仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」

短期集中連載・第6回
ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。       

この事件の取材の第一人者であるノンフィクション作家・森功氏がこのほど上梓した文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、知られざる数々の事実が記されている。今回、同文庫の内容を7回連続で公開する。

第1回「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の『地面師詐欺』の語られなかった真相」
第2回「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 暗躍した2人の『スター地面師』の正体」
第3回「不動産業者、銀行員、デベロッパー社員必読! 積水ハウスをだました地面師グループの詳細な手口」
第4回「積水ハウスはなぜ詐欺のターゲットにされたのか? 大物地面師2人の生々しい謀議を再現する」                               第5回【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした

政界や芸能界ともつながっていた

積水ハウスの払い込み窓口となったIKUTAについては、さすがに民事訴訟の資料からは大きな金の流れは見えない。オーナーの生田におよそ10億円が渡っている、という新聞報道もあった。

が、実際にそれがすべて生田の懐に入ったかどうかは不明だ。

事件の舞台となった、五反田駅前にあった海喜館。撮影/濱崎慎治
 

ちなみに生田は政界や芸能界にも知己の多いある種の著名人でもある。会社の所在地が元代議士の小林興起事務所に登記され、小林夫人の明子も役員として名を連ねていたことでも、注目を集めてきた。まだ事件が摘発される前、その小林興起に取材した。

「詐欺が表沙汰になってから、初めて私どもの事務所にIKUTAが登記されていることを知りました」

はじめは、そんな話をして埒が明かなかった小林事務所だが、当人に確認してもらうとニュアンスが変わってきた。

「小林の記憶によれば、IKUTAから小林事務所に登記を置かせてほしいと依頼があったのが(事件の)2年ほど前だそうです。当時、支援企業の対応を任せていた秘書が、小林が落選中だったので事務所に何か利益になればいい、という思いもあって話を持ってきたそうです。その方(生田のこと)ともお会いし、女性向けの美容、健康事業をする会社だとのことで夫人も名前を貸した。

ですが、実際には何の事業もスタートしませんでした。事務所のスペースを貸す窓口の秘書は家賃収入なども期待していたが、それもまったく発生しませんでした。先方からは、『今回はこんなことになってしまって申し訳ない。ただ、自分も騙された側で小林事務所にはご迷惑をかけないので、ご心配なく』とご連絡があり、『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ。まさか本人確認もしないでこの案件を進めていたとは理解できない』と言っているそうです」

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