国連委、夫婦同姓義務見直し求める 皇室典範にも言及
【パリ=北松円香】国連の女性差別撤廃委員会は29日、17日にスイスのジュネーブで開かれた対日審査会合に関する「最終見解」を発表した。夫婦に同姓を義務付ける民法規定の速やかな改正を勧告した。
同委員会が日本に対して夫婦同姓義務の見直しを求める勧告を出すのは、2003、09、16年に続いて4度目だ。選択的夫婦別姓導入に向けた国際的圧力が強まっているといえる。
最終見解では夫婦の同姓義務付けにより「実際には女性がしばしば夫の姓への改姓を余儀なくされている」との懸念を示した。女性が結婚後も婚姻前の姓を保持できるよう、規定の見直しを勧告した。
皇室典範にも言及し、「改正により男女の平等な皇位継承を保障すべきだ」と勧告した。皇室典範は同委員会の審査対象ではないとする日本政府の立場に触れる一方、継承を男系男子に限るのは女性差別撤廃条約に反すると指摘した。
性的少数者の人権を巡っては、同性婚が法的に認められていないことに懸念を示した。
女性の政治参加や公的な活動については、特に国会や閣僚レベルで女性が少なすぎる状況が続いていると指摘し、クオータ制など一時的な特例措置の導入を求めた。議会や閣僚、外交、学界などで女性比率の目標を50%に引き上げるよう勧告した。
また健康に関する項目では、未成年も含めた女性に対し、緊急避妊薬(アフターピル)をはじめとする現代的で手ごろな価格の避妊手段を十分に提供するよう求めた。女性の人工妊娠中絶に配偶者の同意が必要だと定める法制度の改正も勧告した。
離婚により女性が直面する困難にも懸念を示した。離婚夫婦の子どもの親権や面会について判断する際には女性への暴力を十分考慮に入れるべきで、裁判官などの能力向上が必要だと指摘した。
同委員会は各国政府に対し、定期的に女性を取り巻く環境について審査を実施している。日本は女性差別撤廃条約を1985年に批准しており、今回は8年ぶりで6回目の審査だった。
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(更新)- 植木安弘上智大学特任教授ひとこと解説
9月に発表されたピューリサーチセンターの国連好感度調査で、アジア諸国で日本だけが好感を持っていない割合が50%と好感を持っている割合の41%を超えた。お隣の韓国では好感度が75%と大幅に回復。米国でさえ50%を超えている。日本は国際社会からどう見られているか極度に神経質のところがある。国連の人権関係の委員会や特別報告者から少しでも批判されると感情的に反応する傾向がある。日本は女性差別撤廃条約に加盟しており、その委員会からの勧告についてはじっくり国内で議論して結論を出せば良い。今年のジェンダー・ギャップ報告書でも日本は118位。女性差別を無くす方向での議論と努力を一層進めなければならない。
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(更新) - 福井健策骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士分析・考察
Twitterではこれを受けて、今日も今日とて「国連脱退」がトレンドワード入りですね。もちろん「国連脱退など冗談でも言うな」というポストが半分ほどのようですが。 問題は、注目を集めるためのそうした極端なポストが多数の「いいね」を集めていると、たとえ実際の発言者・賛同者は少ない極論でも、一定の支持を受けた意見のように見えてしまうことです。その結果、長年の経験や多面的な議論で培われてきた主流の論と、幼い極論が実際に相対化されて行く。 無論、これには時に議論喚起の良い面もあるのですが、どうも病理の面が圧倒しつつあるようにも見えるのは私だけでしょうか。
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(更新) - 辻本浩子日本経済新聞社 編集委員・論説委員ひとこと解説
勧告にはさまざまなテーマが並びますが、夫婦別姓については今回で4回目の勧告です。「2年以内」と期限を切って、どんな措置をとったか書面で情報を提供するよう要請しています。これにどう答えるのか。そもそも1996年には法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を答申しました。議論を前に進めるときです。
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