第46話 女勇者と雨宿りの温もり

雨が降り出したのを感じたアレンは、イリスを抱きかかえたまま、雨をしのげる場所を探し始めた。


脳震盪のうしんとうを起こしているイリスはまだ立ち上がれそうにない。


イリスは抱きかかえられたまま、かすかに顔を上げて囁く。


「重くないでしょうか?」


その問いかけにアレンは優しく微笑んで答えた。


「いや、軽いよ」


正直なところ、イリスの体を抱きしめているだけでアレンは不思議な幸せを感じていた。


かつて勇者パーティにいた頃は、イリスに近づく度に冷たい視線を向けられ、煙たがられているのを痛感していた。


そのため、アレン自身もイリスから距離を置くことが多かった。


しかし今、こうしてイリスを腕に抱き、互いに近づくことを許されているのが嬉しかった。


ふと視線がイリスの体に移り、アレンは思わず見惚れてしまった。


イリスの装備は肌の露出が多く、密着するたびに温かさが直接伝わってくる。


細身で引き締まった体には筋肉の美しいラインが浮かび、スタイルは抜群だった。


胸はしっかりとした丸みを帯び、お尻も程よく肉付きが良い。


そのプロポーションに、アレンは思わず息を飲んだ。


特に、イリスの腹筋が少し見える程度の控えめな割れ目がアレンにはたまらなかった。


イリスが立っているときはほとんど余分な肉が見当たらないスリムなウエストだが、ふと前屈みになるとわずかに現れるお腹の柔らかさに、アレンは密かに魅了されていた。


乳房の美しさもさることながら、そのささやかな柔らかさに触れてみたいという衝動が芽生える自分に驚いたが、アレンはなんとかその気持ちを抑え、冷静さを保とうとした。


イリスはアレンの顔を見上げて、そんなアレンの様子をじっと見つめていた。


アレンのまなざしが自分に注がれているのを感じ、イリスの頬が僅かに赤く染まっていた。


冷静であるべき自分が、アレンの優しさと温もりに魅了されていることを感じずにはいられなかった。


しばらく歩き続けた後、アレンは岩陰に雨をしのげるちょうど良い空洞を見つけた。


安堵の表情を浮かべ、イリスをそっとその中に連れていく。


アレンは自分のマントを広げ、イリスを寝かせるための簡易な寝床を作った。


「ここでしばらく休もう」


アレンはイリスに優しく声をかけ、イリスをマントの上にそっと横たえた。


イリスは無表情ながら、どこか心ここにあらずといった様子で天井を見つめていた。


その眼差しにほんの少し寂しさが漂い、アレンはイリスの心情に気づき、静かに問いかけた。


「イリス、気分はどうだ?」


イリスはかすかに頷きながらも、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。


「アレン様……私、またあなたに助けられてばかりですね。こうして抱えられる度に、自分の力不足が身に染みて……」


その言葉に、アレンは微笑みながら首を振った。


「そんなことはない。お前は十分に頑張ってる。自分を責める必要はない」


イリスはその言葉に少しだけ救われたように微笑んだが、どこか腑に落ちない様子も見せていた。


「でも、私は……あなたの隣で、対等に戦える存在でありたいんです。アレン様の背中を追うばかりではなく、隣で共に戦える強さを持ちたいのです」


アレンはその決意に満ちた言葉を聞いて、真剣にイリスを見つめた。


「その気持ちがあるなら、絶対に強くなれるよ。少しずつ成長していけばいいんだ。俺はお前のその努力をずっと見ているし、信じてる」


イリスはその励ましに、わずかに表情を和らげた。


そして、再びアレンを見上げ、囁くように尋ねた。


「アレン様は、私とこうして旅をしていて……どう思っていますか?」


アレンはその問いに少し驚きながらも、穏やかな笑みを浮かべて答えた。


「俺は今、すごく幸せだよ。以前のパーティの時には感じられなかった、お前との距離が少しずつ近づいている気がするんだ」


その言葉にイリスは再び頬を染め、何かを言いかけたが、結局言葉にならず、再びアレンの温もりに身を預けた。


イリスの表情には、これまでとは違う穏やかな色が宿っていた。


外では雨がしとしとと降り続き、空洞の中には二人だけの静かな時間が流れていた。


アレンは、イリスが疲れを取れるように少しの間、静かに寄り添うことにした。


この雨宿りのひとときが、二人の間の距離を少しずつ縮めていくことを、アレンは心の奥底で感じていた。


しばらくすると、イリスは何かを決意したように、少し躊躇いながらも口を開いた。


「アレン様……私のビキニの中、今、ご覧になれますか?」


その言葉にアレンは驚き、思わず目を見開いた。


想像だにしなかった問いかけに戸惑いを隠せないまま、アレンは真剣にイリスの顔を見つめた。


「正直に言うと……すごく見てみたい。でも、俺が君を本当に女性として愛せるか、少し不安なんだ」

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