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[社説]厚生年金のさらなる拡大へ議論深めよ

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厚生年金に加入するパートタイム労働者の範囲が、10月1日から従業員51人以上の企業に拡大された。厚生年金の加入者が増えれば長寿への国民の備えが中長期的に手厚くなる。政府は対象者をさらに広げる議論を深めてほしい。

厚生年金は法人で週30時間以上働くフルタイム労働者には強制加入が義務付けられている。政府は働き方の多様化を踏まえ、勤務が週30時間未満のパート労働者にも段階的に適用を広げてきた。

10月からは勤め先の企業規模要件を変更し、従業員101人以上から51人以上に引き下げた。これにより、勤務が週20時間以上で月収が8万8000円以上(年収換算で約106万円)ある人のうち新たに約20万人が厚生年金に加入することになった。

厚生年金が適用されると報酬の18.3%(労使で折半)を保険料として納めることになるが、引退後は公的年金の1階部分である基礎年金(満額で月額約6万8000円)だけでなく、2階部分の報酬比例年金も受給できる。少子高齢化が進むなかで国民の老後保障を手厚くする有力な手段だ。

25年の次期制度改正ではこの流れを加速させ、適用対象の思い切った拡大を目指してほしい。

厚生労働省の懇談会は25年改正に向け、法人の規模要件を撤廃し、5人以上が勤める個人事業所にも完全適用することで新たに約90万人を対象とする意見をまとめた。だがこれを実施しても約950万人の雇用者が非適用のままだ。

保険料の負担で手取りが減らないようにパートが就労時間を調整する「年収の壁」問題を解決するためにも、週20時間以上という労働時間要件や、月収8万8000円以上という賃金要件の大幅な引き下げを目指すべきだ。

収入が少額でも保険料を納める制度になれば働き手の手取りが急減する「段差」はなくなる。企業が事業主負担を避ける目的でパートに就労時間の短縮を求める動きを抑える効果も期待できる。

賃金要件の引き下げに課題があるのは確かだ。国民年金よりも少ない保険料負担で、基礎年金と報酬比例年金を受給できてしまう問題が指摘されている。

この問題には国民年金保険料と厚生年金保険料の差額を本人が負担する案など、複数の解決案が識者から提起されている。制度の工夫で対応する議論を深め、さらなる適用拡大を実現してほしい。

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