このオートバイはトラッカー
なのか、オフロードなのか、
モタードなのか、デュアル
パーパスなのか、モタード
なのか、ストリートなのか、
スクランブラーなのか、エ
ンデューロなのか。
答えはトライアル車である。
まだ日本にはトライアルと
いう言葉が存在せず、トラ
イアルスという名称だった
時代の1973年に誕生した。
俗称で乗り手たちが「トラ
イアル」と呼んでいた競技
がやがて正式名称になった。
トライアル競技の世界戦は
1960年代末期に英国のエン
デューロ競技から分離して、
1975年から選手権が開始さ
れた。
それよりも先立ち、日本で
は「トライアルス」と名付
けた全日本選手権が1973年
に開催された。全日本とい
う全国選手権方式は欧州選
手権よりも組織化が早かっ
た。
ただ、1973年頃は、現在の
ような超絶高度な走行操作
技術を競うものではなく、
ヨーロッパのエンデューロ
と分岐したばかりの走行方式
だった。荒れ地を足を着地せ
ずにいかにクリアするか程度
の。
今のように、垂直の岩を登っ
たり、前輪のみでターンした
り、完全静止からポンポンと
小刻みなジャンプで向きを変
えたりするようなテクニック
は存在していなかった。
そして、車両だ。
競技用ではあるが、まだオフ
ロードのモトクロスとエンデ
ューロや走破ラリーやダート
トラック等の専用車両に分岐
する前の車がバイアルスだ。
手探り状態の形が定まる前の
二輪分岐の黎明期の車両。
それがこのホンダバイアルス
TL125の全体の造形と構造に
なっている。
だから、一見するとロードな
のかクロスカントリーなのか
分からない姿を見せているの
だ。
オフ車だと分かるのはタイヤ
と車体下部の車高とマフラー
位置が高い事だけだ。
全体的なシルエットはロード
スポーツのような、ダート
トラッカーのような造形に
なっている。
だが、そこがとても面白い。
それこそが面白い。
単純に造形も工業デザインと
して秀逸だが、二輪の歴史の
流れの転換期を実車で感じさ
せるのが実に良い。
「ああ、どういう方向に車
を作ろうか製作者たちが燃
え燃えの頃のカタチがこれ
なんだなぁ」と。
この車両よりあとに出て来た
トライアル車は、完全に競技
の特製に純化させて進化し、
まるでバッタみたいな形にな
っていく。タンクは極限まで
小さくしてフレームと一体化
させ、フレームも「くの字」
に折れ曲がった物になる。
この初期の二輪分岐黎明期の
バイアルスのような後年の全
てのバイクの要素が入ったよ
うな造形にはなっていない。
現行のトライアル競技車。
スコルパSCファクトリー
(2017年式)
全世界のオートバイの専用
タイプへの分岐。
それは1973年以降に開始さ
れた。
だが、分岐しての進化の速
度はすさまじく、あっとい
う間にほんの数年で現代の
オートバイと繋がるカテゴ
リー構造が1970年代中期以
降にはすべて登場した。
その後新たに登場したのは
1980年代のレーサーレプリ
カというカテゴリーと、今
世紀に入って新しく登場し
たモタードというカテゴリー
程度だろうか。
オートバイの目的純化の分
岐と進化は、ほぼ1970年代
中期~後半には既に確定し
ていたのだった。
あ、あとまだ別なのあった。
ホンダやスズキが登場させ
た冗談バイクのカテゴリー
が(笑