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トランプ政権に備えデジタル図書館が米脱出準備

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VentureBeat

NPO「インターネット・アーカイブ」はちょうど20年間ウェブの進化を記録してきた。ウェブサイトの検索サービス「ウェイバックマシン」にURLを入力すれば、誰でも1998年の米アップルのホームページや2001年の米紙ニューヨーク・タイムズ、06年のベンチャービートを再び訪問できる。

過去20年のウェブサイト情報を保管

インターネット・アーカイブのエンジンはウェブサイトを巡回し、インターネットの変遷を記録に残すために様々な日のスナップショットを撮影している。一方、アーカイブは電子書籍やビデオゲームなど大量のコンテンツを集めたデジタル時代の図書館だ。だが、従来の図書館と同様に、デジタル図書館も社会や環境による脅威を免れない。そこで、インターネット・アーカイブはウェブに対する「規制強化の可能性」に備えるため、カナダに膨大なデータベースのバックアップをつくろうとしている。

インターネット・アーカイブの創設者ブリュースター・ケール氏は「図書館の歴史は喪失の歴史だ」と説明する。「(古代エジプトにあった)アレクサンドリア図書館は消え去ったことで知られる。われわれのような図書館は地震や法制度、社会制度の欠陥といったさまざまな『断層線』の影響を受けやすい」と語った。

所蔵コンテンツはウェブページや動画、画像など計15ペタバイト(1ペタバイトは約1000テラバイト)はあるため、何らかの事態が生じれば多くは失われる。インターネット・アーカイブなど多くのIT(情報技術)関連団体が拠点を置く米国では数週間前、次期大統領にドナルド・トランプ氏が選ばれた。ケール氏は当時、結果に「ショックを受けた」と述べつつも、楽観的な見方は崩さなかった。

ケール氏は「いささかショックだった。大統領選がこんな結果になるとは思わなかった。われわれは無事なので、安心してほしい。資金や使命、パートナーが変わる理由はない。私はこれで安心したし、みんなもそう思ってほしい」と語った。

米国内の監視強化を懸念

大統領選の結果を受け、トランプ政権の誕生が米IT業界に及ぼす影響が懸念されている。特に不安の種となっているのは、監視や暗号化の問題だ。トランプ氏は選挙期間中、IT業界を攻撃する発言を連発。米連邦捜査局(FBI)が求めた銃乱射事件の犯人が所持していた「iPhone」のロック解除をアップルが拒否した問題を巡り、国民にアップル製品のボイコットも呼びかけた。トランプ政権のプライバシーに対する姿勢への懸念は国民に浸透しており、プライバシーを重視した消費者向け製品のダウンロードが増えているとの報道もある。

 虚偽のニュースが16年の米大統領選の情勢を左右したことを踏まえると、インターネット・アーカイブが1月、選挙戦での主張をジャーナリストが後でチェックできるように「政治のテレビ広告」のアーカイブを新設したのは、いささか注目に値する。インターネット・アーカイブは他国で所蔵コンテンツのコピーを作成する方針を示したため、自社のコンテンツを別の場所に保管する計画を発表し、今回の選挙結果にいち早く反応した大手IT関連団体になったからだ。

もちろん、インターネット・アーカイブはメーンのデータベースをなお米国に置くが、カナダにいつでも利用できるバックアップを設けることで万一の場合に備えた。

ケール氏は「11月9日(大統領選の翌日)に目を覚ますと、新政権が抜本的な変化を約束していた。これは長い間活動してきたわれわれのような組織は変化に備えなくてはならないという確実な注意喚起だ」

「これはつまり、われわれの文化的な資料を安全で、邪魔されず、いつでもアクセスできるようにしておくということだ。ウェブの規制強化に備え、政府による監視がなくならない社会で支援者の役に立つということだ。実際にその必要性は高まるだろう」

「図書館は昔からずっとプライバシーのひどい侵害と闘ってきた。人は読んだ本を理由に逮捕されてきた。インターネット・アーカイブでは、デジタル社会でのわれわれの読者のプライバシーを守るために闘う」と強調した。

賛同者から寄付を募集

カナダでのレプリカ作成プロジェクトには「数百万ドル」(ケール氏)の費用が必要となる。このため、ケール氏は既存のアーカイブと同様に、この活動を支援してくれる寄付を募っている。寄付金は税控除の対象になる。

インターネット・アーカイブは昨年、ウェイバックマシンをより使いやすく、検索しやすくするためにアップデートすることを明らかにした。アップデートは17年中に完了するが、今後はこのサービスのレプリカを隣国で作成し、維持するという新たな課題が加わる。

By Paul Sawers

(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)

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