「親の愛着が足りない子」が示す3つの問題行動
親から適切な愛着を受けていること、受けていない子に現れる行動の「違い」とは(写真:topic_kong/PIXTA)
今、世界の教育界で最も注目されている「愛着」。子どもの自己肯定感を育むには、親からの揺るぎない愛着が必要だというものだ。本稿では、『自己肯定感を高める子育て』の著者で、UCLA医科大学精神科教授ダニエル・J・シーゲルと全米で人気の心理セラピスト、ティナ・ペイン・ブライソンの新著『生き抜く力をはぐくむ愛着の子育て』より、親からの愛着を受けている子と、適切に受けていない子の違い、そしてそうした子たちに現れる特徴について解説する。
スキルや能力よりも大切な「土台」
「子どもがこの不安定な世界を生き抜くために、親としてできるいちばん重要なことは、なんですか?」
世界中の親たちは、子どもに必要なスキルや能力を育むチャンスを自分は与えていないのではないかといつも不安だ。でも安心してほしい。子どもに育んであげたいスキルや能力よりも、親であるあなたが、親子関係にどう取り組むかに焦点を当てることのほうが大切だ。
親と確かな愛着で結ばれている子どもは、学校で、人間関係で、そして人生で成功する可能性がはるかに高くなる。
では、子どものなかに確かな愛着を育むにはどうすればいいのか?ただ、寄り添えばいい。科学研究が繰り返し示しているとおり、子どもがどう育つかを予測するうえで最もよい判断材料となるのは、少なくとも1人の大人(必ずしも親でなくてもいい)が感情面で支えになり、そばにいたかどうかだ。
子どもにすくすくと健全に育つ最上の機会を与えたいなら、ただ安全で、見守られ、なだめられ、安心できると、感じさせてあげればいい。そしてそのためには、ただそばにいてあげればいい。つまり、その子をありのままに受け入れ、安心させてやることなのだ。
確かな愛着によって良好な結果が生まれるのには、いくつか大きな理由がある。
まず、あなたが寄り添っていると、子どもは生活全般で自分が安全だという安心感をいだく。世界を「自分の居場所」と感じながら生きているので、たとえ思いどおりにいかないことがあっても自分は大丈夫だと思える。
子どもが障害や挫折にぶつかったとき、確かな愛着が緩衝材のような働きをすると考えるとわかりやすい。確かな愛着があっても、ネガティブな状況や感情から子どもを遠ざけることはできない。それが人生というものだ。子どもは苦痛だけでなく、失望や、いら立ち、不満なども感じるだろう。
挫折や失敗を経験させないようにするより大事なこと
親としてのあなたの仕事は、挫折や失敗を経験させないようにすることではなく、人生の嵐を乗り切るのに必要なツールと情緒面での立ち直る力を与え、その嵐のなかをいっしょに歩いてやることだ。
そのとき、確かな愛着は、スケートボードをするときのヘルメットと同じ、気持ちの防具のように働く。ヘルメットをかぶっていても事故は防げないが、転んだときのダメージは大きく変わってくるだろう。
あたり前だが、確かな愛着を養った子どもでも、成長に伴うたくさんの苦痛やショックを回避できるわけではない。友だちの誕生日パーティーに呼ばれなければ、やはり仲間外れにされたような気分になるだろう。初めての恋に傷つくこともあるだろう。
しかし、そういう難題にぶつかっても、うまく立ち直るためのヘルメットがあるから、しっかりした自我を失うことなく、つらい胸の痛みを乗り越えられる。
確かな愛着があれば、特に、大きなショックを伴う人生経験や、環境からのストレス、発達上あるいは医療上、遺伝上の障害、学習困難など、特別な問題に向き合っている子どもも生きやすくなる。
ほかの子たちより生きていくのに苦労する子もいる。そういう子たちは、つねに急な坂で自転車をこいでいるようなものだろう。あなたは重力を取り除いたり、坂を平らにしたりはできないかもしれない。しかしつねに寄り添って確かな愛着を育めば、少なくとも坂の勾配を変えて、それほど骨を折らずにペダルを踏めるようにはしてやれる。
母親との関係が如実に現れる実験
1960年代、科学者たちは、1歳の誕生日を迎えた子どもとその保護者を対象とする、興味深い実験を行った。
まず、子どもが生まれて最初の1年間、訓練を積んだ観察者が家庭訪問して、一定の評価尺度で母親と乳児の関係を評価した。次に、その年の終わりに、それぞれの親子が約20分間の実験のため、ある部屋に入れられた。〝ストレンジ・シチュエーション法〟と呼ばれる実験だ。
赤ちゃんが母親と引き離されて、〝慣れない状況(ストレンジ・シチュエーション)〟、つまり知らない人たちと一緒か、1人きりでなじみのない部屋に残されたとき、何が起こるかに注目する。
部屋を出ていく母親を目にするストレスに1歳の子がどう対処するか、特に母親が戻ってきたときにどう反応するかを観察すれば、赤ちゃんの愛着のシステム――赤ちゃんがどのように親とつながり、その関係を〝確かな土台〟として使っているか――についてさまざまなことが学べる。
こういう実験が何千回も繰り返された結果、関係性を解くカギは、「母と子の再会の段階にあること」がわかってきた。つまり、戻ってきた母親を子どもがどう迎えるか、どのくらいで落ち着くか、どのくらいすばやくおもちゃ遊びに戻るか(のちに同じ実験が父親でも行われ、全般的に同様の結果が得られたので、母親だけでなく保護者と子どもの関係の評価と言っていいだろう)。
確かな愛着を育まれた赤ちゃんは、母親が部屋を出ていくと、はっきりと寂しそうな様子を見せ、戻ってくるとうれしそうに迎えてから、すぐに落ち着いて、おもちゃ遊びやその他の活動に戻る。
安定した愛着を育まれた子どもの場合、家庭訪問による観察では、つながりを求める赤ちゃんの気持ちに母親が敏感に反応して赤ちゃんの合図を読み取り、いつも要求に応じていることがわかった。
言い換えれば、親は子どもの合図を受け取ると、子どもの内面――子どもの行動に隠れた心――で、その合図が何を意味しているかを理解してから、タイミングよく敏感に、普段どおりの効果的なやりかたで対応している。
安定した愛着を育まれた子はどのくらいいるのだろう?
