フラッグシップモデルの開発は重要
それにもかかわらず、なぜシャープはフラッグシップモデルのAQUOS R9 proを投入するに至ったのだろうか。同社の小林繁ユニバーサルネットワークビジネスグループ長兼通信事業本部本部長は、「技術の最先端を攻める上で(フラッグシップモデル)は非常に重要」と話す。
最先端の技術を詰め込んだフラッグシップモデルを開発することは、そこで培った技術をミドルやローエンドのモデルに生かして独自性を打ち出すことにもつながってくる。
加えてその会社が持ち得るベストを尽くして開発した製品なだけに、ブランドの価値向上にもつながるという。フラッグシップモデルは値段が高いだけに数を売るモデルとはならないが、販売数以外の面で価値を生む存在となっているようだ。
加えて小林グループ長は、フラッグシップモデルには「熱烈なファンがいる」とも話している。そうしたファンはシャープの他の製品も購入するロイヤルカスタマーとなり得る。数は少ないが重要性の高い顧客を大事にするという意味でも、フラッグシップモデルの投入は重要となるようだ。
韓国Samsung Electronics(サムスン電子)も同様の動きを見せている。日本では円安の進行以降、ローエンドのスマホを投入せず高額なフラッグシップモデルに注力。自社販路で非常に高額なモデルも販売するなど、ロイヤルカスタマー重視の姿勢を強めている。市況が厳しくなっているからこそ、生き残りのためには数を追うだけではない取り組みが求められている。
ただそこで気になるのが、市場の縮小である。日本の消費者のスマホ購買意欲は大きく低下している。小林グループ長も「昨今の販売方式の制約で、日本の顧客は海外の顧客と比べ、ローエンドの商品を選ぶ比率が高まっている」と話す。
日本では円安の長期化だけでなく、政府によるスマホの値引き規制が強化の一途をたどっていることも、スマホを非常に買いづらくしている。だが市場を拡大して利益を増やすには販売数を増やすだけではなく、より高額な商品を選んでもらう必要がある。そのためにも小林グループ長は、満足度が高い製品を提供する必要があるとの考えを示している。
シャープは従来製品と同様に、今回の新製品においても台湾やインドネシア、シンガポールといった海外での販売強化を打ち出している。だが依然、日本市場が同社の主軸であることに変わりはない。
現状、円安や政府の値引き規制が改善される見込みはない。今回発表した新たなラインアップがどこまで市場に受け入れられるか。同社が市場で生き残る上で大きな勝負所になるだろう。



















































