2024年米国大統領選は「男性差別」が最大争点だった

 正確にはカマラ・ハリスが変な暴走を繰り返し勝手に最大争点にしたのだが、主要メディアは絶対に報じないだろう。まずそもそも論から言えば男性差別は民主党がカマラ・ハリスを大統領候補に選出した時点で付き纏う問題だった。

 なにしろカマラ・ハリスは目立った実績がない。2020年に副大統領になった際もその登用は疑問視され、尚且つ副大統領としても目立った実績はあげられなかった。そして今回の米大統領候補就任も予備選をせずに「密室」で決まった事もあり、彼女を「女子枠政治家」と見なす米国民は決して少なくない。「カマラ・ハリスの業績」というページの殆どが白紙の本が米国ベストセラーになってるのが、それを端的に象徴してる。(因みにハリスが大統領候補になったのはバイデンがTV討論で醜態を晒した後であり、謂わばハリスは女性は男性の失敗の尻ぬぐいのスケープゴートとして出世させられる「ガラスの崖」の被害者である…とする記事は絶対出ることだろう)

 民主党公認の大統領候補になった彼女が真っ先にやった事は「人工妊娠中絶の権利」を擁護すると公約したことだ。また自身が「子なしの猫好き女性…独身で子供を作らず猫を飼ってる女性に対する侮蔑的スラング」である事を認め、そういった女性達のために戦うと宣言。この宣言にはテイラー・スウィフトら著名セレブが連帯を示し、また記録的な寄付金…イーロン・マスクによればトランプ陣営の1.5倍以上…を集めた。彼女の選挙活動の滑り出しは華やかだったといえるだろう。

 しかしながらセレブ達の支持を集める1方、彼女は男性の権利や問題への言及は全くしなかった。せいぜい男女に依らない労働者全体問題として物価上昇や住宅購入といった経済問題に触れた程度だ。というより、そもそも論として民主党自体が男性に関心がない。2024年の民主党綱領では「女性」という言葉は82回登場するが、男性という言葉は4回しか登場しない。更に言えば「男性」という単語が含まれる例のうち3つは「男性と女性」のフレーズに含まれているため、それらを取り除くと女性79回、男性1回である。しかも女性は中絶の権利、性被害、教育等の問題で「被害者」として言及されているが、男性はトランプが不釣り合いに男性の裁判官を雇っていると批判する文脈で「加害者」として言及されている(46ページ参照)。また教育での女性の困難について語られてはいるが、米国男性が大学生の約40%に過ぎず女性以上の進路制限されている事についても何の言及もない。
democrats.org/wp-content/uploads/2024/08/FINAL-MASTER-PLATFORM.pdf

 更に極めつけは民主党が「私達が奉仕する人々」してあげる様々な属性…LGBTQq・アフリカ系・先住民…のなかに「女性」は含まれているが、男性は含まれていない事だ。
Who we serve - Democrats (archive.is)

 当然こうした男性無視が選挙に影響を与えないわけはない。2024年8月5日から8月9日にかけてミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州の有権者1973人を対象に実施された最新のニューヨーク・タイムズとシエナ・カレッジの世論調査では、カラマ支持者とトランプ支持者との間には35ポイントの男女差があることが示された。調査では男性ではトランプ氏が52%対39%と14ポイントリードしており、女性ではハリス氏が56%の支持を得て、トランプ氏の35%に対して21ポイントのリードを保っていた。
Trump vs. Harris Poised To Be Largest Gender Divide in Election History - Newsweek

 このような男女格差の原因をハリス陣営も知らなかったわけではない。ハリスの抱える選挙チームは潤沢な資金を元に結集された米国最高の頭脳集団であり、当然聞き込み調査も12分に行っている。現に民主党の選挙アドバイザーは民主党から男性が離れた原因をこう語った。

