人手が全然足りない日本に「外国人労働者をこのまま受け入れるのか」という重大な論点

この国にはとにかく人が足りない!個人と企業はどう生きるか?人口減少経済は一体どこへ向かうのか?

なぜ給料は上がり始めたのか、経済低迷の意外な主因、人件費高騰がインフレを引き起こす、人手不足の最先端をゆく地方の実態、医療・介護が最大の産業になる日、労働参加率は主要国で最高水準に、「失われた30年」からの大転換……

発売即重版が決まった話題書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。

(*本記事は坂本貴志『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』から抜粋・再編集したものです)

論点1 外国人労働者をこのまま受け入れるのか

今後の最も大きな分岐点となるのは、日本社会が人口減少そのものを受け入れるかどうかという点になる。短期的に出生率を上昇させることは容易ではなく、また仮に出生率の急上昇に成功したとしても生産年齢人口の回復には長い時間がかかる。日本の人口減少は既定路線であり、この状況を短期間で反転させることは難しい。

しかし、短期的な解決策として有効な施策がある。それは外国人労働者の受け入れ拡大である。実際に、日本以外の多くの先進国では外国人労働者を受け入れてきた歴史がある。

外国人労働者を大量に受け入れることで若くて安い労働力を労働市場に大量に流入させるという選択肢を日本社会が取るのだとすれば、今後日本社会が経験する大きなストレスも避けることができるようになるだろう。

外国人労働者の受け入れを拡大したとしても、外国人が日本を選んでくれないという議論もある。しかし、それは事実とはやや異なるだろう。

確かに、高度人材に限れば人材の獲得は他国との競争であり、米国や一部欧州諸国に比べれば相対的に賃金水準に劣る日本が高度人材の獲得競争に勝つことは難しい。しかし、世界の労働市場を見渡せばそうでない労働者の方がむしろ多数派だ。高度な技能を有する人材に限らないのであれば、足りない労働力を賄うために海外から労働力を大量に流入させることは政策的に可能である。

そのような政策を日本は事実上取っている。外国人労働者はここ数十年の間で拡大を続けている(図表3-5)。人手不足の中で多くの企業が安い労働力としての外国人労働者を求めており、企業の要請にこたえる形で政府も外国人労働者の受け入れを活発化させているのである。

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