コロナに「特効薬」はできるのか…抗体カクテルの在宅投与来週にも
2021年9月17日 06時00分
新型コロナウイルスの新規感染者は減少傾向にあるものの、重症者や死者は多いままだ。ワクチン接種がある程度進んだこともあり、治療薬への関心が高まる。田村憲久厚生労働相は16日の会合で、自宅療養者に対する抗体カクテル療法の投与を、来週にもモデル事業として始める方針を示した。それでも決定的な「特効薬」はまだない。薬の不足や投薬時期の難しさもあり、現場の医師は悩みを抱える。(永井理)
◆対象の拡大が課題
特例承認された抗体カクテル療法(カシリビマブとイムデビマブ)は、ウイルスが細胞に侵入するためのとげに抗体がくっついて無力化する。軽症者に投与して重症化や死亡を7割減らしたとの結果が出ている。
安定供給が難しいとして入院治療者に投与されてきたが、15日の菅義偉首相の指示を受け、対象が広がる。
だが、点滴で投与し、激しいアレルギー反応などが出ないか経過を見る必要がある。患者を訪ねて回る訪問医療で対象をどの程度広げられるかが課題だ。
◆高まる飲み薬への期待
そのため、軽症者が自宅で使える飲み薬への期待が高まる。米ファイザーや米メルク、塩野義製薬などが飲み薬の治験を進めている。田村氏は3日の記者会見で「早く申請していただき、なるべく早く国民に提供したい」と語った。
既存の薬でも新型コロナに効果のあるものが探されてきた。これまで、エボラ出血熱の治療薬として開発された抗ウイルス薬レムデシビル、炎症を抑えるデキサメタゾンとバリシチニブなどの既存薬が、新型コロナ治療にも効果があると認められ国内で承認された。
昨年の流行初期から注目されてきたのが、寄生虫駆除薬のイベルメクチンだ。世界で数十例の臨床試験の報告が出ているが、規模や手法に議論があり、厚労省の手引には「新型コロナ治療について有効性・安全性は確立していないが、国内で入手できる薬」と紹介されている。なかなか決定的な試験の結果が出ない状況で、興和(名古屋市)が企業として治験を行っている。
◆難しい判断迫られる医師
どの治療薬を使うか、現場の医師は難しい判断が迫られる。1000人以上の新型コロナ患者を受け入れてきたという東京都内の総合病院の医師は「治験など科学データと、医師の経験的な判断の両方が医療に必要だが、新型コロナでは(決定的なデータがなく)経験の占める割合が大きい」と判断の難しさを語る。病院間で情報交換し、新型コロナ治療薬として未承認の薬を使うこともある。
必要な薬が足りなくなることもあるという。流行拡大でデキサメタゾンが供給不足に。9月に入って厚労省は全国の自治体に、必要な患者に優先的に使うよう事務連絡を出した。
ウイルスの増殖を防ぐタイプの薬は、ウイルス量がピークに達する前の感染初期に投与しないと十分な効果が出ないとされる。医療現場では「症状が出てPCR検査を受け、結果を待ってからではタイミングを逃す」との指摘もある。治療薬を生かすには、検査のあり方から考える必要もありそうだ。
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