 民主党とその同盟者は男性達の行動を「有害」とレッテルを貼り、カリキュラム、オフィス環境、昇進の機会を女性に有利になるように構造化しました。私が若い男性から感じるのは、彼らはただそれを乗り越えているということです。彼らは講義を終えたばかりで、自分たちの問題はそれほど重要ではないと言われているのです。文化的には私達は『原罪』という考え方を、ポストモダン的な毒のある男らしさの考え方に置き換えました。彼らは自分が男性というだけで説教される事に疲れているのです。
‘They’re Just Over It’: How Trump Has Converted Male Frustration Into a Movement - POLITICO

 米国における男性の状況は我が国とそう変わらない。例えば選挙期間中の出来事では米国人気番組「The View」では、女性ホストが「男性は役に立たないよね。必要ない性別なんじゃねーのw」と、男性が建てたスタジオで男性が発明したカメラで男性のスタッフによって撮影されている中で発言し、スタジオの女性の爆笑とSNSでの特定女性の多大な共感を集めた。男女逆なら番組は灰燼に帰すまで燃やされていた…と米国人男性も指摘するが、当然こうした指摘も虚しく男性差別や蔑視は「正義」で、女性差別や蔑視は「悪」というのが日米共通のルールである。

 ハリスに投票しない男性は射殺するべきだと訴えるカンザス大学の教授

 流石にここまで分断が進むと従来通り彼等を無視してはいられない。そこでハリスは男女の分断を癒す為に歩み寄りを始めた。それがこれだ。男性なら男らしく女性に投票しよう!(man up and vote for women)

  野球帽をかぶった男がトウモロコシ畑を闊歩し、フランネルを着た女性が振り返って微笑む。ピアノの音楽が盛り上がると、そよ風にアメリカの国旗がさざ波を立て、サム・エリオットの深い声が「今こそ男性になり女性に投票する時だ!」と力強く断言する。とりあえずアメリカ人じゃなくても古典的なマッチョイズムに満ち溢れたCMである事は伝わるはずだ。

また同時にこんなヘンテコ…マッチョなCMも流している。なんかもうマッチョ過ぎる。

 更にハリスはトランプ支持者達が非モテである事を見通し、こんなCMも流した。私に投票しない男性はセックス出来ない非モテになる!

 黒人男性がマッチングアプリをイメージした空間で女性達の「筋肉ある?」「身長は?」等の質問に答え、女性達は風船を膨らませていく。しかしある女性の「誰に投票するの?」という質問に詰まると、女性達は風船を割り侮蔑の視線を投げかけて去っていく。結構性的に露骨なCMである。

 矛盾しているようだがリベラルを自覚する民主党が男性支持を集める為に取った策は何れも古典的マッチョイズムと異性愛規範に訴えかけるものだった。こうしたCMが如何に男性支持を集める事に成功したかはコメント欄が答えだ。「トランプ支持者の工作じゃないかと疑った!」「このCMを作ったのは隠れトランプ支持者に違いない!」

 そしてハリスは女性からもソッポを向かれる事になる。彼女の主要な公約は「女性の人工妊娠中絶の権利」であり、もっと言えば「女性は女性の意思で自分の身体を好きに扱う権利」の問題だ。そしてこうした問題提起は当然に「では男性に自分の身体を好きに扱う権利…身体的自己決定権は存在してるのか?」という議論を引き起こす。徴兵制(アメリカには選抜徴兵制として18~25歳の男性は非常時に備えて軍への登録が義務付けられてる)や割礼、受胎後の法的責任…米国では未成年男性が成人女性に強姦された場合でも養育責任が生じる…等は男性の身体的自己決定権の否定ではないか?もっと広範では自殺者や労災死は男女比が男性に偏るが、これも男性の身体的自己決定権の否定や保護のされなさを示しているのではないか?これらを差し置いて女性の妊娠中絶だけに焦点が当たるのは何故か?こうした議論の渦中の中、ポッドキャスト「Call Her Daddy」で司会者アレックスはハリスに男性の体について決定を下す権限を政府に与える法律があるかどうかを修辞的(前述の議論が渦巻いてることを暗に含めて)に尋ねた。これに対してハリスは終始笑いながら自信満々に「いや、何もない」

