【怪談白物語シナリオ】誰が為の鎮魂歌
誰が為の鎮魂歌
キーワード
①老朽化
②肝試し
③詩子
④ピアノ
⑤人形
⑥肖像画
⑦七不思議
⑧鎮魂歌
⑨拍手
⑩写真
本文
これは、私が小学6年生の頃の話です。
私が通う小学校は、ちょうど私が卒業したあとに、【老朽化】により学校の移動が決まっていました。
小学校も取り壊されてしまうということだったので、友達が「このままなくなっちゃうの寂しいから、みんなで思い出作りに【肝試し】しようよ!」と提案しました。
怖いのが得意じゃなかったけれど、思い出作りはしたいし、その約束を持ちかけられて挙手したのは私の他に5人くらいいるらしく、それだけいれば多少は怖くないかもしれないとおもって、私はその誘いに乗りました。
そして当日、私はどうにかお母さんを説得して、約束通り昇降口に来ました。
しかし、その日来たのは私と、私と同じように約束に乗った【詩子】ちゃんだけでした。
とうぜん、何分待てど人は来ないので、もう怖くなってしまい、帰ろうかと思いましたが、【詩子】ちゃんは意気揚々とした様子で「みんな来ないから行こう!」と言って、私の手を引っ張って夜の学校へ入っていってしまいました。
【肝試し】は、昇降口からスタートして、一番奥にある音楽室の【ピアノ】の上にあるフェルトでできた小さい【人形】をとって戻ってこよう、というものでした。
一人引き返す度胸もなく、【詩子】ちゃんに引っ張られるまま懐中電灯を握りしめて、音楽室を目指しました。
音楽室の扉を開けると当然真っ暗で、電気をつけようとしましたが【詩子】ちゃんに「電気つけたら先生にバレちゃうよ!」と言われ、仕方なく懐中電灯の光を頼りに中へ進みました。
時折懐中電灯に照らされる、校歌の作曲者の【肖像画】が動きそうだったり、壁の模様が人の顔に見えたりして、ビクビクしながら進むと、【ピアノ】の上においてある【人形】を無事に手に入れました。
一安心して胸をなでおろし、【ピアノ】の蓋を開けて遊ぶ【詩子】ちゃんに「かえろう」と促しました。
その時、蓋の開いた【ピアノ】がひとりでに曲を奏で始めたのです。
私は驚いて腰を抜かし、その場に座り込んでしまいました。【詩子】ちゃんもびっくりした様子で【ピアノ】を見ていました。
抜けた腰のまま、はいずって出ていこうとしたときに、ふと私はあることを思い出しました。
それは、学校の【七不思議】とその警告の6番目。音楽室の【ピアノ】。
『夜の音楽室では、ひとりでに【ピアノ】が鳴り、演奏会が勝手に始まる。それは、【ピアノ】が大好きな幽霊が発表会のために頑張って練習した成果をお披露目しているらしい。』
『もし、ひとりでに【ピアノ】がなって、モーツァルトの【鎮魂歌】が流れたら、その演奏会が終わるまで部屋を出てはいけない。【ピアノ】に触ってもいけない。演奏会を邪魔してはいけない。これを破ったら、祟られる』
幸いにも、私は地元の合唱団に入っていて、いま流れているこれが【鎮魂歌】だと知っていました。この【鎮魂歌】はとても力強く恐怖感を煽る曲なので、それもあって私は怖くて怖くて声を上げてしまいそうになりますが、それでもそれを必死に押さえて、曲が終わるのをじっと待ちました。
曲が終わると、どこからか【拍手】のようにラップ音が沢山なりました。
その時、私の恐怖は最高潮になり、それが鳴り止んだとき、私はその場から走って出ていきました。
それからは必死だったから覚えていませんが、お母さんの話では帰ってきてすぐに布団にこもっていたと言っていたので、何事もなく無事に帰ってきたのでしょう。
次の日学校に行って、約束を破った子たちに怒鳴り散らしたことをよく覚えています。
その子達も「行こうとしたがお母さんたちに止められてしまった」と言って、猛反省してるようでした。
そこで、昨日【詩子】ちゃんをおいていってしまったことをようやっと思い出しました。謝ろうと思いましたが、その日【詩子】ちゃんは学校に来てませんでした。
友達にも聞きましたが、みんな首を傾げて不思議そうに「知らない」、と言っていました。
その後【詩子】ちゃんとの再会は叶いませんでした。
それから何年も経ち、私はお婆ちゃんの家に行きました。そのお婆ちゃん家は例の取り壊された小学校があった地域にありました。
久しぶりにお婆ちゃんと再開すると、何やらおばあちゃんは懐かしそうにアルバムをめくっています。
おばあちゃんの思い出話を聞きながら【写真】を見ていると、私は思わず「えっ!?」と声を上げてしまいました。
その【写真】には、【詩子】ちゃんと瓜ふたつの女の子が写っていたからです。
おばあちゃんに聞いたら「この子はね、戦時中に空襲で死んじゃって、卒業式に来られなかったお友達なんだよ」と教えてくれました。