2050年 高齢者1人暮らし世帯 32道府県で20%超 各地の動きは

高齢者の1人暮らしの世帯が全体の20%を超える、5世帯に1世帯が高齢者の1人暮らしになる道府県が、2050年には32にのぼるという推計を国の研究所がまとめました。

そうした地域の生活や安全をどう守っていくかが、大きな課題となるなか、各地ではさまざまな取り組みが進められています。

「国立社会保障・人口問題研究所」は5年に1度、国勢調査をもとに将来の世帯数などを推計していて、今回は2050年までの30年間の推計を都道府県別にまとめました。

2040年1世帯あたりの平均人数 半数以上で2人を下回る

それによりますと、今後、すべての都道府県で1世帯あたりの平均人数が減少していき、16年後の2040年には、半数以上の26の都道府県で2人を下回る見通しです。

2050年には34の都道府県に拡大

その10年後の2050年には34の都道府県に拡大し、最も少ない東京都と北海道は世帯の平均人数が1.78人まで減少します。

要因は1人暮らし世帯の割合増加

1世帯あたりの人数が減少する大きな要因は、1人暮らしの割合が増加していく点にあります。

26年後の2050年には、27の都道府県で、1人暮らしの世帯の割合が全世帯の40%を超え、最も高い東京都は54.1%まで増加します。

65歳以上の1人暮らし世帯 32道府県で全世帯の20%超

中でも「65歳以上」の1人暮らし世帯の割合が大きく増加し、2050年には32の道府県で全世帯の20%を超え、最も高い高知県は27%まで上昇する見通しです。

1人暮らし世帯の増加は未婚率の上昇や出生数の低下などが背景にあると見られ、同居する家族のいない高齢者などの生活や安全を、地域でどう守っていくかが大きな課題となります。

《各地の取り組みは》

そうした地域の生活や安全をどう守っていくかが、大きな課題となるなか、各地ではどのような取り組みが進んでいるのか見ていきます。

【東京】高齢者と若者が同居 “異世代ホームシェア”

今回の推計では東京都では「65歳以上」の1人暮らしが2020年の89万人から2030年に103万人、2050年には148万人まで急増する見通しです。

1人暮らしの高齢者の生活や安全をどう守っていくのか。都内では、1人暮らしの高齢者などの自宅に学生などの若者が同居する「異世代ホームシェア」と呼ばれる取り組みが注目されています。

練馬区で暮らす宮本幸一さん(82)は、2015年から戸建ての自宅の一部を学生に貸し出していて、これまでに8人の大学生などと同居し、10月からは、千葉県出身で都内の大学に通う63歳下の清水春喜さん(19)と共同生活を送っています。

生活費は月3万円で、リビングやキッチンなどは2人の共有スペースで、それぞれ思い思いに過ごしたり、寝起きしたりする部屋は別々で独立しています。

63歳差の同居人がお互いが不満なく暮らせるよう、あらかじめ同意書を取り交わし、ルールを決めています。

82歳の宮本さんが守ることとしては
▽学生の部屋はプライバシーを保ち尊重する
▽学生のためにネット環境を整える
▽過度な干渉はしない、などです。

一方で、19歳の大学生の清水さんが守ることは、
▽できれば夕方から夜の時間帯に週1日から2日ともに過ごすコミュニケーションの場を設ける
▽帰宅が遅くなる場合は、あらかじめ連絡する
▽友達を招待するときには同意を得る、などです。

このホームシェア、学生にとってもメリットも大きく、割安で住めるほか、布団や机、たんすなどの生活に必要な家具はほとんどが宮本さんの家にあったものを使わせてもらっています。

世代の異なる2人はほどよい距離感を大切にしていて、食事は基本的には別々にとっています。

清水さん
「安く住めることも魅力ですが、血縁がないからこそ教えてもらえることがたくさんあり、魅力を感じています」

さらに同居が生活の安心感にもつながっています。
宮本さんは「清水さんがいることで、怪しい電話がきたときにはすぐに相談できますし、自分も高齢になっているので認知症の疑いがあることがあれば、言ってもらうようお願いしようと思っています。若い人からエネルギーをもらえることが一番の魅力です」と話していました。

「異世代ホームシェア」とは

国土交通省などによりますと、「異世代ホームシェア」は子どもの独立などで空き部屋がある高齢者の自宅に、学生などの若者が同居して共同生活を送る取り組みです。2000年前後からヨーロッパで拡大したとされ、国内では2010年ごろから導入され始めました。

この取り組みを研究している京都橘大学の川崎一平助教によりますと「異世代ホームシェア」では高齢者にとっては孤立を解消して生活への安心感を得ることができる一方、若者にとっては相場よりも安い生活費で質の高い住居を確保し、高齢者からさまざまな学びを得られるというメリットなどがあるということです。

京都では、府が「異世代ホームシェア」を事業化しているほか、東京都や福井県ではNPO法人を中心に取り組みを進めていて、NHKが主要な事業者に取材をしたところ、少なくとも135の事例が確認できました。

