第43話 女勇者と和解の旅立ち
アレンとマリアがラヴィリス王国に滞在してから三日が経った。
ヴァルファルガ討伐後、王国は連日二人の快挙を称え、祝賀の声で溢れていた。
しかし、その裏でマリアが勇者パーティのメンバーに対して厳しい説教をしていたことを、アレンは少し驚きながら知ることになった。
「マリアが俺の追放について、メンバーを叱っていたなんてな……」
思わず苦笑しつつも、マリアが味方でいてくれる心強さに感謝していた。
だが、その感慨に浸る間もなく、宿泊施設の扉がノックされた。
扉を開けると、そこにはマリアと女勇者のイリスが立っていた。
一瞬、アレンは表情を曇らせた。
正直なところ、勇者パーティのメンバーとはもう関わりたくなかった。
あの追放の出来事は心に深い傷を残しており、再び顔を合わせる気にはなれない。
そんなアレンの心情を知ってか知らずか、マリアが静かに切り出した。
「アレン、大切な話があるの」
アレンは内心の動揺を抑え、渋々ながらも二人を部屋に入れた。
マリアはいつになく真剣な表情で、アレンに向き合った。
「アレン、単刀直入に言うわ。ロマン国王からの依頼で、これからしばらくあなたとイリスの二人だけで冒険に出てほしいの」
「なんだと!?」
驚きに声を上げるアレンに、マリアは冷静に説明を続ける。
「その間、私と他の勇者パーティのメンバーは王国の防衛を担当することになるわ」
アレンは信じられないというように、イリスを見た。
イリスは無表情で、ただ静かに彼を見つめ返している。
その視線は、かつての敵意や嫌悪感が感じられないものの、まだ完全に和解しているとも言い難いものだった。
「ちょっと待て!そもそもイリスは、俺の『性行為』スキルを嫌がっていたじゃないか。今さら俺と二人で旅をするなんて、無理だろう!」
アレンの言葉に、マリアは一瞬表情を曇らせたが、やがて意を決したように口を開いた。
「その件についてだけど……実は、イリスからも謝罪と説明があるわ。あくまでもロマン国王からのお願いであって、アレンが嫌であれば断ってくれても構わないわ」
その言葉にアレンは一瞬、言葉を失った。
マリアが自分を信じて、選択の自由を与えてくれていることが、かえって迷いを呼んでいた。
「じゃあ、イリスから詳しく説明してもらうわね。それに……二人だけのほうが話しやすいかもしれないから、私はここを去るわ」
「え?ちょっと待て、マリア!」
アレンはマリアを引き止めようとしたが、彼女は静かに微笑んで部屋を後にした。
気まずい沈黙が流れる中、残されたイリスがアレンに向き合い、一礼した。
「アレン様、当時は……大変、失礼な対応をしてしまい、申し訳ありませんでした」
イリスは静かに頭を下げ、心からの謝罪を口にした。
その言葉には、以前の高慢さや冷たさは感じられず、アレンは少し驚いた表情でイリスを見つめた。
「当時、私はあなたの『性行為』スキルを軽視していました。なぜロマン国王が私たちにパーティを組ませてくださったのかも理解せず、あのスキルが我々にとってどれほど重要か、考えもしませんでした」
イリスの言葉にアレンは眉をひそめた。
「それって、どういうことだよ?お前たちは俺をただの厄介者として見ていただけじゃないか」
イリスは一瞬戸惑ったようにアレンを見たが、すぐに真剣な表情を取り戻した。
「確かに、あの頃の私は未熟でした。ですが、ロマン国王の深い意図と、アレン様のスキルの本当の価値を理解できずに追放してしまったことを、今は後悔しています。この旅は、アレン様と私との関係性を再構築するためのものなのです」
「何!?なんでお前なんかと関係性を再構築しなきゃならないんだ!」
アレンは思わず声を荒らげたが、イリスはその怒りを全て受け止めるように、ただ真剣な眼差しを向けた。
「アレン様のお怒りはもっともです。しかし、今回の討伐で気づいたのです。アレン様の『性行為』スキルが、マリア様だけを愛するだけでは、真の力を発揮できないという事実に」
アレンはその言葉に動揺し、思わず息を飲んだ。
「それはどういう意味だ?」
イリスは深呼吸をし、続けた。
「魔王討伐には、アレン様のスキルのさらなる高いレベルが必要です。そして、そのためには多くの愛情を受け入れ、増幅させることが不可欠なのです」
「つまり、俺にもっと多くの愛を感じさせる相手が必要だと?」
「はい。もちろん、アレン様が不快であれば断っていただいて構いません。ただ、私もまた、この世界を守るためにできることをしたいのです。あなたのスキルを軽んじたことで、失った信頼を取り戻すためにも、私にできる限り協力したいと思っています」
アレンはしばらくの間、何も言わずにイリスを見つめた。
イリスの瞳には本気の思いが宿っており、かつての彼女とは違う成長を感じさせるものがあった。
だが、自分を追放した張本人と再び信頼関係を築くことに躊躇いがあるのも事実だった。
「イリス、お前は本気で言ってるのか?」
イリスは静かに頷き、まっすぐにアレンの目を見て答えた。
「はい、私は本気です。アレン様、私に償わせてください。あなたのスキルを信じ、共に歩むことで、私もまた成長し、この国を守り抜く力を得たいと思っています」
アレンはその真摯な言葉に、複雑な感情を抱えながらも少しずつ理解を示し始めた。
そして、深い溜息をつくと、静かに口を開いた。
「……分かったよ。ただし、俺はお前を簡単に信じることはできない」
するとイリスは真剣な表情で自らの股間に手を当てながら
「もちろんです。ただ、その前にひとつ、誠意を示したいと思います。このビキニアーマーの下に、私が小さな下着を身につけているかどうか……アレン様は、勇者パーティの頃からそれを気にされていたのではないかと感じていました。その答えをお伝えいたします」
その言葉に、アレンは思わずドキッとしてしまった。
図星を突かれたような感覚に動揺が走り、反射的に口から言葉が飛び出す。
「な、なぜそれを知っている!」
気づいた時にはもう遅かった。
アレンは自分が露出の高いイリスのビキニアーマーについて密かに気にしていたことを、まさに自ら証明してしまったのだ。
イリスはアレンの反応を冷静に受け止めながら、さらに一歩、アレンに近づくようにして視線を合わせた。
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