この世に“存在しない”DNA配列をAIが創造。生成した人工DNA配列をマウスや魚に組み込む(生成AIクローズアップ) 

テクノロジー AI
山下裕毅(Seamless)

2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にして紹介しているWebメディアのSeamless(シームレス)を運営し、執筆しています。

特集

1週間の気になる生成AI技術・研究をいくつかピックアップして解説する連載「生成AIウィークリー」から、特に興味深い技術や研究にスポットライトを当てる生成AIクローズアップ。

今回は、自然界に存在しないDNA配列を生成できるAIシステムを提案した論文「Machine-guided design of cell-type-targeting cis-regulatory elements」に注目します。

開発したAIモデルは、DNA配列を入力すると、3種類の異なる細胞(K562、HepG2、SK-N-SH)それぞれでその配列がどのように働くかを予測でき、さらにどの部分の配列が予測された機能に寄与しているかも解析できます。

まず研究チームは、K562(赤血球前駆細胞)、HepG2(肝細胞)、SK-N-SH(神経芽細胞腫)という3種類の細胞株を用いて、77万以上のDNA配列について遺伝子発現への影響を詳細に解析しました。

これらのデータを用いて、深層学習モデル「Malinois」を学習して開発しました。Malinoisは、200塩基対のDNA配列から、それぞれの細胞での遺伝子発現レベルを高い精度で予測できます。

このMalinoisモデルを核として、研究チームは「CODA」(Computational Optimization of DNA Activity)というプラットフォームを構築しました。CODAは、目的とする細胞でのみ遺伝子を発現させる人工DNA配列を、効率的に設計することができます。

CODAで設計された人工DNA配列の性能を実験的に検証したところ、自然界に存在する制御配列と比べて、はるかに高い細胞特異性を示すことが明らかになりました。この優れた特異性は、標的細胞での遺伝子活性化と、非標的細胞での遺伝子抑制という2つの機能を組み合わせることで実現されています。

さらに研究チームは、設計された配列の有効性を生体内でも確認しました。肝臓特異的に設計された配列をゼブラフィッシュに導入すると、実際に肝臓でのみ遺伝子発現が観察されました。また、神経細胞特異的に設計された配列は、マウスの大脳皮質の第6層という特定の領域で、神経細胞特異的な発現を示しました。

(▲ゼブラフィッシュでの生体内検証)

この技術の最も重要な特徴は、自然界には存在しない、全く新しい制御配列を設計できる点です。従来の手法では、既存の制御配列を組み合わせたり改変したりする程度でしたが、CODAは完全に人工的な配列を一から設計することができます。


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《山下裕毅(Seamless)》

山下裕毅(Seamless)

2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にして紹介しているWebメディアのSeamless(シームレス)を運営し、執筆しています。

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