仲介を行ったNPO法人は

練馬区の宮本さんと大学生の清水さんの仲介を行ったNPO法人「リブ&リブ」は2012年から「異世代ホームシェア」を手がけています。

石橋※フサ子代表 
「高齢者が恐れているのは『社会からの孤立』で、1人暮らしが寂しいと感じています。一方で、高齢者でも元気な人が増え、施設に入るには早すぎるし、自宅に住み続けたいとも考えています。異世代ホームシェアをすると、自宅に住み続けることができるうえ、生きがいを持って活動できるところが喜ばれています」※フサは金偏に英

これまでに自宅で倒れた高齢者を同居している学生が気づき、救急車を呼んで救助につながったケースもあり、高齢者の見守り活動としても効果があるということです。

【北海道】AIを活用した見守りサービス

また北海道では16年後の2040年に、1人暮らしの65歳以上の高齢者が、全世帯の20%を超える見通しです。

日高の平取町では、町と社会福祉協議会が、1人暮らしの高齢者向けにAI=人工知能を活用した「スマートスピーカー」による見守りサービスを行っています。

町内の1人暮らしの高齢者30人に配布され、毎日、朝と夜の2回、決められた時間にその日の体調や食事の状況、薬をきちんと飲んだかなどを自動音声や画面表示によって確認していきます。

利用者は「はい」か「いいえ」で答え、回答は町と社会福祉協議会にメールされるほか、遠くに住む家族にも無料通信アプリのLINEで送られる仕組みになっています。

また、呼びかけに24時間応答がない場合は、社会福祉協議会の担当者が電話し、出なければ自宅を訪問して、安否確認するということです。

町内で1人暮らしの馬場千里さん(77)にも端末が配布されていて、毎日、午前7時と午後8時に質問に答えることで、薬の飲み忘れもなく、規則正しい生活が送れ、安心感にもつながっているといいます。

馬場さんは「1人暮らしで話し相手がいない日も、スピーカーとやりとりできるので、寂しいという感じがなく、楽しみで日課になっている」と話していました。

平取町社会福祉協議会の中村樹一係長は「何かあってもいち早い発見につながるツールの1つになっている。利用者の意見を聞いて、より良い仕組みを作り上げていきたい」と話していました。

【長崎】坂の多い街では高齢者世帯のゴミ収集支援も

今回の推計で、高齢者の1人暮らしの世帯の割合が全国平均を上回り、2050年には24.0%にまで上昇する見通しの長崎県。

このうち、坂の街として知られる長崎市では、市街地のおよそ7割を斜面地が占めていて、住宅地の多くでは急傾斜の階段や坂が多く、生活に欠かせないゴミ出しが高齢者にとって大きな負担となっています。

このため、長崎市ではこうした負担を軽減しようと、週に1回から2回、斜面地に暮らす高齢者世帯を戸別に訪問して、ゴミを収集するサービスを無料で行っています。

12日も、市の職員が斜面地にある住宅まで急な階段を駆け上がってゴミを収集していて、住民から「本当に助かる」といった声が聞かれました。

また、サービスを受ける高齢者は1人暮らしが多いことから、収集の際に声かけもして、応答がない場合には、親族などに連絡する体制を取っているということです。

長崎市によりますと、ことし3月末時点で、2500人余りがこのサービスを利用しているということです。

収集活動を行っている長崎市中央環境センターの田中哲文さんは「長崎の坂道は私たちが歩いてもきついので、高齢者の方の負担はさらに大きいはずです。高齢化が進むなか、みなさんが斜面地に住んでいても不自由なく生活していけるよう協力していきたい」と話していました。

「孤独になる前に」50代以上でのマッチングアプリも

「孤独になる前に」と、出会いのためのツール「マッチングアプリ」の利用も増えています。

都内の会社が運営するアプリで、ターゲットにしているのは50代以上で、会社によりますと、利用者全体のうち、50代以上の割合はおよそ85%にのぼり、60代以上の割合が40%を占めるといいます。

この会社では、もともとシニア向けの雑誌制作などを行っていますが、2年前、雑誌の制作を通して高齢者が社会や地域で孤立している現状を知り、マッチングアプリでのサービスを始めました。会社によりますと、アプリの利用者数とマッチングする人の数はいずれも去年と比べて10倍以上に急増しているということです。

現在、マッチングアプリは若者向けのものが多く、会社は、50代以上の人々が利用できるこのアプリは今後もニーズが増え続けるのではないかと予測しています。

アプリの運営を担当する会社の浦岡侑紀さん
「利用者の中にはアプリを利用するまで3か月間、誰とも会話していなかったという方もいました。そうした方々が孤独になる前に、気軽に人とつながることができる場を提供できればと思います」

専門家「家族が行ってきた支え合いを社会全体で」

1人暮らしの高齢者の問題に詳しい日本福祉大学教授で、みずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「日本はこれまで、家族依存型福祉国家とも呼ばれるように、家族の役割が非常に大きな社会だと言われてきた。1人暮らしが増え、これまで家族が行ってきた支え合いを社会全体で担う、いわば『家族機能の社会化』が必要になってきている。介護保険など公的な支援制度の強化を進めるとともに、近所の人など地域の支え合いも強化していくことが重要だ」と指摘しています。

その上で「社会が成熟すれば、1人暮らしや結婚しないことを選択する人が増えることもありうる。単身の高齢者が増えることを悲観するのではなく、家族以外の人にも助けてと言えるような支え合いの関係を地域で築き、豊かな社会へ変わるべきだ」と話していました。

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