2050年の大学定員「3割埋まらず」 文科省が試算見直し
文部科学省は12日、2050年の国内の大学入学者が42万人に減り、入学定員が現状を維持すると3割埋まらなくなるとの試算をまとめた。これまでは50年時点で2割が埋まらなくなると試算していたが、実際の出生数が少なく推移しており、見直した。少子化の加速は止まらず、大学の再編や淘汰は避けられない。
文科省が12日に開かれた高等教育の将来像について議論する中央教育審議会(文科相の諮問機関)の特別部会で明らかにした。同日示された審議会の答申素案では設置認可の厳格化や撤退への支援など、規模適正化の方策についても盛り込まれた。
同省によると、推計の入学者数は国立社会保障・人口問題研究所が推測した将来の18歳人口に進学率を掛け、外国人留学生らの数を加えて出した。23年7月に公表した試算は「出生中位・死亡中位」で推計したが、最近の出生数の減少を踏まえて「出生低位・死亡低位」で試算し直した。
大学進学率は21年に54%で、40〜50年には60%程度に上昇すると試算。62万人だった入学者は30年には63万人となるが、35年には59万人、40年には45万人に減少する。同省担当者は「各大学が将来を見据えた計画を立て、実行する期間は残り10年程度しかない」と危機感をあらわにする。
さらに45年に43万人、50年には42万人まで落ち込む。23年度の定員(63万人)に対する定員充足率は50年には67%と7割を割ると想定。これまでは8割と見込んでいた。
外国人留学生数が増加すると仮定しても、50年の定員充足率は71%にとどまる。「留学生数が伸びても、少子化はそれ以上のスピードで進行する」(同省担当者)
都道府県別(40年時点)でみると、人気大学が集中する東京都(79%)や大阪府(75%)、京都府(72%)でも8割を割る。地方では5割台に沈む県もある。
答申素案は「危機にあわせた対応をしなければ、今後は経営破綻に追い込まれる大学がさらに生じることは避けられない」と言及。「地域や社会のニーズを踏まえて再編・統合や縮小・撤退を支援することが必要だ」とした。
具体的には▽再編の実施事例を作成するなど有益な情報の周知▽大学の収容定員を引き下げやすい仕組みの構築▽財務状況が厳しい大学が統合し、学生数が定員を超過・不足しても、私学助成金減額などのペナルティーを緩和する制度づくり――などを示した。
中教審は24年度中の答申を目指す。規模適正化策に加え、大学院教育の高度化や情報公開の促進、地域の人材育成や進学機会の確保などについて議論を深める方針だ。