食事も洋服も…ランクを一つずつ下げて生きる20歳 物価高時代の長野県の実像
人生なにかと「お金」がネックになることが多いですよね。そして、それはU35世代を生きている私たちも同じ。特に、最近は物の値段がどんどんと高くなっています。レシートを見て前よりもかなり高いと感じる人がほとんどではないでしょうか。こうした物価高は日常生活のさまざまな場面に影を落としています。今回の登場人物は、アパートで1人暮らしをする20歳。「家賃月3万円」「食費一日500円」…。出費を切り詰める日々を追いました。
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■洋服は中古品 スーパーでは安い商品を 大盛りも我慢
「やりたいことにお金を使えるよう、我慢して、全ての物のランクを一つずつ下げています」
上田市の1Kのアパートで1人暮らしをしている長野大2年の青木優大(ゆうだい)さん(20)は節約を続けている。欲しい洋服がある時は中古品を扱う店で似ている服を探す。夜に勉強する時は部屋の電気を消し、卓上電球を使用。冬の暖房はこたつのみ。自室は底冷えするので、カーペットを2枚敷き、上着を着込む。
食費も節約。価格帯が安いスーパーに行き、見た目は気にせずに安い商品を選ぶ。「食べれば一緒」と考えるようにしている。自炊の際、おかずの量は少なくし、どんぶりにご飯を盛っておなかを膨らませている。
すし店でアルバイトし、酢飯が余った時にもらってきて冷凍保存し、食べている。米が値上がりする中、米を買う頻度を減らせるのが助かっている。一方、炒め物に使っていたホウレンソウも高騰。より安価なチンゲンサイを買うようにしている。
体を動かすのが好き。本当はジムに通いたいが、諦めている。友人とラーメンを食べに行く時も大盛りを食べたいけれど、我慢。「ちょっとしたぜいたくが積み重なったら高い」。長期休みに友人と旅行に行くお金をためるためだ。「やりたいことが三つあれば二つを我慢して一つにする。その一つもぜいたくはしない」
■貸与型奨学金はなるべく手を付けず
青木さんは静岡県出身。高校1年生の頃に父親を病気で亡くした。父親が残した手紙に「家族を頼むぞ」と書かれていた。自分に何ができるのか―。「まず目の前のことを頑張ろう」と、苦手な英語の勉強に力を入れた。次第に得意科目になり、勉強が楽しくなった。大学でも勉強をしたいと進学を決意した。
実家の家計は母親が働いて支えている。携帯電話代は母親に支払ってもらっているが、高校生の妹にもお金が必要で、仕送りはない。給付型奨学金と、貸与型奨学金を両方受け取っている。この中から、減免された学費年10万4200円を支払う。ただ、貸与型奨学金は将来に返済が必要。もしもの時に備えて受け取ってはいるが、なるべく手を付けないようにしている。
■大学進学の障壁を下げる政策を
奨学金を手がける一般財団法人「あしなが育英会」に関連した学生団体「あしなが学生募金事務局」で、長野ブロックのマネジャーを務める。親を亡くしたり、親に障害があったりする子どもに対する募金を街頭で呼びかける活動などをしている。
青木さん自身は奨学金を受けて大学に進学できた。だが、貧困家庭の子どもが進学を諦めるケースもある。その場合、大人になって大卒者より低い収入で働くため、家庭を持っても貧困になりやすいとされる。「大学を出ていないと就職先が絞られる社会だからこそ、みんなが大学に進学しやすい制度を作らないとだめ」と青木さん。大学の学費を安くする、学生寮がない大学の学生に家賃補助をするといった進学の障壁を下げる政策を求めている。
■食費の支出増 学生生活にも直撃
近年の物価高騰は、学生生活にも影を落としている。全国大学生活協同組合連合会(東京)が2023年に行った「学生生活実態調査」によると、下宿生の食費、住居費、交通費が前年より増え、教養娯楽費などその他の支出が減少。食費が支出に占める割合は前年比0・8ポイント増えた。自宅生は小遣いが減ってアルバイト収入が増加。食費の支出も増えている。
また、親を亡くした子どもたちなどの就学を支援するあしなが育英会(同)が今年7月に奨学生の保護者に行ったアンケートによると、85・5%は、昨年同時期と比較して収入が増えていないと回答。奨学生の家庭は物価上昇前から困窮していることもあり、94・2%は収入が物価上昇分をカバーできないと回答した。
「昨年以上に物価上昇の影響を感じるか」の質問には計99・6%が「とても感じる」または「感じる」と答えた。一番節約している費用は食費との回答が52・8%を占めた。自由記述では、食事の量を減らしたため「家族全員痩せてきた」「貧血で倒れた」といった回答もあった。調査を担当した島田北斗さん(31)は「物価高が(奨学生の家庭の)健康状態の悪化も招いている」と分析している。
(藤田沙織)
(※2024年10月14日に配信した記事を再構成しています)
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