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副業促進へ、割増賃金の「労働時間通算ルール」見直し 厚労省が検討

宮川純一

 1日8時間・週40時間を超えた労働に支払う割増賃金について、厚生労働省は、本業先と副業先の労働時間を通算して計算する現行制度を見直す検討に入った。複雑な仕組みを改め、副業や兼業を促進する狙いがある。

 通算ルールの見直しは、厚労省の有識者研究会が年度内にまとめる予定の報告書に盛り込まれる見通しだ。

 労働基準法は1日8時間・週40時間を法定労働時間と定めており、使用者はこれを超えて働かせる場合は労使協定(36協定)を結び、割増賃金を払う必要がある。さらに厚労省の通達で、労働者が企業に雇用される形で副業した場合も、本業先と副業先の労働時間を通算した上で、法定外の労働分の割増賃金を支払う仕組みになっている。

副業容認に高いハードル

 ただ、本業先、副業先のどちらが割増賃金を払うかは契約の先後に左右されるなど、仕組みが複雑だ。自社分だけだと法定時間に収まっていても割増賃金を負担しなければならないケースもある。労働者の自主申告頼みで他社での労働時間を正確に把握できない場合は、違法労働のリスクも負う。こうした現状が、副業の容認や受け入れのハードルになっていた。

 有識者研究会では、通算ルールをなくし、企業ごとの労働時間で割増賃金を計算する方向で議論。厚労省は、健康管理のために通算の労働時間の把握は残しつつ、副業を活発化して起業の促進や人手不足の解消などにつなげたい考えだ。

 有識者研究会の報告書がまとまれば、労働政策審議会で労使の議論が行われる。割増賃金は長時間労働を抑制するための制度であり、労働組合側が反発する可能性もある。(宮川純一)

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