この実験をした研究者によると、約3分の2の子どもは親とのあいだに安定した愛着を築いている。そういう子たちには完璧な親(それがどういう意味であれ)がいるわけではないが、必要なときには常に寄り添ってくれる親がいる。それが安定した愛着を育んでいるのだ。
不安定な愛着を受けた子の3つの特徴
残り3分の1の子どもたちは、保護者とのあいだに「不安定型愛着」を形成していて、それは3つのグループに分けられる。以下の説明を読むとき、1つ心に留めておいてほしいことがある。この分類は、親子関係と、その関係に子どもがどう適応しているかを表すもので、子ども自体を評価した結果ではない。
不安定型➀ 親を無視する「回避型愛着」の子ども
実験で観察したとき、「不安定型愛着」を示す子どもの第1グループは、「回避型愛着」を見せる。母親が立ち去って1人で残されると、そういう子は部屋のおもちゃにひたすら熱中する。それどころか、母親がいなくなってもほとんど悲しい様子や動揺したそぶりを見せず、母親が戻っても無視したり、避けたりすることさえある。
ご推察のとおり、回避型愛着を示す子どもを家庭で観察したところ、親は子どもの合図や要求に無関心で鈍感だった。そういう親たちは、子どもの身体面の要求には応じ、おもちゃや遊びを与えているが、感情面の要求を無視している。
結果として子どもは、内面で苦痛を感じていても、外面に表すべき愛着の要求を最小限にするスキルを学んでしまう。子どもの内面の状態をなだめてもらう必要が〝地下に潜って〟しまうらしい。
つまり、その赤ちゃんは、基本的な人間関係のなかでの要求が満たされないことに順応している。「回避型愛着」を形成した子どもの場合、苦痛の合図さえ親に無視されるので、子どもは自分の苦しみには関心を向けてもらえないのだと考え、騒いで不満をあらわにしないほうがよい対応をしてもらえると察するようになる。
こういう子は〝行動回避〟によって、親との関係に順応する。母親が部屋にいてもいなくてもかまわないと伝えることによって、親の無関心に対処しているのだ。
ところで、念のために言っておくと、こういう「愛着戦略」は、特定の親とのやりとりの歴史を対象にしているので、別の保護者について評価すればまったく別の結果になることもある。子どもは一方の親とは回避型愛着を築いているかもしれないが、別の保護者とは安定型愛着で結ばれて、その恩恵を受けている場合もある。
どんな状況でも落ち着かない
不安定型② いつも心が落ち着かない「葛藤型愛着」の子ども
不安定型愛着を示す子どもの第2グループは、「葛藤型愛着」に分類される。こういう子の親は、一貫して細やかな愛情を注ぐわけでもなければ、一貫して無関心で鈍感なわけでもない。問題なのは、親の一貫性のなさだ。
親は、細やかで敏感な反応をすることもあれば、しないこともある。結果としてこの愛着関係は、親を信頼できるかどうかについて、子どもの心に大きな不安と葛藤を引き起こす。
たとえば、この実験では、葛藤型愛着を示す乳児は、母親が出ていったときも戻ってきたときも、なかなか落ち着かせることができない。安定型愛着を示す子のようにおもちゃ遊びに戻ることもなく、心配そうに、あるいは必死に親にしがみつく。そこには、愛情深い世話や慰めから生まれる信頼が欠けているように見え、母親と身体的に触れ合っても子どもは安心感をいだけない。
一貫性のない対応をしてきたせいで、子どもの内面は混乱している。そこへ親が戻ってくると、不安定な気持ちになるようだ。葛藤型愛着を示す子は、自分が目を離すと母親が立ち去ってしまうかもしれないと思い、その注意をそらすことを恐れる。そういう形で、愛着システムが最大限に活性化されている。
混乱、動揺、支離滅裂な行動を示す子
不安定型➂ 親にどう反応すればいいのかわからない「混乱型愛着」の子ども
不安型愛着を示す子どものなかで最も大きな苦痛を抱えている第3グループは「混乱型愛着」に分類される。こういう子は、母親が部屋に戻ったとき、どう反応すればいいのかをうまく決められず、結果として混乱し動揺、あるいは、支離滅裂な行動を示す。
たとえば、怖がっているようなそぶりを見せたあと、母親に近づき、また身を引いたかと思うと、床に倒れこんで泣き、今度は身を固くする。場合によっては、母親にしがみつきながら、同時に身をそらすこともある。
子どもが「混乱型愛着」を示すようになるのは、親がおびえさせる存在だったり、親自身がおびえていたりするせいで、子どもが「極度の愛情不足」を感じている場合だ。
安定型だろうと不安定型だろうと、細やかな親、あるいは無関心な親、一貫性のない親に対応して一定のパターンの愛着を形成した子たちと違って、こういう子は、いつ親に怖い目に遭わされるかわからないので、一貫した効果的な対処法を思いつけない。
(ダニエル・J・シーゲル : UCLA医科大学精神科臨床教授)
(ティナ・ペイン・ブライソン : 児童青年心理療法士)