正行為(盗用)を理由として、Xを停職3ヵ月(停職期間:2022年4月29日~7月28日)とする懲戒処分(以下「本件懲戒処分」という)をし、Xに対し、その旨を告知した。

▼ 同年5月11日、本件学部教授会(以下「本件教授会」という)はXに対し、本件学部の副学部長職を解任するとの処分をし、本件研究科委員会はXに対し、本件研究科の科目担当を当分認めないとの処分をした(以下、両処分をまとめて「本件教授会等処分」という)。


<本件ガイドライン、本件取扱規程等について>

[文部科学大臣決定によるガイドライン]
★ 文部科学大臣は2014年8月、文部科学省、配分機関および研究機関が研究者による不正行為に適切に対応するため、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(以下「本件ガイドライン」という)を決定した。

★ 本件ガイドラインは、対象とする不正行為(特定不正行為)として、「捏造」、「改ざん」、「盗用」を規定し、そのうち、「盗用」について、「他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文または用語を当該研究者の了解または適切な表示なく流用すること」と定義している。

[研究活動における不正行為に関する取扱規程]
★ K大学は本件ガイドラインを受けて、2015年3月、学部および研究科等に所属する教育職員等による研究活動における不正行為について、「研究活動における不正行為に関する取扱規程」(以下「本件取扱規程」という)を定めた。本件取扱規程には、不正行為の定義、予備調査、本調査に関する内容が含まれている。

3.教授Xの主な言い分は?

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