このハリスの回答が意味する事は次の3つのいずれかだ。
1.彼女は徴兵制や割礼や養育義務、その他自殺や労災死の男女比等を知らない。
2.彼女はそれらを人権侵害と考えていない
3.彼女は男女逆なら人権侵害だと認識してるが、男性の事なので笑い飛ばしてる

 この発言は流石に男性差別や蔑視は「正義」で女性差別や蔑視は「悪」というルールでも誤魔化しきれない。特に軍人及び(選抜徴兵制で招集発動された)退役軍人が幅を利かすアメリカなら猶更だ。これは反中絶権利派の錦の御旗となり、トランプ派に「ハリスは男性の人権を認めてない」と攻撃する機会を与え、中絶権利派も自身の旗色が悪くなった事を理由にハリスを非難し、更には韓国やロシアやウクライナで「徴兵は人権侵害ではなく権利なのだから女性にも権利付与すべき」と訴える男性達及びそれに反発する女性達にも激震を与えた。この発言とあわせてハリスの乏しい実績は民主党支持者や女性にある疑惑を抱かせる。曰く「彼女の無能っぷりは我々を滅ぼす毒になり得るのではないか?」と。

 そんなハリスが女性達に送ったメッセージがこれだ。邪悪な男性達の抑圧に負けず女性同士で協力して私にに投票しよう!
Julia Roberts Reminds Us - Your Vote, Your Choice - YouTube

 選挙会場でアメリカ国旗の帽子をかぶった如何にもな男性が妻に「ライトチョイス」と呼びかける。これはrightが「右」と「正しい」の2つの意味を持つことをかけた米国定番のジョークだ。文脈的に男性は「右派…トランプに投票しろ」という意味で使ったのだろう。妻は投票用紙でトランプに丸をつけようとするが、正面の女性とアイコンタクトしカマラ・ハリスに丸をつける。そして妻は夫に「正しい選択をした(ライトチョイス)」と言う。

 このCMはコメント欄を見れば分かるが評価はズタボロだ。何故ならハリスはトランプ支持男性を悪しく描くあまり、女性及び家庭そのものを悪しく描いてしまったからだ。夫と心が通じ合ってない妻、夫に隠し事をする妻、女性同士で共謀して男性を省く、そしてそれを強さや賢さと認知する弱い女性、家庭は女性不幸の場…ハリスが子なしの猫好き女性を自認し、またそのライフスタイルを賞賛してる事もあって「ハリスは家庭持ち女性を見下してるのではないか?」「実はねたんでいて家庭を破壊しようとしてるのではないか?」という疑惑や非難が巻き起こった。(日本でも1部女性から家庭持ち女性は「飯炊きオナホ」等と罵倒されているが、似たようなムーブは米国にもある)

 そして米国大統領選の蓋を開ければカマラ・ハリスは「大卒女性」と「高齢者」以外の支持を失い歴史的惨敗。上記の経緯を顧みるに残念でもないし当然の結果としかいいようがないだろう。彼女の敗因はただ1言「嫌われ過ぎ」

 最後に私の米国の友人が今回の大統領選挙で語った言葉を紹介して記事を終える事とする。

「共和党も男性に優しくしてくれないが、少なくとも積極的に加害はしてこない」

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コメント

3
mochidon
mochidon

性別の片方、人口の半分いる方をここまで下げておいて選挙に勝てると思うほうがあり得ないですよね。

ヤーナム産アーモンド
ヤーナム産アーモンド

カマラ・ハリスってまさに典型的なツイフェミだったんだな…

アスカかぜ
アスカかぜ

しかしここまで堂々と、ネットのキモおばちゃん式な男性差別言動を公にしておいて、別に糾弾されることもなく「選挙におちた」だけで済んでいると。むしろその落選すら女性蔑視よ!と騒ぐ連中が普通にいると、、、この世が女性優遇だとよくわかっていたつもりでしたが、改めて世界に絶望しました

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2024年米国大統領選は「男性差別」が最大争点だった|rei
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